ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

いよいよ2023年が始まりました。アウトドア好きの中には「今年どの山に登ろうか?」なんて計画を立てている方もいるのではないでしょうか。

筆者もその一人。日本百名山を中心に300以上の山に登ってきましたが、登れば登るほどさらにマニアックな山を探してしまう今日この頃です。

そこで本記事では”山岳自転車ライター”が選ぶ、おすすめの名山をお届け!

北の最果ての独立峰から、紅葉の絨毯が広がる山、青と白の織りなす世界に息を呑む雪山からスリリングな岩稜の峰まで、2022年に登った山の中から5つご紹介します。

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3分の1が北海道。充実していた2022年の山旅


過去4年間ほど、年間30〜50座を目標に登山を続けてきた筆者。登山愛好家のバイブル『日本百名山』の山々をはじめとして、近場でも素晴らしい郷土峰があることを実感してきました。

そのなかで2022年のテーマとなったのは”北海道の山”。3回にわたる遠征のすえ、合計10座もの山に登ることができました。

雄大で果てしない自然が広がる北海道のフィールド。厳しくも美しく、アドベンチャーで登りごたえのある山ばかりでした。


紅葉の時期には、甲信越にある憧れの山にも挑戦。全山紅葉の雨飾山や、日本一の山岳紅葉と謳われる涸沢カールなど、息を呑む絶景に感動の連続でした。

登頂数は過去4年間で最も少ない35座という結果になりましたが、量より質の2022年を楽しめたと思います。

雨飾山|女神の横顔と大パノラマの紅葉【新潟・小谷】


長野県小谷村と新潟県糸魚川市との県境、妙高連峰西端に位置する「雨飾山(あまかざりやま、標高1,963m)」。山名の由来は祭壇を祀り、雨乞いの祈願をしたことから。日本百名山のひとつに数えられています。

山好きの中でも名高い紅葉の名山を拝もうと、10月の中旬に入山しました。道は雨飾高原キャンプ場からの一本道。前半は淡々と樹林帯を登っていきますが、中盤の河原まで来ると、目の前には雨飾山と紅葉のコラボレーションが!


さらに進んで尾根に取り付くと、周囲の山々が紅葉で埋め尽くされるような大パノラマが広がります。高度感もあり、下山時に紅葉に向かって飛び込んでいくかのように歩くロケーションは唯一無二と言えるでしょう。


山頂からテーブル状の稜線を振り返ると、登山道がまるで女神の顔のように見えることで話題です。筆者が訪れたときには、雲海の間から顔を覗かせる北アルプス主稜線や槍ヶ岳を遠望することができました。

■詳細情報
・名称:雨飾山(あまかざりやま)
・住所:新潟県糸魚川市梶山
・地図:
・アクセス:雨飾高原キャンプ場(登山口)まで小谷村中心部から車で約30分
・所要時間:往復約6時間
・オススメの時期:秋
・備考:紅葉の見頃は10月中旬〜下旬です。Yamap(https://yamap.com/maps/48)のログで、登山道の状況を確認しながら計画を立てましょう。
・Yamap公式サイトURL:https://yamap.com/mountains/165

斜里岳|渡渉の先に続く最果ての独立峰【北海道・斜里】

知床の最高峰・羅臼岳に続く、日本のうち最果ての山の一つといえる「斜里岳(しゃりだけ、標高1,547m)」。知床半島の付け根にあり、裾野の広い独立峰のような山容を呈しています。こちらも日本百名山のひとつです。

登山口は2つ、登山道は3つありますが、そのうち斜里岳登山口(清岳荘、せいがくそう)から新道・旧道を周回するルートが人気です。基本的に旧道は、下二股の分岐から上二股の分岐まで渡渉区間。途中、川の中を歩いて登るスリリングな場所もあります。

※渡渉:川をわたること


真夏の暑い時期に、水飛沫を浴びながら進んでいく登山は、とても心地良いもの。深い樹林帯からワイルドな渡渉、森林限界を超えるダイナミックな稜線まで、劇的な景色変化が素晴らしいです。

※森林限界:高木が生育できず森林を形成できない限界線。


山頂から広がるのは、知床半島最先端まで見渡す雲上のパノラマや、果てしなく続くオホーツク海、北方領土の島影。体力的な負荷も高い山ですが、登頂時や下山時の達成感もひとしおです。

下山後は国内有数のモール泉・斜里温泉でひとっ風呂するのがおすすめです。

■詳細情報
・名称:斜里岳(しゃりだけ)
・住所:北海道斜里郡清里町江南
・地図:
・アクセス:斜里岳登山口まで斜里町中心部から車で約35分
・所要時間:往復9〜10時間
・備考:渡渉が連続するため、天候が安定しているタイミングでの登山をオススメします。Yamap(https://yamap.com/maps/12)のログで、登山道の状況を確認しながら計画を立てましょう。
・オススメの時期:夏
・公式サイトURL:https://www.kiyosatokankou.com/sharidake/

貝月山|大パノラマ稜線を楽しむ雪山縦走【岐阜・揖斐】

日本屈指の豪雪地帯のひとつ、揖斐の名峰「貝月山(かいつきやま、標高1,234m)」。雪のない時期にはハイキング感覚で登れる山なのですが、冬になると最短ルートが閉ざされ、12本アイゼンが必要な本格的な雪山に変わります。

※アイゼン:氷や氷化した雪の上を歩く際に滑り止めとして靴底に装着する、金属製の爪が付いた登山用具。

特に小貝月山〜貝月山の稜線を歩く区間は爽快!天気が良ければ中央アルプスから御嶽山、乗鞍岳から白山まで、日本屈指の峰々がズラリと展開します。絵画のごとき美しい山並みに吸い込まれるような稜線の感動は、今でも忘れられません。


まさか岐阜・滋賀県境から、遠く離れた飛騨・信州の山並みを望むことができるとは……!山というフィールドはいつも、良い意味で期待を裏切ってくれ、抑えきれない冒険心を満たしてくれる場所だと再確認できました。


TAMRONの超望遠ズームレンズ「TAMRON 18-400mm F3.5-6.3 Dill VC」を持参したことで、切り取れる範囲がさらに広がったのも大きなポイント。山頂から北アルプスの槍ヶ岳や剱岳を収められたときは感無量でした。

■詳細情報
・名称:貝月山(かいつきやま)
・住所:岐阜県揖斐郡揖斐川町日坂
・地図:
・アクセス:揖斐高原貝月リゾート(登山口)まで大垣市街から車で約1時間
・所要時間:往復約6時間
・オススメの時期:冬
・備考:積雪量が多く、登山道は一部凍結している恐れがあるため、アイゼンとスノーシュー(ワカン)が必須です。Yamap(https://yamap.com/maps/7387)のログで、登山道の状況を確認しながら計画を立てましょう。
・Yamap公式サイトURL:https://yamap.com/mountains/2389

徳舜瞥山|モンスター樹氷と絵画の世界【北海道・伊達】

北海道伊達市大滝区にある郷土峰「徳舜瞥山(とくしゅんべつやま、標高1,309m)」。夏季であれば山頂まで片道2時間弱と手頃な山ですが、冬になると最短コースが閉ざされ、ワカンやスノーシューが必要な本格的な冬季バリエーションルートの雪山へと変わります。

※ワカン/スノーシュー:雪の上を快適に歩くための雪上歩行具。和かんじきの略。スノーシューは西洋かんじきのこと。

目印となるトレースがないと遭難の確率も上がってしまうので、筆者はよく晴れた休日に挑戦しました。サラサラの雪原に映える氷の草木を横目に、蝦夷富士と讃えられる後方羊蹄山(こうほうようていざん)を遥かに望みます。

※トレース:人の踏み跡のこと


中盤までくるとアイスモンスターと呼ばれる大型の樹氷が現れ、その間を縫うように登山道が続きます。積雪量も多く傾斜もきついため中々スリリングですが、どこまでも広がる北海道の銀世界は圧巻です。


山頂まで至ると、絵画のように美しい支笏湖と、その外輪山を見渡します。ひたすらに青と白が織りなす絶景。日高山脈のアポイ岳まで見渡せる絶好のコンディションの中、非日常の大冒険を楽しみました。

■詳細情報
・名称:徳舜瞥山(とくしゅんべつさん)
・住所:北海道伊達市大滝区上野町
・地図:
・アクセス:冬季登山口まで千歳市街から車で約1時間半(Google Map上の”天空の道”が目印)
・所要時間:往復約8時間
・オススメの時期:冬
・備考:積雪量が多く、登山道は一部凍結している恐れがあるため、アイゼンとスノーシュー(ワカン)が必須です。Yamap(https://yamap.com/maps/739)のログで、登山道の状況を確認しながら計画を立てましょう。
・Yamap公式サイトURL:https://yamap.com/mountains/17234

西穂高岳|険しい岩稜とジャンダルムに魅せられて【岐阜・高山】


新穂高ロープウェイ・西穂高口駅から日帰りで往復できる「西穂高岳(にしほだかだけ、標高2,909m)」。北アルプスの岩稜入門として登山中級者に好まれている名山です。

※岩稜:岩で構成される稜線

距離は往復8.5km、累積標高差は1,000m以下とそれほど負荷は高くないルートですが、なんと西穂高岳には11ものピーク(山頂)があり、それを繋ぐように細い岩尾根とアップダウンが続いていきます。


連続するピークのはじめ(11峰)となる西穂独標(にしほどっぴょう、標高2,701m)までであれば初心者でも登頂可能ですが、そこから先は別世界。特に11峰〜8峰(ピラミッドピーク)の稜線は一部が切れ落ちており、細心の注意が必要です。


しかし、その稜線を越えた先に山頂へたどり着けた高揚感は、一度味わうと病みつきになってしまうほど。穂高連峰の主峰・奥穂高岳まで続く、日本最難関と言われるジャンダルムの頂に想いを馳せてしまいました。

※ジャンダルム:奥穂高岳の西南西にあるドーム型の岩稜。標高は3,163m。名称はスイス・アルプス山脈のアイガーにある垂直の絶壁の通称に由来する。フランス語で国家憲兵のこと。

■詳細情報
・名称:西穂高岳
・住所:長野県松本市安曇
・地図:
・アクセス:新穂高ロープウェイ・山麓駅まで高山市街から車で約1時間15分
・所要時間:往復7時間
・オススメの時期:夏
・備考:岩稜が連続するため、天候が安定しているタイミングでの登山をオススメします。Yamap(https://yamap.com/maps/65)のログで、登山道の状況を確認しながら計画を立てましょう。
・Yamap公式サイトURL:https://yamap.com/mountains/1409

登れば登るほど感動が更新される登山の世界


素晴らしい山に出会うと、決まって「こんなに感動する登山は他にない!」と思うのですが、山に足を運ぶたびに同じ発言を繰り返している気がします。

それほどに圧倒的な自然が広がる山のフィールドは、あくなき好奇心を満たし、震えるほど感動を誘う場所です。

一生かけても行き尽くせないほどの大冒険を楽しめる登山。今年はどんな山に出会えるか楽しみでなりません。

All photos by Yuhei Tonosho

ライター
土庄 雄平 山岳自転車旅ライター|フォトグラファー

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤めながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。 山岳雑誌『山と渓谷』へ寄稿、「夏のYAMAPフォトコンテスト2020」入賞、「Yahoo!ニュース ベストエキスパート2024」地域クリエイター部門グランプリなど。山での活動をライフワークとし、学生来、日本全国への自転車旅を継続している。

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