ライター
小林邦宏 旅するビジネスマン

月に1回世界一周する“旅するビジネスマン”。1977年東京都出身。大手総合商社を経て、2005年に株式会社グリーンパックス設立。これまでに訪問した国は100カ国以上。現在も、50か国程度と取引をしている。大企業が手掛けないようなニッチなビジネスを得意とし、眠っているビジネスの種を探して日々世界を飛び回る。世界の花屋チーフバイヤーとしてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』・NHK「あさイチ」など、テレビ・ラジオ出演多数。 著書『なぜ僕はケニアのバラを輸入したのか』(幻冬舎)

こんにちは。小林邦宏です。私の自己紹介は「毎月1回世界一周をしながら働く、フリーランス商社マンの生き方とは!?」からご覧ください。

さて、今回から2回に分けて、ネイティブフラワーのふるさと、南アフリカ共和国を取り上げたいと思います。舞台はウエスタンケープ州。ここは僕も大好きな場所です。


ケープタウンの港の様子

ケープタウンは美しい景色を楽しめる

たまに、「小林さん、海外でここなら住んでもいいと思う場所どこですか?」と聞かれることがあるのですが、あえて言えばケープタウンになるのかなぁ。

中心地ケープタウンは世界的な観光地としても知られますが、偉大な自然と美しい街並みに魅了される人はたくさんいるはずです。


夕暮れ時はエモーショナルなムードに

ケープタウン中心部から南へ1時間ほど行ったところにある、喜望峰(Cape of Good Hope)もおすすめです。ここは、大西洋とインド洋が出会うスポットです。

喜望峰の展望台から大西洋とインド洋を眺めていると、ノルウェーの北極圏からはじまって、アイルランド、モロッコ、セネガル、ガーナ…などの大西洋の国々が頭に浮かびます。

そして、インド洋もしかり。マレーシアやインドネシアからはじまって、インド洋の国が続いていることに思いを馳せてしまう場所です。

たくさんの国を訪ねた旅人ならば、ここで感傷に浸らないはずはないと思います。様々な国々と、そこで出会った人々の笑顔や言葉、一緒に過ごした思い出などが走馬灯のように頭に流れてきて…。

そんな旅のアレコレが、海の向こうに見えるような気持ちになる特別な場所です。

鮮やかなプロテア・ヴィーナスと繊細なセルリア

さて、本題に入りましょう。ちょっと学術的なことから入りますが、世界には6つの植物相(Plant Kingdom)があり、すべての植物はいずれかの植物相に起源が属します。

そんな植物相の中で最も面積が狭く、それにも関わらず、最もたくさんの種類が起源に置いているのが「Capensis」と呼ばれるこのウエスタンケープ地区なのです。

このエリアには、ネイティブフラワーと呼ばれるユニークな草花がたくさん育っており、ここ数年、日本だけでなく世界中で大人気となっています。ご存知でしたか?

代表格が、南アフリカ共和国の国花でもある、「キングプロテア(Protea Cynaroides)」です。花言葉は、「王者の風格」と。まるで、王冠のように花弁が開き咲く様は世界中の人々を魅了しています。

実は南アフリカで切り花として商用で栽培されているプロテアは、キングプロテアをはじめなんと50種類以上もあるのです!

プロテアは、夏は暑くて乾燥した気候、そして冬はマイルドで湿気のある気候を好み、これが南アフリカの、ここウエスタンケープの環境にばっちりハマるのです。

インド洋からは温暖な風が、大西洋からは冷涼な風が吹き、さらに、粘土質の土壌もあれば砂漠性の土壌もある。

地図上では決して広くはないこのウエスタンケープにはそれぞれのプロテアが好むMicro Climate(微気候)がたくさん存在しています。結果、それだけたくさんの種類のプロテアが栽培されているわけです。

そんな”プロテア業界”の優等生が、「プロテア・ヴィーナス(Protea Venus)」。

美しく大型の赤色のプロテアで、かつ長持ちすることが特徴です。環境さえよければ、20日間以上もつことも! 作り手の一人がブライアン・ミシェルさん(Bryan Michell)。

昨年、NHKの番組にも登場しましたので、ご覧になられた方もいるかもしれません。実は、このヴィーナスという品種は30年ほど前にブライアンさんの母パメラさんが開発したものなのです。

そう、ローマ神話における愛と美の女神ですね。このプロテアを通じてパメラさんはご主人との愛を誓い、ヴィーナスと名付けたのだとか。


NHKの取材を受けるブライアンさん

残念ながらパメラさんは数年前に他界されたのですが、今でもプロテア・ヴィーナスを通じて母の愛を世界中に届けるのが使命だとブライアンさんは語っています。

私たち「世界の花屋」の販売するプロテアの中でも安定した人気を誇る品種ですが、実際、現地でブライアンさんの思いを伺うたびに、日本の皆さんに伝えていくのが私たちの責務だと感じます。私たちのウェブサイトでも定期的に販売していますので、よかったらチェックしてみてくださいね!

今回はもう一種類。「セルリア(Serruria)」にも触れましょう。

別名を「Blushing Bride(ブラッシングブライド=頬を染めた花嫁)」といい、世界中のブライダルブーケで大人気のお花です。

花のシーズンは現地の秋-冬(南半球なので6-10月頃)ですので、この記事がアップされた8月下旬はちょうど中終盤といったところでしょうか。

そんなセルリア、ウエスタンケープで、いや、世界中でNo.1の作り手と評されるのがヘンドリック・ピストリウスさん(Hendrik Pistorius)です。

セルリアは見た目の通り、本当に繊細なお花なんです。南アフリカならどこでも栽培できるというものではなく、気候がばっちり合ったときに美しい花を咲かせるのですが、まさに南アフリカで… いや、世界中で最も適切な環境がヘンドリックさんの農園の位置するピケットバーグ(Piketberg)の町。

ケープタウンから北へ1時間ほどの場所です。初めて現地を訪ねたときから、僕はあまりの素晴らしさに惚れこんでしまいました。


農園で働くみなさん

日差し、温度、土壌と文句のつけようがなく、これにヘンドリックさんの”魔法レベルの管理”が入った結果、お花が長旅を経て日本に着いてみると一目瞭然な違いを生み出します。物持ちが全然違うのです。

ヘンドリックさんも、昨年NHKの番組に登場いただいたこともあり、今では日本の花市場でもその名を知られる存在です。


NHKの取材を受けるヘンドリックさん

ヘンドリックさんはちょっと、いや相当頑固なところがあるのですが(笑)、幸い僕とはウマが合うようで、「世界の花屋」の活動にも当初から応援いただいいており、良い状態のセルリアを優先的に送ってもらっています。

天・地・人が組み合わさって生まれた素晴らしいセルリアは、残り僅かで今年のシーズンが終わってしまいますが、ぜひ手に取ってみてもらえると嬉しいです。

まだまだご紹介したい草花がたくさんあるのですが、次回としましょう。

ダウンタウンのベストカフェを要チェック

今回は最後に僕のおすすめカフェを紹介します。それが、ケープタウンのダウンタウンに位置する「Truth Coffee Roasting」。

日本ではあまり知られていませんが、世界的には有名なカフェで、欧米のメディアでも、“世界のベストカフェの1つ”としてよく取り上げられています。

世界中のコーヒー豆を最適な状態で焙煎する「TRUTH BREND」は本当に素晴らしく、僕もお土産で買って帰ったりしますが、お店の雰囲気も素晴らしい。

コーヒーはもちろん、歴史を感じる店内の雰囲気、そしてホスピタリティ豊かな店員さん。どれを取っても最高です。モーニングや午後のリラックスタイムに機会があれば、ぜひ立ち寄ってみてください。

では、今回はこの辺りで。次回は南アフリカ編パート2をお送りしたいと思います。お楽しみに!

All photos by Kunihiro Kobayashi

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月に1回世界一周する“旅するビジネスマン”。1977年東京都出身。大手総合商社を経て、2005年に株式会社グリーンパックス設立。これまでに訪問した国は100カ国以上。現在も、50か国程度と取引をしている。大企業が手掛けないようなニッチなビジネスを得意とし、眠っているビジネスの種を探して日々世界を飛び回る。世界の花屋チーフバイヤーとしてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』・NHK「あさイチ」など、テレビ・ラジオ出演多数。 著書『なぜ僕はケニアのバラを輸入したのか』(幻冬舎)

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