この記事では、TABIPPOがつくりあげた3冊目の旅の本、『女子が旅に出る理由』のコンテンツをTABIPPO.netをご覧の皆様にもご紹介したいと考え、本誌に掲載している一人旅体験記を厳選して連載しています。
今回の主人公は、ギリシャへ一人旅をした大山奈津実さん(当時25歳)です。
世界には、様々な理由やきっかけによってを一人旅を決意して、自分の心と体で世界を感じてきた女の子たちがいます。
手に入れたのは、どんなに高価なアクセサリーよりも魅力的な自分らしさ。
そんな女の子たちが、初めての一人旅のときに「なぜ旅に出て、どう変わっていったのか」。
すべての女性に読んでほしい、女の子一人旅ストーリーをまとめました。
\こちらの記事は、書籍化もされています/
数年越しの初恋の島へ
世界への初恋は、高校生の頃だった。
教室の机の上に世界史の資料集を広げ、釘付けになった一枚の写真。そこに写っていたのは、白い街並みが可愛いギリシャのミコノス島。
(世界にはこんなに可愛らしい街があるの!行ってみたい!)
この日以来、私はミコノス島に憧れを抱き続けた。
大学4年生の頃、テレビで同じギリシャにあるサントリーニ島の特集を観た。
「世界一、夕陽が美しい街」、だって。白と青で造られた絶景の街がピンク色に染まっていく光景。一瞬で心を奪われた。初恋の気持ちが蘇った。
(絶対行きたい!…けど、遠いし、お金もかかるしな)。
しまい込んだのはいいものの、行きたい気持ちは日に日に膨らんでいった。その半年後、読んだ本にこんなことが書いてあった。
「経験を積むためにお金がある。お金や宝石は人に盗まれることがあるが、経験は誰にも盗むことができない、貴重な財産である」。
行きたい場所に行こうと思った。
(モノではなくて、経験することにお金を使おう)。
行くと決めてからはワクワクが止まらなかった。
行けないと決めつけていたのは、単なる思い込みだった
成田からアテネへ。8日間の初恋の旅。そこから国内線でエーゲ海へ向かう。
窓から美しい家々が見えた興奮は忘れられない。手に届かないと、行けないと決めつけていた世界への距離は、単なる思い込みだった。
港の市場で私を迎えてくれたのは、ミコノスのシンボル存在のペリカン、ペドロス君。彼の好き嫌いは、はっきりしていた。嫌いな人は追い払い、餌をくれると分かった人には餌をねだる。
(かわいい)。
写真を撮る。そんな私を市場のおじさんたちが笑って見ている。
「どこから来たの?」
「日本です」
「そりゃ遠くから来たね」「ミコノスを楽しんでいってね」。
彼らは、とても優しく、人懐い。「ミコノスは初めてかい?」。出会う人に何度も聞かれた。
ミコノス島で流した、初めての涙
photo by pixta.jp
ミコノス島の白亜の街並みの秘密は、街の人に聞いて分かった。なんと街の法律で、建物に白以外に使えるのは一色と決まっているらしい。
みんながこの街の景観を守るために、何度もペンキを塗ってきれいに保っている。おかげで、辺りに停めてあるバイクや自転車でさえ、カメラを通すとアートになる。
真昼になれば、街は太陽に照らされて明るい白がさらに眩しく、空と海の青を引き立たせる。
そこに、街の人々が丁寧に育てたピンクや赤のブーゲンビリアが咲き乱れて、とても華やか。 お店もオシャレ。
アクセサリーや雑貨が大好きな私にとってはたまらない。女の子なら、誰しも夢中になってしまうと思う。
私は街を一望できる丘を見つけ出し、そこで夕陽を見ることにした。
ここでの夕陽には期待していなかったのだけれど、大きな大きな強い光、オレンジ色の夕陽がきれいすぎて感動して、涙が出た。景色を見て涙するのは初めてだった。
(夢って意外と叶えられるものなんだ)。
そう思った。私の初恋にミコノス島が応えてくれた。
どこからともなく猫が5、6匹現れ、じゃれてくる。猫たちと一緒に夕陽を見た。猫も夕陽を見つめてうっとりしていた。
大好きな絶景の中に私がいる
次の日、高速船で 2 時間半かけてミコノス島からサントリーニ島へ。
船から見る島は、ごつごつした岩の上に白い家々がたくさん建てられている。まるで雪が積もっているみたいだ。 同じギリシャの島なのに、ミコノス島とまったく雰囲気が違うことに驚く。
どこを撮っても絵になる街。青は青でもいろんな青がある。おもしろい。カラフルな色を見ているだけで、 元気が出る。
photo by shutterstock
何度もパソコンで観た光景が、あんなに遠いと思っていた景色が、今、目の前に広がっている。もちろん、画面の世界なんて遥かに超える美しい街並み。人間がつくった景色とは思えない。
(どうしたら、こんなおもちゃのような街をつくることができるんだろう)。
毎日、何時間もこの景色を眺めた。何時間同じ場所にいても、全然飽きない。
(大好きな景色の中に私がいるんだ)。
その事実に心が躍った。
断崖絶壁をロバ使いのおじさんがロバを引き連れてやってくる。サントリーニ名物の一つだ。
可愛いビーズの飾りをつけてもらったロバたちなのに、ロバが通る道にはたくさんの落とし物があって、とても臭い(笑)。
犬も多い。どの犬も堂々と横たわってのんびり寝ている。 みんな同じ格好で、無防備に。
(私もこの島の犬になりたいな)。