ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

いよいよ2023年が始まり、「今年はどこに旅をしようか?」と早速計画を立てている方もいるのではないでしょうか。

旅行先を決めるとき、こだわりたいのはやはりお宿ですよね。筆者自身、最近は「泊まりたいお宿があるからその土地へ行く」という旅程の組み方も増えてきました。

そこで、本記事では“トラベルライター”が選ぶ、おすすめのお宿をお届け!

プライベートな高原リゾートから地域活性化に取り組むシティホテル、人との交流を楽しむ秘湯まで、2022年に泊まったお宿の中から5つご紹介します。

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アウトドアから宿へ。2022年の年間宿泊数は65泊


プライベートな話で恐縮ですが、2021年に旅行業界に転職した筆者。仕事柄、宿に接する機会が多い中で、旅の楽しみ方もアウトドアから宿泊へとシフトしてきました。

また昨年は初夏からの県民割や地域ブロック割、秋からはじまった全国旅行支援なども相まって、工夫次第ではほとんど旅費をかけず宿泊することが可能だった稀有な年でもあったと振り返っています。

そのため2022年はプライベートで年間で65泊の宿泊を楽しむことができました。今回はそのなかから”とっておきのお宿”を5つ紹介していきましょう!

全室離れの高原リゾート|フリューゲル久住(大分県)


大分県くじゅう連山の山麓、久住高原温泉にある「フリューゲル久住」は、全室離れの高原リゾート。全室10棟ある60平米のお部屋はすべて、内湯・天然温泉露天風呂付きのスイートルームになっています。

和洋室のお部屋はステンドグラスが綺麗で、どこか異国情緒も漂わせる雰囲気。テラスにはハンモックが置かれており、四季の移ろいを感じながらリラックスできるのが嬉しいポイントです。


お部屋の内湯・露天風呂はなんと源泉掛け流しで、宿泊中は何度でも入り放題。鉄分の香りに鼻腔を満たしつつ、すべすべとした炭酸水素塩泉のお湯に癒されます。

訪れたのは初夏。日中は気温が高いですが、夜は夜風が涼しく、星を眺めながらプライベートな露天風呂を満喫することができました。


地元の食材を活かしたお料理を味わえるのも魅力です。本館にある異国情緒漂うレストラン「レーゲンボーゲン」でいただきます。

くじゅう高原の野菜や上質な和牛を使った洋食フルコース・星ふるDinnerは、一品一品が芸術作品のようで、見ても食べても嬉しいものばかり。夜空を連想させるお皿の数々も料理を引き立てていました。


チェックアウトの時にスタッフさん総出でお見送りしてくださるなど、少人数のお宿ならではのアットホームな接客もリピーターさんが多い理由のつひとつ。

なお施設内にいるウサギの置物を見つけてスタッフさんにお伝えすると、何か良いことがあるかも!?チェックインからアウトまで常におもてなしの心が感じられる、満足度の高いハイクラスリゾートホテルです。

■詳細情報
・名称:フリューゲル久住
・住所:大分県竹田市久住町大字栢木6049-89
・地図:
・アクセス:大分市街から車で約50分
・電話番号:0974-64-7839
・参考料金:1泊2食付き32,500円/人〜
・オススメの時期:初夏(5月〜6月)
・公式サイトURL:https://www.flugel-kuju.com/index.html

もう一つの実家のような秘湯宿|オソウシ温泉 鹿乃湯荘(北海道)


大自然に囲まれて、ふと佇む湯治の宿。正真正銘の秘湯宿は全国を見渡しても数が減りつつありますが、北海道道東エリアには今でも数軒点在しています。

「オソウシ温泉 鹿乃湯荘」はマニアに愛される大雪山南山麓にあるお宿。未舗装路を走ってたどり着く、”これぞ秘湯!”というロケーションに位置しています。


人気の理由は2つ。ひとつ目は国内有数ph10を誇る強アルカリ泉です。湯船に浸かると、肌がすべすべツルツルに。内湯の浴槽のタイルにも温泉析出物が付着していて、泉質の良さが感じられます。

少しぬるめの野趣溢れる露天風呂に入った後、加温された熱々の内湯で温まるのが至福のひとときです。あまりにも気持ちの良いお湯だったので、宿泊中に合計5時間以上もお風呂に入ってしまいました。


ふたつ目は山海の幸が詰まったお料理です。十勝川源流で釣れたニジマスの塩焼きや、山菜の天ぷら、紫わらびのお浸しなど、地のものが盛り沢山!食べきれないほどのボリュームを出していただけます。

お味噌汁のあさりは厚岸(あっけし)からわざわざ仕入れているそう。秘湯らしい隔絶したロケーションにありながら、北海道の海の幸までいただけるなんて感動ですね!


温かいお人柄の女将さんだけでなく、看板犬・けんちゃんに会うために再訪する方も。まるで実家に帰ってきたような落ち着きが感じられるお宿です。

車が見えなくなるまで手を振ってお見送りしてくれたお母さんの姿は今でも忘れられません。「このお宿に泊まれただけで、北海道に来た甲斐がある」そう思えるほど、忘れられないひとときを過ごせました。

■詳細情報
・名称:オソウシ温泉 鹿乃湯荘
・住所:北海道上川郡新得町屈足
・地図:
・アクセス:十勝清水ICから車で約45分
・電話番号:0156-65-3338
・参考料金:1泊2食付き8,000円〜
・臨時休館期間:2022年11月1日(火)~2023年10月31日(火)
※休館期間は今後の状況により延長する可能性があります。詳細はWebサイトをご確認ください。
・公式サイトURL:http://osoushi.foodsnet.net/index.html

GOOD LACALのハブとなるホテル|hotel around TAKAYAMA(岐阜県)


飛騨高山の「hotel around TAKAYAMA」は、”GOOD LOCAL”と出会う旅へのハブになりたいというコンセプトのもと2021年7月30日に開業したホテルです。

地域と連携するように凝らされた趣向の数々は、既存のシティホテルとは一線を画す面白さを備えています。なかなか独自路線を打ち出しにくいシティホテルですが、地域活性化につながる一つのモデルケースを見られた気がします。


例えば「GOOD LOCAL 100」。飛騨高山のGOOD LOCALを紹介するカードが100枚陳列されており、好みのものを選んでオリジナルガイドブックを作成可能です。

また施設内に描かれた「GOOD LOCAL MAP」掲載の各スポットにはQRコードが付けられており、高山で訪れてみたい場所をホテルでセレクトし、その詳細情報を簡単に調べられるようになっています。


ライブラリーには飛騨高山を舞台にする『氷菓』の漫画が置かれていたり、ギャラリーでは飛騨高山の文化が紹介されていたりと、ホテル内でも飛騨高山を満喫できますよ。2Fには飛騨の雪入道さんもいらっしゃいました。

またホテルには天然温泉のきれいな大浴場も設けられています。源泉はポカポカになると地元民にも話題の「ひだまりの湯」から引いているそう!


朝食はビュッフェ形式でなく、「高山彩り 四重玉手箱」で提供されているのもこだわりポイント。飛騨の炊き込みご飯「しょうけ飯」は何度でもおかわりしたくなるおいしさです。

高山の郷土料理のこも豆腐、飛騨ほうれん草や赤かぶ漬け、みたらし団子などが彩りよく盛り付けられ、まるで旅館の朝食のような豪華な内容になっています。ドリンクバーに飛騨牛乳があるのも満足度が高いです◎

■詳細情報
・名称:hotel around TAKAYAMA
・住所:岐阜県高山市花岡町1丁目42-7
・地図:
・アクセス:高山駅から徒歩すぐ
・電話番号:0577-36-2811
・参考料金:1泊朝食付き6,500円前後/人 ※2名予約の場合
・オススメの時期:通年
・公式サイトURL:https://hotel-around.com/takayama/

七色の温泉をもつリゾートホテル|緑の風リゾートきたゆざわ(北海道)


洞爺湖と支笏湖の間、長流川(おさるがわ)沿いに位置する「緑の風リゾートきたゆざわ」は、北湯沢温泉郷を代表するリゾートホテル。日本最大級の規模を誇る大浴場が有名です。

150坪を誇る「大露天風呂」をはじめとして、20種類の香り湯からなる「森の散歩湯」まで用意されています。香り湯のフレーバーは、ラベンダーやブルーベリー、ヒアルロン酸、スカイミントまでさまざまです。


大浴場でエレベーターを使用する充実度は、まさに温泉のデパート!できるだけ早くチェックインをして、日中から翌朝にかけて、森の散歩湯を制覇するのをおすすめします。

ぜひ訪れてほしい季節は冬。日が昇る前、極寒の気温の中、霧氷(むひょう、空気中の水分が木々に着氷する現象)を眺めながら入る雪見風呂は非日常のひとときです。北海道らしい大自然を感じられます。


バリエーション豊かなビュッフェも人気の理由。海鮮やお肉に加え、自社で育てた伊達野菜まで、北海道のあらゆる味覚が揃っています。その場で作っていただけるラーメンやスイーツもあり、ライブ感もポイントです。

名物のワゴンサービスでは、ホテルの数種類のスペシャリテを出来立てで味わえます。熱々のビーフシチューやチーズフォンデュはどれも絶品です。


忘れられないのは「ここの温泉はパワースポットだから、泊まったからには良いことたくさんあるよ!」という、ラッキーワゴンを運ぶスタッフさんの一言。

どのスタッフさんも明るく話しかけてくれ、ほっこりとした気持ちにしていただける。接客一つひとつに温かみを感じられる、おもてなしの心の深いリゾートホテルです。

■詳細情報
・名称:緑の風リゾートきたゆざわ
・住所:北海道伊達市大滝区北湯沢温泉町300-2
・地図:
・アクセス:伊達市街から車で約30分、苫小牧市街から車で約1時間5分
・電話番号:0570-026-574
・参考料金:1泊2食付き17,000円前後/人 ※2名予約の場合
・オススメの時期:冬(12月〜3月)
・公式サイトURL:https://midorinokaze-resort.com/

ランプが点る交流の宿|渡合温泉旅館(岐阜県)


全国有数の隔絶したロケーションに位置する秘湯「渡合温泉旅館」。付知川源流を目指して6kmほど未舗装路を走ると、電気もガスも通っていないランプの宿に到着します。たどり着くだけでなんだか達成感を感じられます!

お宿に入ると、どこか懐かしいガスランプの匂い。ロビー横に並ぶ古いカメラに思わず目がいきます。「お風呂はもう沸いていますよ!」とお母さん。アットホームなオーナー家族があたたかく迎えてくださいました。


かつて山仕事をする人々を癒やす温泉として始まった渡合温泉は、源泉温度10.6℃の冷泉を薪で沸かしたもの。浴槽の木の香りが心地よく、肌に染み渡るような繊細な肌触りのお湯に浸かります。

夏には溢れるような緑、秋には鮮やかな紅葉を見渡すロケーションは本当に見事です。湯面の揺らぎと湯気、優しく照らすランプの灯り。一人ボーッと温まる時間は、日常から解放された癒やしのひとときです。


お料理は朝夕ともに食べきれないボリュームの山の幸。季節の野草や山菜、渓流から採れる川魚など、天然食材が豪華に食卓を彩ります。自家発電による最低限の電気で、ここまで豪華なお料理を出していただけるなんて……!

名物料理は、顔の大きさほどにもなる「わらじ五平餅」です。食べ応え抜群の五平餅をいただいた後、もりもりの山菜の天ぷらと〆のご飯という流れに、初めて泊まった方は漏れなく驚きます(笑)。


夕食後は、宿のご主人が開催してくれるランプの使い方講習会とゲーム大会。ユーモアあふれるご主人のトークに引き込まれながら、宿泊者同士の笑い声に包まれます。

ゲーム大会は消灯時間の22時でいったん終わりとなりますが、なんと翌朝に持ち越し。朝食後には景品つきのゲーム大会が開催されます。秘境にありますが、人との交流を楽しめるお宿です。

■詳細情報
・名称:渡合温泉旅館
・住所:岐阜県中津川市加子母渡合
・地図:
・アクセス:中津川市街から車で約1時間
・定休日:冬季休業
・電話番号:090-1092-8588
・料金:1泊2食付き13,460円/人
・オススメの時期:初夏(6月)、紅葉(10月末〜11月初旬)
・公式サイトURL:https://www.doaionsen.jp/

宿を求める旅は、さらにディープに


素晴らしい宿泊を伴うと旅の満足度はグッと上がります。そして宿を知ると地域が見えてきて、そこからガイドブックでは見えてこない、ローカルな旅プランが見えてくることも。

今まで日帰りの多い登山や、宿はあまり気にしない自転車旅がメインの筆者でしたが、これからはもっとディープな日本の魅力を楽しめるお宿を探して、旅行を楽しんでいきたいと思っています。

All photos by Yuhei Tonosho

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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