手つかずの大自然と希少な固有種による生物多様性に恵まれた世界自然遺産・西表島。高まる人気に対し、環境保護とオーバーツーリズム防止の観点から観光ルールが設定されているのをご存じですか?
ガイドツアーの参加が推奨され、個人で観光できる範囲が制限されるなか、ガイドなしでも楽しめる観光スポットをご紹介します。
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西表島が目指す「西表島エコツーリズム」とは
photo by 竹富町観光協会
沖縄で2番目に大きい島「西表島(いりおもてじま)」。島を覆い尽くす亜熱帯のジャングルから特別天然記念物のイリオモテヤマネコなどの希少な動植物まで、「東洋のガラパゴス」とも謳われた生物多様性の宝庫です。2021年7月には、奄美大島、徳之島、沖縄本島北部とともに世界自然遺産に登録されました。
そんな西表島の魅力に惹かれ、訪れる観光客はコロナ禍前で年間30万人を突破。増え続ける観光客を前に、西表島もまた、島の生態系と島民約2,400人の暮らしが脅かされる「オーバーツーリズム」の危機に直面しています。
photo by Mayumi
そんな状況を打開すべく発足されたのが「竹富町西表島エコツーリズム推進協議会」。島の自然を損なうことなく持続可能な地域社会と観光の両立を目指す「西表島エコツーリズム」の全体構想を策定し、西表島を安全かつ存分に楽しむための新たな観光ルールが整備されています。
その一つが、利用目的に応じたゾーニング。世界遺産地域内外に関わらず一定のルールやマナーのもと、ガイド同伴などで観光する「自然体験ゾーン」、世界遺産地域外でルールやマナーを守って一般観光が可能な「一般利用ゾーン」、原則観光不可の「保護ゾーン」の3つに分けられ、さらに、ガイド1人あたりの対応人数や特定エリアへの1日立入人数の上限も設定されています。
加えて、西表島を訪れる旅行者数は1日1,200人まで、年間3万3,000人までと「入島制限」も策定。環境に負荷を与えないよう、入域数を抑制する方針です。
photo by Mayumi
こうして、さらに観光の縛りがきつくなった西表島。もちろんガイドツアーへの参加が安心かつ確実ですが、とはいえ、ふらっと訪れて自分のペースで西表島を楽しみたい旅人も少なくないはず。
そこで今回は「一般利用ゾーン」において、個人でも十分に西表島を満喫できる穴場スポットを厳選してご紹介します。
西表島随一の美しいビーチ「イダの浜」と船浮集落
photo by 竹富町観光協会
西表島西部、奥西表に位置する「船浮(ふねうき)集落」は、同じ島内でも道路が寸断されているため、船でしかたどり着くことができない「陸の孤島」。人口50人足らずだという、外界から隔絶された集落には、まるで時が止まったかのような穏やかな島時間が流れています。
photo by Pixta
船浮港から徒歩10分のところにある「イダの浜」は、西表島随一の美しさを誇る絶景ビーチです。遠浅の海に、沖合には美しいサンゴ礁、さらにはウミガメの遭遇率も高いとか。とにかく訪れる人が少ないので、プライベートビーチのような雰囲気となっており、非日常感が味わえます。
ちなみに、船浮はイリオモテヤマネコ発見の地としても知られているそうですよ。
・名称:船浮集落
・住所:沖縄県八重山郡竹富町西表(船浮)
・地図:
・アクセス:西表島上原港から白浜港まで車やバスで約30分、白浜港から船浮海運の定期船で船浮港まで約10分
・竹富町観光協会公式HP「西表島西部」:https://painusima.com/category/sima/iriomotejimawest/
星の砂とカラフル熱帯魚が楽しめる「星砂の浜」
photo by Mayumi
西表島最北端に位置し、上原港から車で約7分とアクセスのいい「星砂の浜(星砂海岸)」は、星のかたちをした小さな砂粒が転がっていることからこの名がつきました。
星砂(ほしずな)は、実は星のかたちをした有孔虫の遺骸だそうですが、見つけて拾うと幸せになれる、願いが叶うなどの言い伝えがあって、竹富島の「カイジ浜」同様、人気を集めています。
photo by Mayumi
星砂の浜は浅瀬で波が比較的穏やか、水温は高めで、潮だまりや海底の岩陰にカラフルな熱帯魚が多数見られることから、海水浴やシュノーケリングポイントとしても人気の高いスポットです。
・名称:星砂の浜(星砂海岸)
・住所:沖縄県宮古島市伊良部
・地図:
・アクセス:西表島上原港から車で約7分
ジャングル探検気分が味わえる「大富林道」
photo by Mayumi
西表島南東部、仲間川流域にある大富(おおとみ)集落からスタートする「大富林道(大富遊歩道)」は、片道5㎞ほどの自然散策道です。
道はよく整備されていますが、うっそうと生い茂る亜熱帯の森に囲まれ、ちょっとしたジャングル探検気分が味わえます。また、道の途中には西表島の植生が分かる「亜熱帯樹木展示林」、仲間川と西表ジャングルを見下ろす「仲間川展望所」、国の天然記念物である「ウブンドルのヤエヤマヤシ群落」を展望できるスポットもあります。
photo by Mayumi
写真は仲間川展望所から眺めたジャングルの様子。ここから仲間川マングローブクルーズやカヌーなどのアクティビティを遠望することもできます。
・名称:大富林道
・住所:沖縄県八重山郡竹富町南風見仲(大富地区)
・地図:
・アクセス:大原港から車で約10分
・竹富町観光協会公式サイト「西表島東部」:https://painusima.com/category/sima/iriomotejimaeast/
西表島の炭鉱の歴史を物語る「宇田良炭坑跡」
photo by 竹富町観光協会
実はあまり知られていませんが、沖縄で唯一炭鉱があったのが西表島です。近世の終わりごろからその存在が知られ、明治期以降から本格的に採掘を開始し、第二次大戦が終わるまで西表炭鉱として採掘が続けられました。
島内にあるいくつもの炭鉱のうち、当時最大規模を誇ったのがこの「宇田良(うたら)炭鉱」です。現在、多くの炭鉱遺構が老朽化などで失われてゆく中、宇田良炭坑跡は比較的保存状態がよく、近代化産業遺産にも認定されています。
photo by 竹富町観光協会
通称「絞め殺しの木」とよばれるアコウの木の根が建物を飲み込み、その廃墟の姿はまるでラピュタの世界のよう。
西表炭鉱では「圧制炭鉱」と呼ばれる過酷な強制労働を強いられており、さらに当時の西表島ではマラリアで死亡する人が後を絶たなかったことから、脱走者も多かったそう。西表島の別の顔が垣間見える貴重なスポットです。
・名称:宇田良炭坑跡
・住所:沖縄県八重山郡竹富町上原
・地図:
・アクセス:上原港から車で約12分