ライター
松谷 一慶 3年間の旅から帰国

京都大学で薬学を専攻し、大学院卒業後は外資製薬会社で癌領域の新薬開発に従事する。その後、2013年より3年間の世界一周に出発。スペイン巡礼、ブラジルでのW杯やバーニングマンの参戦、ロスで購入したバイクでの中米縦断などの経験を経て帰国。訪問国数は100か国以上。帰国後は、株式会社シンクロにジョインし、幅広くデジタルマーケティング支援に関わる。2020年、InTripに取締役CMOとして参画。

旅をする理由にはいろいろあると思うけれど、僕にとってのそれはロマンだった。

見たことのない世界へバックパックひとつで飛び込む。そこには綺麗な景色があって、新しい出会いがあって、トラブルがあって、その中を全力で旅をして最後にたどり着いたゴールで一言「人生を賭けるに値するのは、夢だけだと思いませんか?(勝鹿北星・浦沢直樹『MASTERキートン』第2巻)」

 

なんて、漫画からの引用じゃなくてできれば自分の言葉で格好をつけたいけれど、なにはともあれ、そんな着地点を期待して3年間の世界一周の旅に出たのは28歳のとき。

松谷 一慶
キリマンジャロ登頂、ブラジルW杯現地観戦、バーニングマン参戦、中米縦断バイク旅、アメリカ横断などを経験した3年間の旅から先日帰国。自然と音楽とお酒と言葉とバンジージャンプとキリンとぶり大根が好き。

アジア、ヨーロッパ、アフリカと西回りと言われるルートで周っていたため、南米大陸にたどり着いたときには、日本を出発して1年が経っていた。

ペルーのマチュピチュ、ボリビアのウユニ塩湖などが有名なこの大陸は、いまや卒業旅行の定番の目的地ともなっている。

治安がいいわけではないので注意は必要なものの、長距離バス網が広がっていることもあり、かなり旅はしやすい。加えて、物価の安さや、陽気な国民性も手伝って、旅先として楽しくないわけがないのだから、世界一周のハイライトとしてあげる旅人が多いのも頷ける。

 

僕自身もチェ・ゲバラがかつて南米大陸をバイクで旅した映画『モーターサイクルダイアリーズ』を観たときから、絶対に行きたい場所としてずっと楽しみにしていた。

そんな南米大陸の中でも特に印象深いのがパタゴニア地方だ。パタゴニア地方は、南米大陸の南部を流れるコロラド川以南の地域の総称で、アルゼンチンとチリの両国にまたがる。ウユニ・マチュピチュに比べると知名度は劣るが、ロマンという観点ではこちらに軍配が上がると僕は思う。

 

フライトにつていは、パタゴニアのチリ側のゲートウエイとなるプンタアレナスには年間を通してフライトがあり、ラタム航空のメインベースであるサンチャゴから約3時間半で便利にアクセスできる。

パイネ国立公園の最寄空港となるプエルトナタレスには、サンチャゴから3時間10分の直行便を運航している(11月~3月のオンシーズン限定)。また、アルゼンチン側のポピュラーなゲートウエイはエルカラファテ。ブエノスアイレスから3時間20分のフライトでアクセスができる。

 

フィッツロイ

「パタゴニア地方」と聞いてファッションブランド「patagnia」が思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。その「patagnia」のロゴマークのモチーフとなった山があるのが、ここフィッツロイだ。

フィッツロイへは、エルチャルテンという小さな町から向かう。パン屋や雑貨屋がたくさんあるこの町は雰囲気がとてもよく、優しい時間が流れているのでトレッキング前日に体を休めるにはぴったりの場所になる。

朝日に色づくフィッツロイを見るために夜のうちに出発する。懐中電灯の光を頼りに、トレッキングを開始。少し歩くと頭上に広がる満点の星空に気がつく。リュックの中では出発前に作ったおにぎりと卵焼きが入っていて、その温もりを背中で感じながら歩く。

次第に空が明るくなり、同時に視界がぐっと広くなる。遠くにフィッツロイらしき山影が見える。暗闇から浮かび上がったフィッツロイが徐々に色づく。この時間帯からのグラデーションは必見。黄金に輝き、赤く燃え、日が昇りきると悠然とした白い岩肌が、旅人を迎える。

その感動を表現する言葉を見つけることができず、無言の呼吸が白く消える。ここで食べたおにぎりの美味しさは今も忘れられない。

 

ロス・グラシアレス国立公園

旅にアルコールはつきものだ。世界各地のいろんな場所でいろんなお酒を飲んだけれど、一番印象に残っているお酒はと聞かれれば、ここロス・グラシアレス国立公園で飲んだウイスキーになると思う。

氷河の上を歩くトレッキングツアーがある、と聞いたのはアルゼンチンの日本人宿だった。ちょうどパタゴニアから南米大陸を北上してきた旅人が絶対に行ったほうがいいというものだから、そのあまりの熱気にその場でツアーを申し込んだ。

参加したのはペリト・モレノ氷河のトレッキング。到着してまず氷河の大きさと美しさに驚いた。250㎢もの広さというのだから圧巻だ。そのスケールに目を奪われていると「ゴゴゴゴゴゴゴ」と轟音が響く、氷河の崩落。ちょうどアルゼンチンの夏にあたる2月だったので、運良くこのような崩落が見ることができた。

アイゼンと呼ばれる靴に装着する滑り止めのようなものをつけて、いざ氷上へ。この国立公園の氷河は青い。降り続く雪によって圧縮された氷河が青以外の光を全て吸収するから、というその理由すらどうでもよくなるくらいの輝き。美しくて大きな氷河の上を歩く、夢のような時間だった。

ツアーの最後には氷河の氷で作ったウイスキーのロックがふるまわれる。トレッキング後のお酒、そこに浮いているのは氷河。どんな高級店でも飲むことができない一杯。氷河を眺めながらの一口。香りが広がり、喉が熱くなる。この一杯のためにここまで来たのかもしれないと錯覚するには十分すぎるシチュエーションだった。

 

トレス・デル・パイネ国立公園

何かのことが好きだなと気がつく瞬間があるが、トレッキングが好きだと気付いたのは、トレス・デル・パイネ国立公園だった。

お手軽な日帰りコースから冒険欲をかきたてられる1週間以上のトレッキングコースまで、さまざまなルートがあるのがパイネの魅力だ。最寄りの町であるプエルトナタレスで、キャンプ道具一式がレンタル可能なので、特にトレッキンググッズがなくても問題ない。

テントと寝袋は持っていたので、調理器具やバーナーなどをレンタルして、食材を買い込み、3泊4日のWコースにチャレンジした。

Wコースは、多少アップダウンはあるものの、初心者でも問題なく歩けるコース。テントや食材全てを背負って歩くのは大変だけれど、日数の経過とともにリュックが軽くなっていくことに寂しさを感じるくらいには、トレッキングの虜になっていた。

突然の土砂降りの後に見える虹も、月明かりの下で試行錯誤しながら作るシチューも、そこでしか味わえない瞬間で。そういう時間を積み重ねる喜びを、僕は見つけてしまったのだ。

ロサンゼルスに向かうフライトの中で南米大陸での8か月を振り返っていた。そこにはきれいな景色があった。陽気な人がいた。最高のお酒があった。素敵な出会いがあった。本当に来てよかった。

ロマンは旅のゴールにある、と思っていたが、どうやらそうでもなさそうだと気付いた。美しい途中はたくさんあったし、そのひとつひとつがロマンにあふれていた。

ぜひ、パタゴニア地方へ足を踏み入れてほしい。
行きたい気持ちがあるならば、行けばいいと僕は思う。
「人生を賭けるに値するのは、夢だけだと思いませんか?」

 

パタゴニア地方へのツアー会社をご紹介

パタゴニア地方への旅は、中南米最大のエアライングループ・ラタム航空を利用すれば便利。ラタム航空を使ったツアー会社はこちらの4社がお勧め。自分にあったプランを見つけてみてはいかがでしょう。


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株式会社かもめ
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ファイブスタークラブ
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旅工房
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松谷 一慶 3年間の旅から帰国

京都大学で薬学を専攻し、大学院卒業後は外資製薬会社で癌領域の新薬開発に従事する。その後、2013年より3年間の世界一周に出発。スペイン巡礼、ブラジルでのW杯やバーニングマンの参戦、ロスで購入したバイクでの中米縦断などの経験を経て帰国。訪問国数は100か国以上。帰国後は、株式会社シンクロにジョインし、幅広くデジタルマーケティング支援に関わる。2020年、InTripに取締役CMOとして参画。

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