ライター
岡本 大樹 撮って書くひと

2015年、小笠原諸島で連続ブリーチングを繰り広げるザトウクジラの雄大さに感動。その勢いで旅を仕事にすることを決める。それまでは原付で47都道府県を旅したり、ドイツ留学中にドイツほぼ一周電車旅をしてみたり。仕事では、サイパンの海に潜ってみたり、ベルギーでチョコレート作り体験をしてみたり。現在は人の旅立ちを後押しできるような写真を撮って記事にするべく、奮闘の日々。

旅をしていると自然風景を撮る機会が毎日のように訪れますが、滝の写真を撮ったことはありますか?

滝は、カメラの設定次第で写り方が大きく変わる被写体です。今回はシャッタースピードによる滝の写り方の違いをご紹介します。

また、今回ご紹介する撮影方法を試すのにおすすめの滝を3つ厳選しました。滝は基本的に大自然の中にあるため、ソーシャルディスタンスを意識すべき昨今の旅のスタイルにも適したスポットといえます。

滝の撮影をメインに、自然も撮影も楽しめる旅を計画してみてはいかがでしょうか。

撮り方によって姿を変える「水」という被写体


滝をはじめ、海や川など水の撮影はかなり奥深く、撮り方によって大きな違いが結果として写真に現れます。違いがハッキリと目に見えるので、さまざまに試行錯誤するのが楽しい被写体とも言えるでしょう。

特にシャッタースピードの設定による違いは、大きく写真の出来に関わってくる要素。高速と低速、2種類のシャッタースピードを使い分けるだけでもかなり撮影の幅が広がります。


同じ滝でも撮り方によって印象はかなり変わってくるので、滝を訪れたらぜひ両方を試してみてください。まずは低速シャッターでの撮影についてご紹介します。

流れゆく水の軌跡を写すならスローシャッター


滝を印象的に撮る場合に活用したいのが、低速(スロー)シャッターという撮影方法です。

スローシャッターってなんだ!?という方は別記事「移りゆく時間を一枚に。幻想的な“スローシャッター”の世界を撮影するコツ」でご紹介しているので、ご参照ください。

スローシャッターだと水の流れを一枚の写真に表現でき、少し幻想的な雰囲気に滝を撮ることができます。


たとえば、こちらの写真はシャッタースピードを「1秒」に設定して撮っています。シャッターを開いている間に流れた水の動きが反映されるため、このような一枚になります。

目に見えている景色と同じではないかもしれませんが、滝の清らかな流れを表現するのに適した撮影法なので、うまく活用しましょう。


低速シャッターを使う際の注意点としては、場所によっては明るくなりすぎて全体が真っ白の写真になる可能性があること。直接太陽が当たっている場所では使えないことが多いので、日陰になっている場所や暗くなっているところを狙うようにしましょう。


また、シャッターが開いている時間が長ければ長いほどブレる可能性が高くなります。三脚を使うなど、カメラをしっかり固定した上で試してみてくださいね。

飛沫の迫力を捉える高速シャッター

続いて、低速シャッターの真逆となる高速シャッターで滝を撮るとどうなるかわかるでしょうか。早速写真を見てみましょう。


こちらはシャッタースピードを「1/2000秒」にして撮った一枚です。とても短い瞬間を切り取っているので、水が完全に止まったところを捉えています。

その結果、水の粒一つひとつが飛沫として映り、ドラマチックで迫力ある一枚に。滝という同じ被写体でも、撮り方を少し変えるだけでこれほどの違いが出てくるのです。

滝の水量や流れの速さによっても映り方は異なってきますが、いろいろなシャッタースピードで撮るのをおすすめしている理由がここにあります。


高速シャッターの場合はブレを心配する必要はありませんが、先ほどとは逆に写真が暗くなってしまうことがあります。撮っては画面を確認して、を繰り返しながら、撮影を進めるようにしましょう。


この撮影方法を利用する際のちょっとしたコツをお伝えしておくと、滝に近づくかズームして水を大きめに撮ること。

引きの広い写真では、せっかく高速シャッターで滝を撮影しても、迫力の伝わる絵にするのは難しいことが多いのです。

実際に撮りに行こう!撮影に適した滝、厳選3ヶ所

さて、最後にここまでの撮影方法を実際に試せる滝をご紹介します。周辺の環境などを考慮し、3つの滝を厳選しました。

鍋ヶ滝(熊本)


まず、熊本の阿蘇郡にある「鍋ヶ滝(なべがたき)」です。ここはお茶のテレビCMロケ地として使われたこともある、滝自体にとても魅力があるスポット。

横幅がある滝なので、スローシャッターで撮ると、まるで大きな水のカーテンのような様子を撮ることができます。


鍋ヶ滝は裏手に回ることができる数少ない滝でもあり、まるで水に包まれているような変わった景色も味わえます。こちらからも撮ってみましょう。

一般的に滝は見られる角度が決まっていることも多いのですが、ここでは斜めからや正面など、さまざまな角度からシャッターチャンスを狙えるのも特徴で、おすすめする理由の一つでもあります。

スローシャッターで撮った場合でも、角度を変えて撮るとそれだけで滝写真の印象は変わってくることが多いので、歩き回りながら自分のベストスポットを探しましょう。

元滝伏流水(秋田)


次にご紹介するのは秋田県のにかほ市にある「元滝伏流水(もとたきふくりゅうすい)」です。

高さは約5mとそれほどありませんが、水がいくつもの筋に分かれて岩場を流れてきている様子がとても印象的なスポット。


その滝の流れも美しいのですが、さらに周辺は苔生しているところが多くあり、写真映えも間違いないスポットです。滝の白さと苔の緑とのコンビネーションを楽しみましょう。

真名井の滝(宮崎)

最後は宮崎県の高千穂にある真名井(まない)の滝です。神話の里と言われる高千穂は神聖な雰囲気がそこここで感じられる土地ですが、ここもそのうちの一つ。

滝が流れている壁面をはじめ、この周辺は柱状節理(ちゅうじょうせつり)という奇岩を楽しめるスポットでもあります。真名井の滝と一緒に撮れば、高千穂らしい一枚になりますよ。

ここでは展望台から、橋から、そしてボートに乗って水面付近から滝を撮る方法がありますが、ボートに乗っている状態だとスローシャッターはブレる可能性が非常に高いのでご注意ください。

滝を撮ることで写真の知識が深まる?

シャッタースピードという言葉は、一眼レフなど本格的にカメラのことを学ぼうとする際、最初の方で確実に出てきます。そこでつまずき、よくわからないまま苦手意識を持っているという方も多いかもしれません。

ですが、今回ご紹介したように、滝は特にシャッタースピードを意識して撮ってみてほしい被写体です。最初は理論がいまいち理解できていなくても、結果がすぐ見えるので、知識を深めるにも適しているのではないでしょうか。


今回ご紹介したのは、豊かな自然に抱かれていながらも、駐車場から10〜20分くらいでたどり着く場所ばかり。また、緑や岩などに囲まれていてスローシャッターを試しやすいという点を考慮して選んでいます。

撮影となると三脚などの機材が増えるのは仕方がないことですが、重い荷物を持って険しい山道などを歩くのは初心者には大変危険です。

まずは今回ご紹介した3つの滝のような、初心者でも安心して訪問できるスポットで撮影の練習をしてみてくださいね。


滝写真と密接な関係のあるカメラのシャッタースピード。さまざまな設定で撮ることによって、撮影の幅が広がることは間違いありません。

さらに、滝はそれほど人が密集する場面はほぼありません。広い自然の中であれば、それほど人との距離を過剰に気にすることなく存分に景色を楽しむことができるはず。

ぜひ、滝や緑などの自然を満喫するのに加えて、シャッタースピードを意識した撮影を楽しんでみてください。

All photos by Daiki Okamoto

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2015年、小笠原諸島で連続ブリーチングを繰り広げるザトウクジラの雄大さに感動。その勢いで旅を仕事にすることを決める。それまでは原付で47都道府県を旅したり、ドイツ留学中にドイツほぼ一周電車旅をしてみたり。仕事では、サイパンの海に潜ってみたり、ベルギーでチョコレート作り体験をしてみたり。現在は人の旅立ちを後押しできるような写真を撮って記事にするべく、奮闘の日々。

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