世界一周する旅人には、計画をきっちり立てるタイプと、ノープランで自由気ままに旅するタイプがいる。私は、後者だった。
事前に計画を立てたほうが、宿や飛行機の予約を早くに取れるため、支出を抑えられるし、直前にあたふたせずに済む。
計画を立てて、旅するメリットはたくさん。
それでも、私はコストパフォーマンスが悪くても、タイムパフォーマンスが悪くても、ノープラン旅を好んだ。
「今」の感情を大切に。今回は、心の赴くままに、旅ができる私の旅のスタイルを紹介していきたい。
元気が溜まったら、旅再開
リラックスできるお気に入りの街「ルアンパバーン」
私は、世界一周の旅に出るまで、海外経験がほとんどなく、旅の経験値が著しく不足していた。
ATMから外貨を下したこともなければ、飛行機の乗り換えをしたこともない。海外用のSIMカードを買ったこともなければ、現地ツアーに申し込んだこともなかった。
事前に可能な限り下調べをしていたものの、行動してはじめて知ること、気づくことがたくさん。
世界一周の序盤は、毎日必死に「はじめて」の経験と向き合い、1日が終わる頃にはヘロヘロになっていた。
疲れたときや、嫌なことがあって落ち込んでいるときは、無理しない。心と身体が元気じゃないと、トラブルを避けるための集中力も低下する。
また世界を旅する元気が溜まるまで、宿に籠ってゆっくりエネルギーチャージ。
元気が溜まったら、旅再開。
自分の心と身体の状態が「今日」何をするか決める基準だった。
次の行き先は「今」やりたいこと
コロンボで詐欺に遭い、逃げるようにキャンディへ
「今」この瞬間に抱いている感情にしたがって、次の行動を決められるのは、ノープラン旅の醍醐味だ。
旅をしていると、偶然見聞きした情報から、行ってみたい場所が見つかることもあれば、行きたかった場所に行ってみたものの、思いのほか自分に刺さらなくて、次の場所へ行きたくなることもある。
世界一周中の行き先は、偶然舞い込んできた情報と、そのときの感情をもとに決めることが多かった。
例えば、スリランカに行ったときは、1日目にコロンボという街で詐欺に遭い、メンタルがぼろぼろに。2日目はキャンディという街は人が優しいと聞き、安心できる環境を求めて、逃げるようにコロンボからキャンディへ移動。このときは「安心したい」という感情に沿って行動していた。
また、スペインでは、ドイツ在住の会いたかった人から「会おう」というメールを受信。西へ西へと進んでいた私だったが、どうしてもメールをくれた人に会いたくて、スペインからドイツへ引き返した。先々の飛行機や宿を予約していないフリーな状態だったからこそ、ためらうことなく「会いたい」という感情を優先して、会いたい人に会いに行くことができた。
偶然舞い込んできたチャンスを掴めて、また、合わないものを無理して続ける必要がないのは、ノープラン旅の魅力。
ホットな「行きたい!」という気持ちを抱えたまま、次の行き先へ向かうことができる。
勇気が出たタイミングで、憧れの地へ
勇気を出してピラミッドへ
世界には、行ってみたい場所がたくさんあった。
エジプトのピラミッド、ボリビアのウユニ塩湖、ペルーのマチュピチュ遺跡……
これらは「いつか行ってみたい!」と憧れていた場所。でも、同時に治安を心配して、行くのをためらっていたところでもある。
旅スキルが不足している私が、アフリカや南米を旅することは、背伸びしているようで不安だった。
怖くて何度も「行くのはまたの機会に」と考えたが、私は結局、世界一周中にピラミッドも、ウユニ塩湖も、マチュピチュ遺跡もすべて行くことができた。
それは、ノープランで旅しており「今の私ならいける!」と勇気が出るタイミングまで、待つことができたから。
世界を旅していると、さまざまなことを経験して、毎日少しずつ強くなる。
そして、ある日「今日ならエジプト行きの飛行機を予約できる!」と勇気が溜まって、行動に移せる瞬間がやってくる。
心に湧き上がる「怖さ」も「憧れ」も受け止めて、怖さが軽減するまで近隣の国を旅して足踏み。
憧れの地へ行く勇気が溜まるまで、待つことができるのは、ノープラン旅の魅力。
心に寄り添って行動できる、ノープラン旅の魅力
自分のペースで歩き切ったカミーノ・デ・サンティアゴ
世界一周していると「楽しい」「おもしろい」という感情だけでなく、「疲れた」「嫌だ」「怖い」という負の感情を抱く瞬間も多い。
きっちり立てたプランを遂行するために、心の声を無視して行動したら、きっと苦しくなる瞬間が来るだろう。
ノープラン旅の魅力は、「今」の気持ちを大切に、自分の心に寄り添って行動することができること。
自分の心に正直に、安心できるペースで旅できるノープラン旅が、私は大好きだ。
All photos by ゆいかな