ライター
morinohinako Go with the flow.

Writer / Editor. 山梨県北杜市、沖縄の離島、東京を行ったり来たり。おいしいもの、美しい自然があるところなら、どこでもかけつけます。旅をすればするほど、甘酸っぱい記憶が増えていく。だから私は旅を続けています。

空港に降りた瞬間にわかる、沖縄の匂い。外に出れば、太陽はいつもよりも近くにいて、ジリジリと肌を焼いてくる。

その土地に足をおろしてはじめて得られる感覚は、どんなお土産よりもずっと鮮明に心に残るもの。

一度行った旅先を思い出しては「あのお店の店主は元気だろうか」と思いを馳せて、気軽に旅をできない今の方が、「あの味」を求めてしまいます。

そんな私が味わいたくなったのは、沖縄県の離島・来間島(くりまじま)に伝わる伝統飲料、みき(神酒)です。

宮古島の公設市場で飲んだ、甘酒のようでもっと爽やかで飲みやすい、あの味。元気いっぱいで来間島のことやみきのことをたくさん教えてくださった、砂川さんのあの笑顔。

どこかで出会えないかなと思っていたら、砂川さんが「暮らしをつなぐ祈りをつなぐ来間島伝統製法みき(神酒)作り」をオンラインで開催するというので、参加してきました!

宮古島から行く小さな離島、来間島

photo by 砂川葉子
来間島は、下地島空港に降り立った場合、伊良部大橋を渡り宮古島へ。さらに来間大橋を渡ると見える、小さな離島。宮古島ともちょっと違う、小さな離島ならではの時間と文化が残っている島です。

そんな来間島に22年前に移住をしてきたのが、今回の主役・砂川葉子さん。


photo by 砂川葉子
来間島には、島で代々行われてきた神事のときに飲むお酒「みき(神酒)」が伝えられてきました。『琉球国由来記』にもその原点が記されているほど、歴史の長い飲み物です。

いまでも神事のときに飲まれているみきですが、世代が変わるにつれて、自宅でみきを手作りする人が減っているのが現状なのだそう。

砂川さん

来間島には、季節の豊年祭だけでなくさまざまな神事があり、その数はおよそ30。御嶽も多く、日々祈りを捧げているのは島の女性たちです。その場面に欠かせないのが、みき(神酒)。

ただ、みきは神事のときだけではなくて、日々の暮らしのなかで”元気でいてほしい” “幸せでいてほしい”という祈りを込められる飲み物でもあります。来間島の文化の継承だけでなく、島の人のため、家族のために、みきをつないでいきたいと思ったんです。そうして、島のおばあにつくりかたを教わるようになりました。

何度も何度も、足しげく島のおばあたちのもとへ通い、みきをつくったという砂川さん。少しずつ、みきのつくりかたを受け継ぎ、ワークショップや宮古島の公設市場で店舗を構えることになっていきます。

宮古島の公設市場で「来間島のみき」を味わって

photo by Hinako Morino
私がはじめて来間島のみきを飲んだのは、2020年の秋。取材で砂川さんのもとを訪れて、みきのつくり方を教わったのでした。

もともと甘酒が好きだった私ですが、喉がいたくなるような甘〜い甘酒は苦手。砂川さんに「みきは、甘酒よりもすっきりしているよ~」と教えてもらい、楽しみにしていました。

公設市場の砂川さんのお店「みき(神酒)の店んきゃぎさまち」では、みきをスムージーで提供。マンゴー、パイナップル、ゴーヤ、紅芋などなど、宮古島の素材とみきのコラボレーションを味わうことができます。

photo by Hinako Morino
私は人気のドラゴンフルーツ&バナナを注文。みきの酸味と鮮やかなドラゴンフルーツの色味で、暑くて食欲のなかった身体に一気にエネルギーが湧いてくるよう。飲めばお腹の中から元気になる、南の島ならではの味でした。

お待ちかね、「みきワークショップ」がはじまります

photo by Hinako Morino
みきのワークショップに申し込むと、自宅に「手作りみきセット」が届きます。届くのは、麦麹とみき粉。自宅で用意をするのは、鍋と500ccのお水です。

photo by Hinako Morino
当日は、Zoomで集合。参加者同士の自己紹介の後、砂川さんがみきの由来やつくり方を丁寧に教えてくれます。

みきづくりの手順は、とってもシンプル。火と水と鍋さえ用意できれば、お子さんも一緒に参加することができますよ。

【手順】
①水を鍋にいれ、火をつける

②火をつけてすぐにみき粉をいれる

③ひたすらひたすら、かき混ぜる

photo by Hinako Morino
鍋に火をつけたらすぐに、みき粉を入れます。あとはひたすらかき混ぜるだけ、なのですが、ここでワンポイント。

砂川さん

みき粉を入れたら、右に7回かき混ぜてくださいね。これはちょっとしたおまじないです。右に7回かき混ぜた後は、自由に、とにかく焦げないようにかき混ぜてくださいね。

④もったりと一つにまとまるくらい固まったら、火からおろす

photo by Hinako Morino
焦げないように注意しながら、かき混ぜること5分ほど。急に、液体からもったりとしたペーストに変わります。もう重たくてかき混ぜられない!となり、だいたい一つにまとまるくらいまで混ぜたら、火を止めます。

⑤麦麹をいれてかきまぜる

photo by Hinako Morino
まとまったみきに麦麹を入れると、すぐに変化が。少し水分が出て、かき混ぜやすくなるのです。

ガラス瓶などに入れて、保存できるようにします。

⑥3日常温で保存。朝晩、声をかけながらかき混ぜる

砂川さん

おはよう、みきちゃん、おやすみ、みきちゃん、って声をかけながらかき混ぜてくださいね〜。

つくった日を1日目として3日間、朝と夜にみきをかき混ぜます。ぷくぷくと発酵していくので、その様子は本当に生きているかのよう。ついつい「おはよう、みきちゃん」と声をかけたくなりますよ。

2日目には、麦麹がデンプンを分解していくので水分が増えて液体になり、香りもお米を炊いたような香りから、酸味のある香りに。

⑦麦麹を濾して、お塩で清める

3日間常温で発酵させたら、ざるを通して麦麹を濾します。私は麦麹のプチっと食感も好きだったので、濾した麦麹はとっておき、グラノーラと一緒に食べました。

麦麹を取り除いたみきは、ひとつまみのお塩を加え右回しで7回まわして、完成!

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morinohinako Go with the flow.

Writer / Editor. 山梨県北杜市、沖縄の離島、東京を行ったり来たり。おいしいもの、美しい自然があるところなら、どこでもかけつけます。旅をすればするほど、甘酸っぱい記憶が増えていく。だから私は旅を続けています。

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