最近、よく耳にする「SDGs(エスディージーズ)」という言葉。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、貧困や気候変動など、世界が抱えるあらゆる問題を解決し、持続可能な社会をつくるためのビジョンのことをいいます。
そんなゴールが世界各国で掲げられている今、私たちにできることは何なのか。「SDGs」について、TABIPPOは考えます。
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MONKEY MAJIKから学ぶ、「環境問題」に取り組む姿勢
MONKEY MAJIKのインタビューの後編のテーマは「教育」。彼らなりの教育論について語ってもらいました。(東北に生きるMONKEY MAJIKがワイン醸造・養蜂をするワケ【インタビュー前編】はこちら。)
(左から)タックス、メイナード、ブレイズ、ディック
「SDGs」の中で「教育」の項目は、誰もが平等に質の高い教育を受けられ、子どもも大人もいつでも学ぶことができる環境の実現をゴールとして掲げられています。
例えば、具体的な目標としては、「識字率」を高めること。読み書きができない大人が世界には約7億8100万人いると言われています。読み書きができないと、就職をするときに困ったり、正しい情報を読み取ることができなかったり、多くの問題が発生します。また、男女の違い、個々の経済力によって、教育が受けられる環境に格差が生じている現状も…。
教育を受けるということは、未来への希望につながります。そんな大きなテーマに対して、MONKEY MAJIK流の教育論を語ってもらいました。
ーーMONKEY MAJIKのみなさんが、数ある「SDGs」の目標の中で「教育」に関心を持っているのは意外でした。なぜ、関心を持たれているのですか。メイナードさんがアマチュア時代に英語の先生をしていたからでしょうか。
メイナード:確かに教師だったからという理由もありますが、それだけではないんです。ぼくは義務教育にかかわらず、教育はすべての根源にあるものだと思っていて。音楽でもなんでもそうなんですが、常に教育を受けながら、人間は育っていくものだと思うんですね。
ブレイズ:うん、確かにそうだね。
メイナード:今の日本の子供たちって、いろいろなことを選べる立場にあると思うし、すごく充実した環境だとは思っています。個人個人の長所や得意分野がどんどん研ぎ澄まされていって、みんな平等に成長する機会がある…。そういう教育を受けることができれば、国自体が幸せになるし、それはゆくゆく世界平和にも繋がっていくと思います。だから、勉強できる環境を整えていくことが、いまの日本の最重要課題だと感じていて、「教育」のテーマへ関心を持っています。
みんなが平等に学ぶことができれば、個々での格差がなくなり、お互いへのリスペクトがさらに生まれて、平和な世界になれると思う。…って、語り始めると長い話になって、朝を迎えてしまいそうだけど(笑)。教育はデモクラシーにもつながるほど、重要なことだと思うんですよね。
ブレイズ:そうだね。僕も、平和は個人個人の思いや活動から始まって、生まれるものなんだと思っています。だから、教育は大切。
その中でも僕がいま、日本の教育について考えていることは、休み時間の過ごし方。例えば、高校だったら、それぞれの学年同士で集まって遊ぶんでしょう? でも、そうじゃなくて僕は、学年の垣根を越えてみんなが一緒にハングアウトしなきゃいけないと思う。同じ学年同士だけじゃだめで、みんなミックスしたほうがいいと思うんです。
「educate(教育する)」、つまり能力や発想を引き出すことを考えるなら、そういう遊び時間も「教育」として考えたほうがいいと僕は思いますね。学校にいる時間の全てを「education」にしないと。学校って普通に過ごしているだけだと、つまらない。一日のすべてを教育活動として捉えないと、絶対にうまくいかないと思いますね。
ーーちなみに、ご自身の学生の時はどうだったのですか。
ブレイズ:みんなバラバラでしたよ。学年が離れていても一緒に遊んでいました。それがすごくよかったな。
ディック:日本でも、田舎だと当たり前なんですけどね。
ブレイズ:例えば、学年がバラバラのグループを作ってみたらどうかな。それも大切な教育的な体験になるだし、立派なコミュニケーションになると思う。ワールドピースですね!(笑)
ーー確かに日本の学校は、学年で区切ることが多くて、ある種の「同調圧力」が強いのかなと個人的には思います。ミックスさせるのはいいアイディアかもしれないですね。
ブレイズ:うん、いろいろミックスした方が面白いと思います。
メイナード:日本でも、人数が少ない学校だと、学年が離れた子どもとペアを組む「兄弟学級」みたいなシステムがあるよね。
ブレイズ:子どもながらに、ちゃんといいお兄さんにならなきゃいけない。そこも勉強ですね。
メイナード:大きな学校だと、先生の人件費など、いろいろなコストがかかる。本当だったら、小さな学校の中で、全校生徒が混ざりあって、そのコミュニティを感じるべき。それが理想的だと僕は思います。
ブレイズ:できれば、教室に2人以上の先生がいた方がいいですね。特に公立の学校は、税金で運営しているわけだし、先生をもっと大事にして、一つの教室に2人の先生を置く施策を考えてほしいくらいですね。
メイナード:日本は高齢化だから、もしかしたら最終的にそうなるかもね。
ブレイズ:正解はないけれど、要するに、僕らの伝えたかったことは、教育は人生の基礎をつくる大切なものだし、みんなでより良い教育について考えた方がいいと思うってことです。
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「教育はすべての根源にあるもの。常に教育を受けながら、人間って育っていくものだと思う」。そう語るMONKEY MAJIKのみなさん。
私たちは、世界での「教育」の課題を語るとき、例えば、発展途上国や紛争が起きている地域などにいる“学校に通えない子どもたち”についての問題として捉えたり、世界的な視野で「教育」の環境を整えることを考える人が多いですが、いま、私たちが暮らす豊かな日本でも、「教育のあり方」をもっと気軽に話し合っていいのだと気づきました。それは政治家や教員、子どものいる家庭だけに限らず、教育を受けて育ってきた誰もが、議論していくことが大切だと思います。
「もっとこんな教育ができたら世界が素敵になる」…そんな話し合いが活発にされたら、社会が豊かになり、「SDGs」での「教育」のゴールは達成できるのではないでしょうか。すべての根源にある教育だからこそ、きっと、みんなで考えるべきテーマなんだと思います。
MONKEY MAJIKは「正解はない」としながらも、「遊び時間も教育に含めたり、学年関係なくコミュニケーションできたりする環境が整えば、もっと素敵になるのでは?」と提案してくださいました。まずは、そういう小さな提案から、教育について話してみませんか。
All photo by Kazuna Hanada