編集部
Asuna エディター

元小学校教諭。大学在学中に「海外ひとり旅」にハマる。現在はTABIPPOの編集部に所属。ほかにも取材・美容・食・コラムライターとして活動しつつ、個人でFamily photographerとして、お宮参り・七五三・前撮りなどを撮影している。週末は夫と旅三昧の日々で、長野〜福島県は庭。東北が大好きで、地方に行きつけの店を作るのが趣味。

みなさんこんにちは、体の半分に関西の血が流れているAsunaです。わたしの祖母の実家は、京都の山奥にある「花背(はなせ)」という小さな集落。

花背は、小さい頃から夏休みになると毎年のように川遊びに行っていた、わたしにとって秘密基地のような場所。そんな大好きな花背に、この夏、西日本マイカーの旅の途中で3年ぶりに行ってきました。

わたしが小さい頃から見てきた自然は、そのままのように見えて少しずつ変わりつつある。そんな現実を今回目の当たりにしました。

今回は、「大好きな故郷である花背の自然を守り続けたい」という視点から、花背の魅力についてご紹介していきたいと思います。

京都の奥座敷「花背(はなせ)」

photo by Asuna Igari
京都駅から約20分、奈良方面に電車を乗り継いでいくと、京阪本線「出町柳」という駅があります。そこから京都バスで「広河原行き」に乗ること約1時間半、花背峠を越えてたどり着けるのが、ここ「花背」です。

「京都の奥座敷」と言われる花背は、もともと林業が盛んな場所で、山や川、森などの自然をとても大切に守り続けています。

「花背」という名前の由来は、花の美しい北山の懐にあるため「花の背」と呼ばれたことから、花の都京都の北の背骨に位置するところとして名付けられたという説があるのだそう。本来は「花脊」と書きます。

photo by Asuna Igari
わたしの祖母は花背で生まれ育ちました。祖母の実家は、花背で代々林業を営んでおり、子どもの頃親戚に、どこからどこまでが所有している山なのかを聞いた際、山の規模が大きすぎて把握できなかったのを覚えています。

わたしは、子どもの頃から花背が大好きでした。当時は電波さえ通じていなくて(今は通じます)目の前にあるのは山、家のすぐ下は川。

お隣さんの家は数十メートル先で、誰もいない真夏の道に大きくセミの声だけが聴こえる夏休みを、毎年過ごしていました。

photo by Tatsuya Igari
人口は約120人(45世帯)といわれていて、東京の人口、約1400万人のおよそ10万分の1。ゲームセンターもショッピングモールも、コンビニエンスストアもない。目の前にあるのは、山と森と川、ただそれだけ。

ですが、「何もないことの美しさ」を私に教えてくれたのは、ここ、花背でした。

伝統行事「花背松上げ」

photo by 京都市左京区役所公式ホームページ
花背には、「花背松上げ」と呼ばれる夏の伝統行事があり、八桝町と広河原の2か所で執り行われます。山での災いが無いように祈る、火伏せの神を祀る愛宕神社への信仰が、お盆の送り火と結びついたと考えられています。

この祭りは、松明(たいまつ:松のやにの多いところや竹やアシなどを束ね、火をつけて照明とするもの)に縄をつけて手に持てるようにしてから、地上から約20メートルのカサに向かって、村の男たちが回し投げ入れるお祭りです。

photo by Asuna Igari
チンドン太鼓を鳴らしながら村の男たちが登場し、広場に刺してある数百本の松明に火をつけていきます。すべてに火が灯ったら準備は完了。

男たちは広場の中心にある柱の元に集まります。「そーれ!」という掛け声とともに1人目が投げた後、次々に男たちが手松明を投げ始めます。

回し投げた松明がカサの中に入るたびに「おお〜!」と歓声がわきあがり、惜しかったときには客席から応援の声が飛び交います。

photo by Asuna Igari
カサの中に入っている木の枝や枯葉に炎が燃え移ってくると、次は柱を倒す準備が始まります。一番炎が燃え移っている場所が客席に向くように、客席に向かって柱を倒すのです。

3年前、わたしが花背の松上げを見に行ったときの席は大当たりで、まさに自分たちに向かって燃えたカサと柱がドーンと倒れてきました。熱い爆風とともに大きな歓声が上がり、パチパチと木が燃える音よりも大きな拍手が広場全体を包むのです。

今年は、新型コロナウイルスの関係ですべての松上げが中止となってしまい、とても残念でした。もし来年開催されるとなったら、もちろん足を運びたいと思っています。

花背に訪れたらここに行きたい

花脊の里/茶店はしもと

photo by Asuna Igari
ここは、祖母の友人が経営する茶店です。わたしが小さい頃から「りぃのおばちゃん」という愛称で呼ばせてもらっている橋本さんが、山の食材を贅沢につかった定食を出してくれる、山のお茶屋さんです。

おすすめの山菜定食(1300円)は、これでもか!というほどボリューム満点。山菜の天ぷらをはじめ、自家製の佃煮や漬物、鮎の塩焼きなど、ここでないと食べることができない新鮮な食材ばかり。

photo by Tatsuya Igari
なんといってもこちら、鮎の塩焼き。茶店はしもとの鮎は、獲れたてなんです。つい先ほどまでビチビチ生きていた鮎を串刺しにして、塩を振って焼くという贅沢さ。

大きな鮎の日は1匹ですが、小さめの鮎の日は2匹つけてくれるという粋な計らいも、おばちゃんのご好意からです。

photo by Tatsuya Igari
おばちゃんの気さくでパワフルな人柄と、おいしいごはんの虜になって、リピートするお客さんも多いのだそう。みなさんもぜひ、ランチは茶店はしもとに訪れてみてはいかがでしょうか?

photo by Tatsuya Igari

■詳細情報
・名称:花脊の里 茶店はしもと
・住所:京都府京都市左京区花脊原地町237
・地図:
・アクセス:叡山電鉄「鞍馬駅」から京都バス32系統(広河原行き)で「大悲山口」下車 徒歩1分
・営業時間:9:00〜17:00
・定休日:金曜日(臨時休業あり)
・電話番号:075−746−0073
・料金:1000円〜2000円
・オススメの時期:夏(冬季は積雪の関係で休業の場合があります)
・食べログ公式ページ:https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260504/26005315/

大悲山 峰定寺

photo by Asuna Igari
峰定寺は、京都市左京区花背原地町にある本山修験宗の寺院です。平安時代末期(1154年)に、鳥羽上皇の祈願により観空西念(三滝上人)が建てたと言われています。

本堂は、懸造(かけつくり)という、崖などの高低差が大きい土地に、長い柱や貫で床下を固定してその上に建物を建てる建築様式で、舞台造とも呼ばれています。代表的な建造物でいうと、京都で有名な観光スポットである清水寺も同じ建造方法です。

京都市で最古の木造建築、そして日本最古の舞台造建築が、ここ峰定寺。清水寺の舞台は、江戸幕府3代目将軍である徳川家光が峰定寺を参考に建て直したのだとか。

photo by Asuna Igari
峰定寺の本堂への参拝は、重要文化財である大きな仁王門を通り、自然石が続く400段程の石階段を登ります。仁王門をくぐった先からは撮影不可。本堂を写真に収めることはできません。カメラや携帯電話をはじめ、貴重品以外の荷物は全て受付で預けてから入山するというルールなのです。

受付では巫女さんが、大悲山の歴史や入山の心得をわかりやすく説明してくれるので、しっかり話を聞いてから入山しましょう。わたしが聞いた話の中で心に残っている言葉は「本堂についたら山の方を見て一休みをしましょう。山の方を向いて座って、目を閉じて、風とは何ぞや、山とは何ぞやと心に問うのです」というもの。

photo by Asuna Igari
約400段の階段を登り、汗だくでしたが、巫女さんの言うように座禅を組んで、瞑想をしてきました。吹く風が心地よく、邪念が取り払われたような感覚になり、とてもすっきりとした気持ちになりました。

この本堂は、雨の日は足元が滑りやすいため入山禁止となっています。また、中学生未満の子どもや団体客の入山も不可です。観光としての入山ではなく、花背の自然や山に心を清めてもらう意識で訪れるといいでしょう。詳しくは公式ホームページをご覧ください。

■詳細情報
・名称:大悲山峰定寺
・住所:京都府京都市左京区花脊原地町
・地図:
・アクセス:叡山電鉄「鞍馬駅」から京都バス32系統(広河原行き)「大悲山口」下車 徒歩約30分
・営業時間:9:00〜15:30(受付終了)/雨天時の入山不可/子ども・20名以上の団体入山不可
・定休日:12月〜3月は積雪のため休業
・電話番号:075-746-0036
・料金:500円
・所要時間:本堂往復およそ45分(400段の階段)
・オススメの時期:初夏〜秋
・公式サイトURL:https://daihizan.jp/place/bujyouji/

1日1組限定の宿、Hanase Highland Inn

photo by Asuna Igari
ここHanase Highland Innは、約300坪の敷地に建つ、築およそ130年の古民家をリノベーションした宿。この古民家も、実はわたしの親戚の家でした。数年前までは親戚のおじいちゃんが住んでいたのですが、転居を理由に売却することに。そんなとき、花背に移住し宿を始めたのがケルガード・サイモンさん、慶子さんご夫妻でした。

photo by Tatsuya Igari
もともと20年以上オーストラリアのブルーマウンテンにてレストランを経営していたふたりに転機が訪れたのは、およそ5年前。遠く離れた日本に住む家族の介護について慶子さんが悩んでいたところ、夫のサイモンさんの一言で、慣れ親しんだオーストラリアの店を閉めて、日本に戻る決意をしたのだそう。

料理は夫のサイモンさんが担当しています。母屋の台所は土間造りになっていて、母屋から通路でつながった離れが、宿泊客の部屋となっています。

photo by Tatsuya Igari
通路こそあるものの、1階はダイニング、2階が寝室となっているので、1軒貸し切りのような造りになっているところも魅力のひとつ。

photo by Tatsuya Igari
お風呂は、母屋から一度外に出た別館に。蔵を改造して造ったこのお風呂を目当てに泊まりに来るお客さんも多いのだとか。風呂釜は特注サイズの信楽焼です。

力持ちの男性8人がかりで窓から風呂釜を中に入れたのだそう。檜の香りとこだわりの風呂釜は、この宿のおすすめポイントです。

photo by Tatsuya Igari
女将として宿を経営する慶子さんは、花背のみなさんから愛されています。誰もが口をそろえて「HANASE HIGHLAND INNの慶子さん、本当にすごい人やと思うわ」と話すほど。

今回の旅では、そんな素敵な宿を経営する慶子さんに取材をさせていただきました。

編集部
Asuna エディター

元小学校教諭。大学在学中に「海外ひとり旅」にハマる。現在はTABIPPOの編集部に所属。ほかにも取材・美容・食・コラムライターとして活動しつつ、個人でFamily photographerとして、お宮参り・七五三・前撮りなどを撮影している。週末は夫と旅三昧の日々で、長野〜福島県は庭。東北が大好きで、地方に行きつけの店を作るのが趣味。

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