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1996年東京生まれ。ステキな人やモノを広めるライター。2019年にフリーライターとして独立し、インタビュー記事、地方取材記事、イベントレポート、プレスリリースなどの執筆を手がける。短期間でサクッと行く旅と音楽が好き。普段は多国籍なシェアハウスで暮らしています。

こんにちは、TABIPPO編集部の伊藤美咲です。

この記事は、2022年7月21日に行われたオンラインイベント「元アナウンサーの地域おこし協力隊員が語る、”摩周湖といで湯の街”北海道・弟子屈町の未来」のレポート記事です。

このイベントでは、ゲストに北海道川上郡弟子屈(てしかが)町で地域おこし協力隊として活動している川上椋輔さんをお迎え。TABIPPO代表の清水と観光の未来についてトークセッションをしていただきました。

地域おこし協力隊や弟子屈町の魅力についてたっぷりと聞くことができ、地域との関わり方についても学ぶことができたこのイベント。参加した方も、できなかったよという方も、ぜひ最後までご一読ください。

清水直哉

川上椋輔さん

(以下、トークイベントより抜粋)

今、日本で一番アツい制度!?地域おこし協力隊とは

川上

地域おこし協力隊は、今日本で一番アツい制度だと思っています。総務省から予算をいただいて、3年間という決められた期間の間、地域の中でさまざまな活動をすることができる仕組みです。

都市部にいる若者を地方に促すことを目的とした制度なので、現在都市部で暮らしている方は採用の可能性が高くなりそうです。

清水

僕は群馬から東京に出てきたんですけど、この場合はどうですか?

川上

しみなおさんの場合は、まだ地域おこし協力隊になったことがない方ですよね。かつ首都圏である東京在住なので、間違いなく地域おこし協力隊になれますよ。

清水

地域おこし協力隊は、僕もアツい制度だと思っています。地域おこし協力隊の制度化は2009年。2022年現在、協力隊の人って全国に何人くらいいるんでしょうか?

川上

2022年度は、6000人以上が全国で地域おこし協力隊として活動しているそうです。国としてはもっと増やしていきたい方針らしいですね。卒業時に支援金がもらえたり、個人事業主でも活動ができたり、コロナで期間が延長できるようになっていたりするので、個人的には国も本腰を入れているように感じます。

清水

地域おこし協力隊は、間違いなく今後の日本を支えていく制度のひとつだと思いますね。

観光資源の宝庫!弟子屈町の魅力

川上

弟子屈町は、道東の真ん中に位置する地域です。面積の半分以上が阿寒摩周(あかんましゅう)国立公園に位置しているので、ほとんどの人が国立公園の中で生活をしています。

北海道弟子屈町川上さん作成の資料

川上

真夏でも気温が25度ほどで、冬は雪が少なく快晴が多いという気候も魅力です。世界2位の透明度を誇る摩周湖、日本一のカルデラの湖と言われる屈斜路湖、硫黄山と観光資源に溢れていて、日本屈指の酸性度を誇る川湯温泉もふくめ、源泉が7つもある街なんです。

北海道弟子屈町_阿寒摩周国立公園川上さん作成の資料

清水

最近TABIPPOも阿寒摩周国立公園と仕事をさせてもらっていますが、弟子屈町は本当に観光資源が多いですよね。

川上

僕も最初は摩周湖と屈斜路湖は名前を聞いたことあるくらいで、まさか同じ街にあるとは思ってなかったですね。

清水

弟子屈町は自然が豊かなだけでなく、アイヌの文化も根付いていますよね。自然も人間もフラットだという考えが根本にあるから、綺麗な自然が残っているのだろうなと思います。これは実際に見てもらわないと伝わらないですよね。

川上

まだあまり知られていないからこそ、見つけたときの感動が大きい街だなと思います。

川上さんが、活動の舞台として弟子屈町を選んだ理由

川上

3.11での被災経験をきっかけに、学生時代から地域で活動することに関心を強く持ちました。でも、大学卒業後の若者が地域に入っても何もできないと思い、関心を持ちながらも、小さい頃からの夢であったアナウンサーの道へ進みました。

けれど、就職3年目の頃にアナウンサーを続ける意味を見いだせなくなってしまったのと同時に、コロナで働き方や生き方、考え方が大きく変わるタイミングが来ました。さらに、道東テレビが地域課題の解決を目的に、弟子屈町で活動をしていくフェーズに入るタイミングも重なっていたようで、「弟子屈町に行きませんか?」とお声がけいただいたことが結果的に移住につながりました。

清水

仕事で訪れる前に、弟子屈町に行ったことはあったんですか?

川上

じつは、なかったんですよ。だからこそ初めて訪れたときに衝撃を受けて、迷わず弟子屈町で活動することを決められましたね。

清水

以後の活動が連なった結果、人口の約半分の人が川上さん運営の弟子屈町YouTubeのチャンネル登録をしてくれているからすごいですよね。弟子屈町にいると、川上くんの知名度に驚かされます。

地域へ入り込むには弱点を曝け出すことが大事

清水

縁もゆかりもない地域に入り込むことは難しいと思いますが、川上さんは、最初弟子屈町との関係はどのように築いていったのですか?

川上

僕は初日から自分のチラシを作って配っていたんですよね。思い返すと破天荒なことやっていたなと思うんですけど(笑)。でも、さすがにチラシを全町民に配り続けるのは難しいと気づいて、それからは夜の飲み屋街に繰り出して地域の方と話すようにもしました。

清水

なるほど。

川上

いずれにせよ、移住当初から、地域で何をするにしても、まずは自分が何者かを伝えないと誰にも刺さらないと感じていたんです。だから、コミュニケーションを取る時間は大切にしていましたね。

清水

僕はめちゃくちゃ人見知りで、見知らぬ土地を開拓するより自分のところに仲間を集めるタイプなので、尊敬します。

川上

弟子屈町は移住者が多いので、訪れた人を受け入れる体制が整っているのかなとも思います。

清水

周りに観光地も多いから、人が来ることに対して寛容な文化があるのかもしれないですね。

川上

あとは、弟子屈で暮らし始めてから気づいたことは、自分の弱点を曝け出し続けることが大事ですね。わからないから教えてほしいというスタンスを出していかないと、街の方々もどう接すればいいのかわからないんですよね。

弟子屈町に限らず、地方は若い世代が来てくれるだけで嬉しいと思っていて、どのように手伝えるのかを考えてくださる方が多いと感じます。

清水

自らコミュニケーションを取りに行くだけでなく、素直でいることで助け合う関係性になっていくんですね。

質疑応答[1]:地域のクリエイターとのつながり方は?

川上

人口が約7,000人で若い世代同士が繋がりやすい環境ではあるのですが、つながる場所を作ることは大事だと思います。弟子屈町に住んでいるということは、リモートでできる仕事をしている方が多いんですよね。

Twitterで弟子屈町関連のツイートにいいねをしている人が弟子屈町在住と書いている場合も多いので、DMを送ってみることもあります。僕が移住してきた2020年よりも、今の方がSNSを使っている人がかなり増えた印象です。

今は僕が弟子屈町の広告塔のような位置付けで活動させてもらっているので、ありがたいことに周りから情報をもらえる機会が増えました。やっぱり地域おこし協力隊の肩書きは強いなと感じますね。

清水

僕も弟子屈町に行ったときに川上くんが集まる場所を作ってくれたおかげで、すごく過ごしやすかったです。あと「JIMBA」というコワーキングスペースとカフェを掛け合わせた場所があるのも、大きいかなと思います。

川上

気軽にみんなが集まれる場所がないなと思って作ったのですが、逆にクリエイターだけが集まる場所になってしまうと街の人が入ってきづらくなってしまうので、設計は試行錯誤しているところですね。

弟子屈町のコワーキングスペースに来る方は、仕事をしに来ているのではなく、コミュニケーションを求めてきているのは面白いなと思います。

清水

先日HafHの大瀬良さんたちと話していたのですが、川上くんは風の人と土の人を繋ぎ合わせる「風土コーディネーター」ですよね。僕らが3日間行ったときも、50人くらいと会わせてくれましたし。

川上

人と人を繋ぐときに当事者二人だけで合わせるのと、繋ぎ合わせた人がいるとでは全然違うじゃないですか。実は弟子屈町に住んでいる人同士でも、きっかけがなくて交わってこなかった人たちってたくさんいるんですよね。

そこに移住者である僕たちが居合わせたときに巻き込んで繋ぐことで、相乗効果が発揮されることってすごく多いんです。こういうことができるのも移住者の強みかなと思います。

弟子屈町が抱えている課題

清水

旅の変化に伴ってビジネスも変わっていく必要があると思いますが、弟子屈町が抱えている課題は何だと考えていますか?

川上

地域の方々の言葉が統一されている……つまり未来イメージが共有・統一されている場所は、強いと思うんです。でも、弟子屈町はまだみなさんの目指すべき姿が統一化されていないと感じるので、もっと対話をすべきだなと思っています。

最近は弟子屈町に注目してくれている人が増えて、川湯温泉だけでなく市街地で過ごす時間を重要視してくださる人も多くなっているので、このチャンスを活かしていきたいですね。

清水

まずは対話をして、目指す方向性を定めることが必要ですね。

川上

弟子屈町にある企業が観光庁の「第2のふるさとプロジェクト」のモデル事業に採択されていることもあり、先日みんなで弟子屈町について話し合う機会があったのですが、やっぱりみなさんがぼんやりとイメージしている未来は同じなんですよね。

まだまだ対話をする必要はありますが、そのとき全員で出した「人類が忘れてしまった本物を取り戻せる場所」という言葉は一つのキーワードになるかなと思います。

清水

観光地のプロデュースは、会社の経営と似ているなと感じます。TABIPPOが「旅で世界をもっと素敵に」というビジョンを掲げて事業を展開しているように、観光地も目指す方向性に向かってどう動いていくかを考える必要があるので。

弟子屈町のみなさんや近隣地域の方々ともっと対話をして、チームワークを築いていくことが大切かなと思います。あとは外部から訪れた僕らが地域の方々にその土地の良さを伝えるとすごく喜んでくださるので、ポジティブな影響を与えることでエンパワーできることも多いんだなと気づきました。

弟子屈町を訪れる旅行者に求めること

川上

弟子屈町は訪れた人を快く受け入れてくださる方が多いので、積極的に地域に入ってくださる方にぜひ来ていただきたいですね。さまざまな人との対話が生まれることで、もっと多くの相乗効果が生まれると思います。

景色は一度でいいかもしれないが、人にはもう一度会いたくなる」という言葉が好きなのですが、まさに弟子屈町には、また会いたいと思える人が多い街だと思います。

清水

「弟子屈町」と「弟子屈町にいる人」に関わりたい人が来てくれると嬉しいですね。僕も穏やかな豊かさがある弟子屈町に行くと、毎回いろんな刺激を受けて帰ってきます。

川上

弟子屈町には本当に面白い方がたくさんいますからね。

質疑応答[2]:質疑応答:参考にしている地域はありますか?

川上

じつはないんですよね。各地域の成功事例はたくさんあるんですけど、それに囚われるのも良くないかなと思っています。僕がいろんな地域を旅する中でいいなと感じる街に共通するのは、飲みの場でポジティブな街の未来の話をしていることなんですよね。

特定の地域を参考にすることはありませんが、ポジティブな街の未来を語れる土壌は大切にしています。

質疑応答[3]:地域おこし協力隊の魅了をもっと知りたい

川上

行政と民間の間で自由に3年間活動できるのが、大きな魅力だと思っています。僕は個人事業主の形態で行っていますが、予算をいただきながら自分のビジネスを成長させることができるのは、精神的にもすごく助かりますね。地方で何かやりたい場合には、活用すべき制度だと思います。

清水

もちろんネガティブな側面もありますが、伸び代がいくらでもある制度でもあるので、ぜひチャレンジしてほしいなと思います。

これからの新しい旅とは

川上

「旅」と「暮らし」の境界線がなくなってきている中でも、人々を受け入れる地域であり続けることが大事だと思っています。弟子屈という街や旅に関しては、ずっと向き合い続けていきたいです。

清水

旅は消費するだけではないことを、旅行者視点でも地域の視点でも考えられるようになると、やれることってたくさんある出てくるはずなんですよね。まさに旅の在り方が変わっている時期なので、ぜひ一緒に観光の未来を作っていきましょう。

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