その子が日本語を教えたというので教えると、平仮名を全部書けるくらいに日本語が話せるようになって。でね、「なんでそんなに日本語を勉強するの?」って聞くと、「この村の人はみんなアラビア語で話すでしょ?でも、もし私が日本語を喋れたら、あなたが村に来た時にリラックスできるでしょ」と言われて。
素敵な女の子ですね!
そうなんです!で、その子に「夢」を聞いたんです。そしたら、「お金持ちになりたい」と。珍しいな、と思って、「どうして?」って聞いたら、お金持ちになって学校作りたいって。その学校で学んだ子供たちが、自分みたいに夢を持って生きたいと思えるような学校を作りたいって言うんですね。
その為にお医者さんを目指してるんだって。12歳の女の子が、自分の夢だけでなく夢の向こう側を持っていることに感動しました。
で、「すごいね!」というと「違うの」って言うんです。「なんで?」と尋ねたら、その子は「周りの人は、そんなこと無理だっていうわ。でも、あなたは応援するよって言ってくれた。だから、この夢を持つことができたの」と言われて、泣きそうなほど感動しました。
シリアで、現地の新聞に載るくらいには様々な活動をしてきましたが、正直どれだけのことができたのかって分からないんですよね。でも、この子がもし夢を叶えることが出来たら?外国人の僕がどれだけやるよりも、もっと多くの子ども達に夢を与えたり、影響を与えることができるって思いました。
シリアに行って影響を受けた人はいますか?
さっき話した女の子もそうなのですが、他の人だと、その子のじいちゃんですね。ちょうど村に行った日に亡くなったのですが、入院中も自宅で療養している時も、じいちゃんのベッドの周りには常に人が集まっていたんです。
亡くなった日も、じいちゃんの為にどんどん人が集まってくるんです。けど、じいちゃんは、社会的にすごいことを成し遂げたというわけじゃない。家族や友人といった一番身近な人たちを大切にしてきたからなんですよね。
僕らって、「自分は何か偉大なことをしないといけない」って思いがちじゃないですか?でも、一番身近な人を大切に生きていくことが、こんなにも多くの人たちに影響を与えられるんやなってことに気付かせてくれました。
シリアでの経験を踏まえて、これからやりたいことや夢はありますか?
「旅を志事に」というコンセプトで、海外から仕入れの志事をしている友人と、新しいシルクロードを創るプロジェクトを始めています。今年は二人で旅して、そこで見つけた面白いものを日本の大手小売店に売っていく予定です。
雑貨もその国の良さを大切にしたアレンジをしていきたくて、しかも、それを僕らではなく現地の人がやっていくところまで持っていこうと。そして、彼らが豊かになって、儲けた分を社会起業や学校を建てる活動をやってもらえたら最高ですね。
そこから、教育や平和にもつなげていく計画も立てています。その過程で、さきほどのシリアの女の子の夢を叶えていきます。
そして、シリアの人たちに教えてもらった「身近な人を幸せに」という姿勢を持って、日本でも面白いことをやっていきます。楽しみにしていて下さい。
これから旅立つ人たちにメッセージをお願いします!
▼中野貴行(なかの・たかゆき)
フィリピンでのNGO活動、また青年海外協力隊メンバーとして2年間中東シリアで母子保健や女性のエンパワメントに関わる活動に尽力。国際協力の現実と限界を肌で感じながらも「世界から飢餓をなくし、子どもも大人も夢のある社会」の実現を目指し、講演活動や国際協力のためのビジネスを展開中。