ライター
永崎 裕麻 生きる旅幸家

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。 2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2014/2016/2017)のフィジー共和国へ07年から移住し、現在13年目。 100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府事業に参画、教育企画の立案、ライターとして「ハフィントンポスト(日本版)」「日経doors」などで執筆、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動中。 二児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

「世界一周した」と言うと絶対に聞かれる定番の質問があります。

そうです。「どの国がいちばん良かった?」です。

旅が終わり、いちばん最初にこの質問をされたとき、考え込んだ末、「エクアドルかな」と答えたのをいまでも覚えています。

ただ、その時いちばん最初に私の脳裏をよぎった国は別の国でした。でもその国名を声に出すことはありませんでした。変な空気になりそうだったので…。

その国とは「ウジュピス共和国」です。

「どこやねん、それ!?」というツッコミが聞こえてきますので説明させてください。

アーティストが集まる未承認国家

photo by shutterstock
バルト三国(ヨーロッパ)のひとつであるリトアニア。その首都ヴィリニュス内にウジュピス共和国はあります。

「え?国の中に国?」と頭に大きなハテナが浮かぶと思います。ウジュピス共和国というのは実は正式に認められた国ではなく、未承認国家です。

1997年、ウジュピス地区の住人たちが独立を宣言し、現在7,000人ほどが住んでいます。アーティストの方が多くウジュピス大統領(大統領がいるのも驚き)も詩人であり、音楽家であり、映画監督です。

41条からなるユニークな憲法

ウジュピス共和国には憲法もあります。それが非常にユニークなので、少しみてみましょう。

1. 誰にもヴィルネーレ川のほとりに住む権利があり、そしてヴィルネーレ川には皆のそばを流れる権利がある。
2. 誰にもお湯と冬には暖房と瓦の屋根を有する権利がある。
3. 誰にも死を選ぶ権利があるが、決して義務ではない。
4. 誰にも間違いを犯す権利がある。
5. 誰にも自分らしくいる権利がある。
6. 誰にも人を愛する権利がある。
7. 誰にも愛されない権利があるが、これは必須ではない。
8. 誰にも平凡に生き、知られない権利がある。
9. 誰にも怠けて何もしなくてもいい権利がある。
10. 誰にも猫を愛し、世話をする権利がある。
11. 誰にも、犬か人間のどちらかが死ぬまで、犬の世話をする権利がある。
12. 犬には犬である権利がある。
13. 猫には飼い主を愛する義務はないが、必要とされたら飼い主を助けなければいけない。
14. 誰にも時には義務に無自覚でいていい権利がある。
15. 誰にも何かを疑う権利があるが、これも義務ではない。
16. 誰にも幸せになる権利がある。
17. 誰にも幸せにならない権利がある。
18. 誰にも口にしない権利がある。
19. 誰にも信念を持つ権利がある。
20. 誰にも暴力をふるう権利はない。
21. 誰にも人間の小ささと大きさを分かる権利がある。
22. 誰にも永遠を侵害する権利はない。
23. 誰にも分かる権利がある。
24. 誰にも何も理解しない権利がある。
25. 誰にもどの民族でいる権利がある。
26. 誰にも誕生日を祝う権利または、祝わない権利がある。
27. 誰もが自分の名前を覚える義務がある。
28. 誰でも持っているものを分け合うことができる。
29. 持っていないものは分け合わなくていい。
30. 誰にも親兄弟を持つ権利がある。
31. 誰にも自由でいる権利がある。
32. 誰もが自身の自由に責任を持つべきである。
33. 誰にも泣く権利がある。
34. 誰にも誤解される権利がある。
35. 誰にも他人に罪を着せる権利はない。
36. 誰にも個人として生きる権利がある。
37. 誰にも権利を持たない権利がある。
38. 誰にも恐れないでいる権利がある。
39. 勝つな。
40. やり返すな。
41. でも降参するな。

いかがでしょうか。「ふざけすぎやろ!」と思いませんでしたか?私も最初はそう思いましたが、何度か読んでいくうちに、それだけではない感情を抱くようになりました。

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この憲法の中に頻繁に登場する言葉があります。それは「権利」です。権利とは「やってもいいし、やらなくてもいい」という自由を意味します。

ウジュピス内に充満する自由奔放な空気感はこの憲法によって守られています。世界でも珍しく「勤労の義務」が明示されている日本国憲法とはだいぶ違います。

では、ウジュピス憲法には「義務」は皆無なのかといえばそんなことはありません。

27条をみてください。「誰もが自分の名前を覚える義務がある」とあります。なぜ「自分の名前を覚える」ことだけは特筆すべきことなのか、疑問はありますが、ウジュピスにも義務があるのです。

しかし、14条をみてください。「誰にも時には義務に無自覚でいていい権利がある」と書いてあり、唯一の義務さえも権利で上書きしています。

ユーモアをたっぷりに含みながら、人として自由を満喫していいんだという強いメッセージが込められているように私は感じています。

ジョン・レノンとの出会い

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リトアニアを旅していたとき、ウジュピス地区をたまたま訪問しました。未承認国家のことや歴史など何も知らずに。そこで、ジョン・レノン風のギターをもった男性に声をかけられました。

彼は私の前で立ったまま、ビートルズの『Let It Be』の弾き語りを急に始めました。チップ目的なんだろうなと思いつつ、歌を聴いてみると、めちゃくちゃに上手い!聴き入ってしまいました…。

歌が終わって我に返りチップを払おうとすると、首を横に振って「チップなんて要らない」と合図されました。

そして、「I hope some day you’ll join us(いつか私たちの仲間になってくれることを願っています)」と言って去っていったのです。

そのときは言葉の意味があまり理解できませんでしたが、「自由」を体現している彼の生きざまに感動したのを覚えています。(後日、”I hope some day you’ll join us”はジョン・レノンの『Imagine』の歌詞だったんだと気づきました。)

3拠点目をデンマークに決めた理由はウジュピス

photo by Yuma Nagasaki
インタビュー記事「100カ国訪問した旅人がデンマークを選んだ理由」にもあるように、現在、トリプルライフ(世界3拠点生活)をしており、フィジーと日本に次ぐ3拠点目はデンマークです。

デンマークは国連の幸福度ランキングで3年連続2位です。「なぜ1位のフィンランドを選ばなかったんですか?」とよく質問されます。

その答えは、ウジュピスでの経験にあります。

ウジュピスで感じた「果てしなく自由な空気感」が忘れられず、それに似た場所はないかと探していたときに、デンマークの首都コペンハーゲン内に「クリスチャニア」というフリータウンがあると知り、それが決め手になりました。

キッカケは常に変なこと

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人生のターニングポイントになるようなことは、だいたいが「変なこと」。ノーマルなことは違和感を感じないのでキッカケになりにくいのです。

みなさんも人生を振り返ってみれば、人生の分岐点に変なことが起きているのではないでしょうか。未承認国家のような場所はまさに「変なこと」が起きやすいところです。

旅では、自分の中に構築された常識を崩してくれる場所に行ってみることをオススメします。

参考までに、ウジュピスの独立記念日は4月1日、エイプリルフールです。ユーモアを大切にしていますね。普段はウジュピスに入国する際にパスポートは必要ありません。

ただ、4月1日だけはパスポートが必要なのでお忘れなく。

ライター
永崎 裕麻 生きる旅幸家

「旅・教育・自由・幸せ」を人生のキーワードとして生きる旅幸家。 2年2カ月間の世界一周後、世界幸福度ランキング1位(2014/2016/2017)のフィジー共和国へ07年から移住し、現在13年目。 100カ国を旅し、14カ国で留学した経験を活かし、内閣府事業に参画、教育企画の立案、ライターとして「ハフィントンポスト(日本版)」「日経doors」などで執筆、「幸せに気づくコーチング」、「40歳定年」などの活動中。 二児の父。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」(いろは出版)。

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