いきなりですが、妖怪って信じますか?現代社会にも存在していると思いますか?実は、私(@XxPeach)は全く、一ミリも信じていませんでした、今の今まで。
今回、香川県小豆島にある「妖怪美術館」に観光客が殺到していると聞いて取材に行ってみたら、驚くほど妖怪のイメージが変わったんです。妖怪って怖いだけじゃないんですね。なんなら「仕事って大変だな、世の中上手くいかないな」と思っていたことが全部吹っ飛ぶほど、妖怪にメンタルケアをしてもらって東京に戻ってきました。
「そんなことあるわけないでしょ」と思う人にこそ訪れてほしい、仕事で悩むすべての方へ、妖怪美術館をご紹介します。
妖怪美術館ってどんなところ?
妖怪美術館は香川県小豆島にある、世界中から集めた100点以上の妖怪を展示している美術館です。実は、日本と妖怪には非常に深いつながりがあり、かなり古くからさまざまな方法で、妖怪の存在が伝えられてきました。
妖怪といえば「ゲゲゲの鬼太郎」や「河童(カッパ)」などが有名ですよね。日本では昔から、妖怪は自然災害などをはじめとした、人の力ではどうすることもできない「天変地異」の理由づけとして「妖怪のしわざ」だと認識されていたそうです。
「神様にも喜怒哀楽があって、その感情が妖怪となって現れたのだ」と妖怪美術館は説明しています。
妖怪美術館の一番ユニークなところは、これまで私たちが知っていたり、聞いたことのある妖怪よりも、現代社会の問題を背景に生まれ続けている妖怪が多く展示されているところです。それらをプロデュースしているのが、妖怪美術館館長で妖怪画家の柳生忠平さんです(後ほど紹介)。
作品はすべてオリジナルですが、初めて見たのに「あ〜わかるわかる!」と思わずつぶやいてしまう作品ばかりが展示されています。妖怪はちょっと怖いイメージがありますが、一号館から最後の五号間までゆっくりじっくり回ったら、妖怪のイメージが一変するはず。
妖怪美術館は五ヶ所で一つの美術館
妖怪美術館は全部で五ヶ所。順番に回っていくことで妖怪美術館を深く知ることができるように設計されています。もちろん、自分の好きなところから回っても、十分満足できる充実感です。
一号館は妖怪の起源を知る
一号館では、妖怪とはなんなのか、なぜ妖怪は生まれるようになったのかなどを教えてくれる導入部分。
先ほど少し紹介した妖怪文化をはじめ、なぜ日本古来から続いているのか、どのように人間と共存して生きているのかなど、妖怪美術館を見て回る上で大切なことを知ることができます。
一号館にいる妖怪たちは、みなさんもよく知る妖怪たちばかり。呑んだくれになってしまう日本酒に取り付いた妖怪「とっくり」やカッパなど、「これ知ってる!」と懐かしさを感じられる妖怪に出会えます。
二号館は人間の欲を表した妖怪
二号館は実際にすぐそばで妖怪を体験できる場所となっています。一番の目玉はこの紫色の妖怪。
最近造り出された「人間の欲望が集まって巨大化した」妖怪です。中にはその名の通り、たくさんの人の顔がびっしり。
カメラを回しているわたしもドキッとしてしまいました。人間の欲望が膨らめば膨らむほどそれを取り込んで、もっともっと大きくなるそう。
取り込んだはずの「人間の欲望」が、もう体にも出てきてしまっています。
もうひとつ、たくさん飾られていてぎょっとしたのが、日本人形。昔から人形には魂が込められていると言われていましたが、ここの日本人形も取り憑かれてしまっているようです。
これなんて、顔が「手まり化」しちゃっています。
またきてねと言わんばかりに上から見下ろされてるの、普通に怖い……。
あれ、妖怪美術館、怖くないよって聞いてたんだけどなあ……。
三号館
三号館には現代が作り出した妖怪がたくさん並んでいます。妖怪って昔から言い伝えられているものだから、今風にアップデートされてないのかなと勝手に思っていましたが、全然違うんですね。
現代人の悩みや想いなどがそのままダイレクトに反映されている妖怪ばかりで「これ見たことある!」と思わず写真を撮ってしまいたくなる妖怪ばかり。
たとえば、こちらは「ハッコウポッポ」。寂しがりやで夜になると発光し、仲間を確認して安心するそうです。SNS世代の私たちを反映したような妖怪ですね。それにしても、小さくてカワイイから妖怪じゃないみたい!
この妖怪の名前は「毛むくじゃらのイイヤツ」。一瞬「え、怖」と思ってしまったんですが、説明を良く見ると「人のどうすることもできない負の感情を主食としている」と書かれており「悲しい思いや怒りを鎮めてくれる」という、妖怪の中でもトップレベルのイイヤツ。
これのちっちゃい人形を、玄関に置物として飾りたいな……。
こちらは少し考えさせられる「妖怪 除仙」。原発事故で避難区域となった家のヤモリが放射能で妖怪になったそう。今でもエサである放射性物質を食べながら、人間の帰りを待っているという、なんとも悲しい妖怪です。
このような現代社会の悩み・闇・問題に関する妖怪たちが、妖怪美術館三号館に集まっています。
四号館
四号館は雰囲気がガラッと変わり、本物のお化け屋敷のような場所。こんな怖そうな廊下を歩いていくのですが、ここまで見て回っていると「普段意識してないだけで妖怪って近くにいるもんなんだな」と、思いはじめ「妖怪がいます」と言われてもビビらなくなる……のは嘘です。
なんで?なんで穴が開いてるの?と思わず聞きたくなる障子は、元から穴が開いていたそう。物件がぴったりすぎませんか……?さらに、館長からの「真っ暗闇の中で寝てください」という罰ゲームみたいな依頼には、さすがにいつ「これから幽霊が体の中に入って来ます」と言われるかドキドキしてしまいました。
「何も考えなくていいので、そのまま寝っ転がっててください」という、特別なミッションを与えられたので、そのまま黙って上を見上げていたら……。
だんだん見えてきました。暗いところにいると、目がだんだん順応していくことを利用し作られたそう。ここは、過去の過ちや出来事を真っ暗闇の和室に寝転んで天井の妖怪「カンシシャ」に見つけてもらい、吸い取ってもらう部屋。
外に出たらかなりスッキリした気分になったので、だいぶ吸い取ってもらいました。
この部屋を出たあとは、ちょっとだけ生きやすい世界が待っているはず。
さらに、イヤなことを忘れたい人、自分の嫌いなところを取ってもらいたい人は、専用の絵馬に消し去りたいことを書いて、四号館を出た先にある「新・妖怪製造装置 チョーケシ」に新しい妖怪を作ってもらえるように頼みましょう。
絵馬は「チョーケシ」の向かいにある「島モノ家」で購入することができます。
そして、自分だけの悩みを妖怪のせいにしちゃいましょう。作った絵馬はこんな風に飾ります。もうこんなにたくさんの妖怪が生まれていますよ。
五号館
五号館では、台湾の美術を学ぶ学生たちが部屋中に描き上げた妖怪を楽しめます。
これまで見てきた日本生まれの妖怪ではないので、ちょっと絵のタッチや雰囲気が違うのもいいですね。
この五号館では専用アプリをダウンロードして、部屋じゅうにある小さな妖怪のイラストにカメラを向けると、妖怪たちが声を出したり動いたりします。これは、人気アプリ「ポケモンGO」などで使用されている拡張現実「AR」を使ったもの。
このアプリに出てくる妖怪はこんな風に3Dプリンターで作られ、実際に展示されています。