四国、徳島県にある一番小さな町「上勝町」。
山あいの小さなこの町では世界から注目されている取り組みがなされています。
2003年、日本で初めて宣言された「ゼロ・ウェイスト宣言」。
そもそもゼロ・ウェイストとはごみをどう処理するかではなく、ごみを生み出さない社会を目指す考え方です。
私たちが無理なく自然とともに豊かに暮らしていく、これからの生活へのヒントを取材してきました。
未来のことを考え、ごみのことを学ぶ、大人の修学旅行in徳島です!
見出し
- 1日本初のゼロ・ウェイスト宣言をした上勝町とは
- 2上勝町のゼロ・ウェイスト対策
- 2.180%以上の高いリサイクル率
- 2.2家庭用電動コンポストの普及
- 2.345分別、その方法とは?
- 2.4資源による町の収入
- 2.5楽しくごみの分別をしてもらう工夫
- 3ゼロ・ウェイストを体験する
- 3.1日々の暮らしを見直すヒント①HOTEL WHY
- 3.2日々の暮らしを見直すヒント②くるくるショップ
- 4水平リサイクル「ボトルtoボトル」
- 4.1知られざる日本のペットボトルリサイクル率
- 4.2ペットボトルのリサイクルは次のステージへ、「ボトルtoボトル」
- 4.3サントリーグループの取り組み
- 5サントリーグループと上勝町が目指す未来
- 6私たちにだってできる、ちょっとしたこと
今回訪れた、徳島県・上勝町では、このゼロ・ウェイスト宣言から17年経った今、町民一人ひとりの取り組みへの努力により、リサイクル率80%を達成しました。
そんな上勝町は、2023年5月29日に飲料メーカーのサントリーグループと使用済みのペットボトルを再びボトルとして再生させる「水平リサイクル」における協定を締結しました。
リサイクル率80%以上という驚異的な数値を成果としてあげる上勝町の取り組みとは?そしてサントリーグループと協定を結んで推進していく「水平リサイクル」とは?
本記事では、上勝町の取り組みや、上勝町の目指す未来についてご紹介します。
日本初のゼロ・ウェイスト宣言をした上勝町とは
廃材で作られたZERO WASTEという文字
1997年まで野焼きが行われていた、上勝町。
もともと第二次世界大戦以前、上勝町で排出されるごみは、生ごみ、紙、金属などでしたが、生ごみは家畜のえさや堆肥化、紙は商店が品物の包装紙として再利用し、金属も買取回収されていたのだそう。そのため、ごみになるものはほとんどなく、自然に還る素材だからこそ野焼きが可能でした。
時は過ぎ、高度経済成長期。
上勝町民の片山さん
プラスチックなどの製品などが多く出回るようになり、物を安価に手に入れられるようになったことによって不要なものは自宅の庭先などで焼却されるようになったと言います。
1975年前後から現在上勝町ゼロ・ウェイストセンターがある日比ヶ谷で公然と野焼きが行われるようになりました。取材をさせてくれた片山さんは、この頃は悪臭が漂い、黒い煙が昼夜問わず立ち上っていたとおっしゃっていました。
家庭にある電動コンポストで生ごみを処理する
そんな野焼きでごみを処理していた上勝町が少しずつ変わり始めたのは1991年、町による生ごみ電動コンポストの補助制度開始からでした。1995年以降町民は1万円の自己負担のみで電動コンポストを購入できるようになり、家庭での生ごみの処理が浸透するようになりました。
現在ゴミステーションが上勝町にはありますが、生ごみは町民のみなさんが自宅で処理するため、ゴミステーションは全く生ごみの異臭がしないのです。
1997年には日比ヶ谷ゴミステーションが開設され、9分別が開始されました。
その後、廃棄物処理法改正によって野焼きが禁止されることになった上勝町では2基の小型焼却炉を導入します。しかしダイオキシンという有害物質の排出基準を満たせなくなってしまい、燃えるごみをより削減するために、上勝町は分別を増やす選択肢をとりました。
2000年、2基の焼却炉は閉鎖され、35分別が上勝町では始まりました。町の担当課の方は55の集落を周り、分別の必要性を必死に説明したそうです。
そして2003年、上勝町は日本で初めてのゼロ・ウェイストを宣言したのです。
2016年には分別数が45になり、今なお上勝町の方々は日々ごみを45種類に分別してごみ分別所&ストックヤードへごみを持ち込んでいます。
上勝町のゼロ・ウェイスト対策
今では、ごみを45種類に分別する上勝町。具体的には分別においてどういった取り組みがなされているのでしょうか。
80%以上の高いリサイクル率
細かく分別されているごみたち
上勝町では、2020年までに焼却・埋め立てのごみをゼロにするという目標をたて、2018年にリサイクル率80%を達成しました。
家庭用電動コンポストの普及
上勝町にあるごみ分別所&ストックヤードでは生ごみを捨てることはできません。上勝町の人々は各自家で電動コンポストを使用して生ごみを処理しています。
この生ごみを各自の家で処理する仕組みが実現した背景には、町による電動コンポスト購入の補助金制度が大きな役割を果たしていると言えるでしょう。
45分別、その方法とは?
自宅からごみを運び込む片山さん
町民の方は、自宅で分別したごみをごみ分別所&ストックヤードへ運びます。
ペットボトルを水ですすぐ
水洗いしたあとはペットボトルを乾かす
分別されたペットボトルのキャップたち
ペットボトルは、ボトル本体・キャップ・ラベルの3つに分け、ボトル本体はしっかり水洗いをし、その後乾燥させています。
プラスチックの袋や容器もきちんと水洗いをして乾燥をさせたあと、ごみ分別所やストックヤードへ持ち込みます。
水洗いし干して乾燥させているプラスチック袋
どうしても汚れが落ちないもの、プラマークがないものは「廃プラ」としてさらに分別されます。
プラスチックもさらに分別されていた
45分別を継続していくコツは、自宅である程度分別しておくこと。
ごみ分別所&ストックヤードへ行き、その場で45種類に分別するのはとても大変だけれど、日頃からごみが出る度にある程度分別しておくことによって少し楽になると町民である片山さんは教えてくれました。
ゴミステーションでスタッフさんと会話をしながら分別作業を進めていく片山さん
それと、慣れ。
当初分別する数がどんどんと増えていっていた時期は正直面倒だし、大変だったと片山さん。
ただその場その場で1つひとつこなしていけば、やがて慣れて習慣化したとのこと。片山さんのご自宅にもお伺いしましたが、ご自宅で分別されているのは10種類程度でした。
思い返してみれば、上勝町民以外の方も、燃えるごみ、燃えないごみ、プラスチック、金属、古紙……と、普段から分別していますよね。
特別のように思えますが、じつは私たちだって、日々ごみを分別できているのです!
資源による町の収入
丁寧にごみを分別することは、ごみの処理費が抑えられるだけでなく、資源として高く売ることも可能になります。
金属製キャップは資源として収入源になるようだ
ごみ分別所&ストックヤードでは、分別するボックスごとに紙が貼られていて、そのごみが資源として売ることができるものには「入 〇〇円」、ごみとして処理されてしまうものは「出 〇〇円」と記載されています。
ごみの分別によるこの収入は、結果的に上勝町におけるごみの分別の持続化を支えています。
楽しくごみの分別をしてもらう工夫
ただごみを分別して自分でごみ分別所&ストックヤードにまで運んで捨てに行くなんて。そんなのただただ手間でめんどくさそうだし。何かご褒美がないと自分なら無理そう。
……心が綺麗な方は思わなかったかもしれませんが、正直私はこんな風に感じてしまいました。
いくら環境のため、未来の自分たちのため、とは言えどやはり楽な方に流れてしまうのが人間です。でもそんな私のような面倒くさがりでも楽しく、頑張れそうな仕組みがありました。
それが「ちりつもポイントキャンペーン」。
ポイントがたまる「ちりつもポイントキャンペーン」
以下8種類の資源はごみ分別所&ストックヤードできちんと分別して捨てると1種類ごとに1ポイントもらうことができます。
・紙パック(内側・白)
・紙パック(内側・銀)
・紙コップ(内側・白)
・使い捨てカイロ
・雑誌
・硬い紙芯
・歯ブラシ
・洗剤類詰め替え袋
事務所へ行き、「3ポイント頂戴〜」と片山さん。
ポイントが自己申告制なのも町民の方同士の信頼関係があってこそ。とても素敵なつながりの形だなと思いました。
貯まったポイントは、商品券などに交換できるそう。
「あと何ポイントで商品券に変えられるから頑張らないと〜」とにこにこと話してくださる片山さんを見ていると、こんなふうに楽しんでごみ分別ができるなら、私たちも頑張れるかも?そんな気持ちになりました。