ライター
かわい まゆみ 絶景ハンター&トラベルライター

秘境絶景ひとり旅好きな絶景ハンター。国内47都道府県、世界89カ国、訪れたスポットは2000以上。フットワークの軽さと胃腸の丈夫さが自慢。マニアックな絶景スポットを発掘するのが好き。"ちょっと出かけたくなる"、そんなきっかけを作れるような情報発信を心がけています。

こんにちは、絶景ハンターのまゆみです。

長引くコロナ禍でさまざまな社会不安に襲われる昨今、最後にすがりたいのはやはり神様・仏様・アマビエ様……。心のやすらぎや安定を求めて、神社やお寺など、パワースポットといわれる場所へ駆け込みたくなりますよね。

今回ご紹介する島根県の隠岐諸島もその一つ。いにしえの時代から神々の棲む島とされ、島そのものがパワースポットともいえる存在です。

自然信仰が未だ息づく隠岐について、今回は生命力みなぎる“神宿る木”をテーマにご紹介します。

神々の棲む島・隠岐とは

神棲まう島・隠岐
島根県本土から北東60キロメートルの沖合に浮かぶ隠岐(おき)。

隠岐というと1つの島と思われがちですが、実際は、西ノ島(西ノ島町)、中ノ島(海士(あま)町)、知夫里(ちぶり)島(知夫村)の3島からなる島前(どうぜん)と、島後(どうご、隠岐の島町)とよばれる1島の計4つの有人島と約180の無人島からなる島々となっています。

大山隠岐国立公園に指定され、かつ隠岐ユネスコ世界ジオパークにも認定されている隠岐は、国内屈指の自然豊かな島。およそ600万年前、大規模な火山活動や地殻変動によって生まれ、さまざまな気候変動を経て、今ある独自の生態系が築き上げられました。

隠岐・西ノ島にある由良比女神社
自然への畏怖や畏敬の念は神への信仰に変わり、いにしえから自然信仰が行われてきました。

ここ隠岐には大小含めて150を超える神社がありますが、そのなかには、社殿を持たず、自然物そのものを神と崇める神社がいくつか存在します。

今回は隠岐を代表する「神宿る」木々をご紹介しましょう。

このただならぬ存在感!圧倒的なパワーを放つ「岩倉の乳房杉」

岩倉の乳房杉
隠岐島後三大杉の一つに数えられる「岩倉の乳房杉(ちちすぎ)」。樹高30メートル、根回り16メートル、樹齢800年といわれる杉の古木です。15に枝分かれした幹、そこから乳房状に垂れ下がる大小24個もの気根、その異形の姿が放つ圧倒的存在感、そしてただならぬオーラは思わずひれ伏してしまいそうになります。

乳房杉が御神体の岩倉神社
岩倉の乳房杉の正式名称は「岩倉神社」。すなわち、木そのものが御神体であり、社殿を持たない神社です。毎年4月23日には祭礼が行われています。

この神宿る木の神々しさを前にすると、心があらわれるような、肩の力がふっと抜けるようなふしぎな感覚を覚えます。また、足元には風穴があって夏でも涼しく、特に雨上がりは靄がかかって実に神秘的です。

■詳細情報
・名称:岩倉の乳房杉
・住所:島根県隠岐郡隠岐の島町布施
・地図:
・アクセス:西郷港から車で約60分
・隠岐観光協会公式サイトURL:https://www.e-oki.net/spot/detail.php?spot_id=26

御神体にカズラを巻く「大山神社」

杉の大木が御神体の「大山神社」
こちらも隠岐の島町布施地区にある、杉の大木を御神体とした「大山神社」。樹高45メートル、幹周り4.5メートル、樹齢400年といわれ、こちらは天高く真っすぐ伸びた杉の巨木です。乳房杉同様に、鳥居をくぐれば社殿のない御神木だけがたたずみ、山全体が神社として祀られています。

御神体にカブラを7回半巻きつける御神事
注目すべきは、この杉の根元にグルグル巻きに巻きつけられたカズラ。これは、隔年4月初丑の日、山から切り出された大カズラを7回半巻きつける御神事のあとで、山の恵みへの感謝と、これからはじまる山仕事への安全祈願、そして子孫繁栄を願う儀式の一つ。主に島の若い男衆によって行われるユニークな山祭りです。

通常、神社の御神木というと社殿の脇に控えている印象がありますが、これらはあくまで木そのものが神様。原始的な自然信仰が垣間見られるのも隠岐ならではですね。

■詳細情報
・名称:大山神社
・住所:島根県隠岐郡隠岐の島町布施
・地図:
・アクセス:西郷港から車で約35分
・島根県観光連盟公式サイトURL:https://www.kankou-shimane.com/destination/20926

妖怪が遊びに来る木?「中村のかぶら杉」

中村のかぶら杉
こちらも隠岐島後三大杉の一つ、「中村のかぶら杉」。樹高38メートル、幹周り9.3メートル、樹齢600年といわれ、1本の株が根元から6本に分岐して威風堂々とそびえ立っています。

名前の由来は諸説あり、「鏑矢(かぶらや)の先に似ているから」「大きな株が目立つから」「野菜の蕪(カブ、かぶら)に似ているから」などさまざま。

かぶら杉は御神木ではないですが、この他に類を見ない存在感、生命力あふれるたたずまいには精霊が宿っているようです。

かぶら杉の前に置かれた「セコ」の妖怪像
このかわいらしいブロンズ像は、妖怪漫画家水木しげる氏の描く「せこ」。せことは、隠岐や九州地方に伝わる1~3歳ぐらいの子どもの妖怪で、河童が山に入ったものとされ、人間にいたずらしたり、夜には木の周りで踊ったりするそう。

ここで、“なぜ水木しげる?”と思う方もいるかもしれませんが、島根県境港市出身の水木氏の本名は武良(むら)茂。この「武良」という名字のルーツが実は隠岐の島町の武良(現・中村)地区にあるとされているため。そのご縁で、隠岐の島々には水木氏の妖怪たちがあちこちに潜んでいるんですよ。

神々が棲む島なら妖怪がいてもおかしくないですから、“曇りなきまなこ”があれば出会えるかもしれませんね。

■詳細情報
・名称:中村のかぶら杉
・住所:島根県隠岐郡隠岐の島町中村
・地図:
・アクセス:西郷港から車で約20分
・隠岐観光協会公式サイトURL:https://www.e-oki.net/spot/detail.php?spot_id=12

杉の中に大蛇がいる?樹齢2000年の「八百杉」

玉若酢命神社の御神木・八百杉
島後三大杉の一つ、玉若酢命神社(たまわかすみことじんじゃ)の御神木「八百杉(やおすぎ)」。樹高38メートル、幹周り20メートル、樹齢は2,000年近くとされる県下一の杉の大木であり、また国の天然記念物にも指定されています。

八百杉の由来は、その昔、人魚の肉を食べて800年生きながらえたという八百比丘尼(やおびくに)が若狭よりこの地に来てこの杉を植えたという伝説から名付けられたとされています。さらに、その杉の根元には大蛇が閉じ込められていて、耳をすませると夜な夜な鳴き声が聞こえてくるというちょっとホラーな伝説も残っています。

2000年前といえば日本はまだ弥生時代。そんな遠い昔から人の世を見守り続けている杉の大木、ロマンですね。

隠岐でもっとも古い建築の「玉若酢命神社」
こちらは、八百杉のある玉若酢命神社。隠岐の総社であり、隠岐の開拓にかかわった神・玉若酢命が祀られ、国の重要文化財に指定されています。

隠岐には大小150以上の神社があると前述しましたが、そのうちの4社は出雲大社級の格式をもつ「名神大社(みょうじんたいしゃ)」の社格が与えられています。

全国の神社の中でも名神大社の社格が与えられているのはわずか226社(延喜式神名帳より)。島根県で6社あるうち4社が隠岐に集中していることからも、隠岐が古くから「神々の棲む島」として特別な存在であったことがうかがえますね。

■詳細情報
・名称:玉若酢命神社・八百杉
・住所:島根県隠岐郡隠岐の島町下西701
・地図:
・アクセス:西郷港から車で約5分
・隠岐観光協会公式サイトURL:https://www.e-oki.net/spot/detail.php?spot_id=4

島そのものがパワースポット!隠岐のパワーにふれに行こう

隠岐の水のパワースポット「壇鏡の滝」
今回は隠岐に存在する「神宿る木」をテーマにご紹介しました。隠岐は離島としては珍しく地下水が豊富で水のパワースポットもあり、海の神、山の神、大地の神、まさに八百万の神に守られた島そのものがパワースポットとなっています。

心が癒やされたい、パワーをもらいたい、リフレッシュしたい……そんな気持ちになったら、隠岐の島へ旅に出かけてみませんか?

■詳細情報
・名称:隠岐諸島
・住所:島根県隠岐郡
・地図:
・アクセス:隠岐汽船の高速船で境港から西郷港(隠岐の島町)まで約1時間20分(フェリーの場合、約4時間)、あるいは七類港から西郷港まで約1時間10分(フェリーの場合、約2時間半)。飛行機の場合、東京羽田・大阪伊丹・名古屋小牧・福岡空港発、出雲縁結び空港経由で隠岐世界ジオパーク空港まで1日1便・約30分、あるいは大阪伊丹空港から隠岐直行便で1日1便・約1時間。
・電話番号:08512-2-1577
・隠岐観光協会公式サイトURL: https://www.e-oki.net//

All photos by Mayumi Kawai

ライター
かわい まゆみ 絶景ハンター&トラベルライター

秘境絶景ひとり旅好きな絶景ハンター。国内47都道府県、世界89カ国、訪れたスポットは2000以上。フットワークの軽さと胃腸の丈夫さが自慢。マニアックな絶景スポットを発掘するのが好き。"ちょっと出かけたくなる"、そんなきっかけを作れるような情報発信を心がけています。

RELATED

関連記事