ライター

北海道出身の27歳。これまでに日本の離島を150島近くを旅してきた島旅人で、島暮らしも今年で3年目。11月から1年ほど世界一周の旅へ出発。海や観光・宿泊関連の仕事をしながら、自身が経験した旅のひと時を発信中。海と雪山、ビールが大好き。

夏や秋に欠かさずやって来るもの、それは台風。自然災害であり多くの被害が出ることもあるが、自然界にとっては水の中を循環し生態系の維持には必要不可欠だ。

……とは言いつつもやはり旅においては、大きく予定を狂わされ、最悪旅自体を諦めざるを得ないこともある。ここ数年は島に訪れる人を受け入れる側の仕事をしているが、台風が近づくにつれて問い合わせも増えるので、以下のことは伝えるようにしている。

「次の予定が決まっているなら来ないほうがよい」
「島に来ても、帰れなくなるかもしれない」
「飛行機は運航しても、船はすぐには動かない」
「お店が臨時休業し、飲食の確保が難しくなる」
「綺麗な海とはほど遠く、すぐに泳げない」

沖縄から奄美群島、鹿児島を結ぶフェリーの上で
しかし長期の旅ともなると多少の融通は効いてくるため、台風が過ぎるまで島に缶詰め状態になることも許容できるし、旅程自体も変えられる。

当時は約3週間の日程で、沖縄本島から奄美群島を巡り鹿児島に上陸する島旅を始めた。

初日から台風の洗礼を受ける

台風は過ぎ去っていたため、旅は予定通り那覇に到着し翌日から与論島(よろんとう)へ向けて島旅がスタート!と思ったが、いきなりフェリーが欠航していた。そう、台風が過ぎ去ってもフェリーはすぐには動かないのだ。

台風は北上していくため、沖縄が台風明けでも北に位置する奄美群島や鹿児島あたりに台風がいるとフェリーが欠航する。それに加え台風が過ぎ去っても波風が落ち着くまで時間がかかる。

那覇は晴れているのに次に進めないもどかしさの中、ただ海が落ち着くまで待つしかないのだ。

オリオンビールの味比べ
1日1便のみ、朝にしかフェリーは出ないため、他の場所へ行くこともできず数日間。ドミトリーに滞在しながら日中から酒を飲み、夜は友人と飲みに行くという序盤からなんとも言えない日々。

「これも旅の醍醐味だよな」と自分に言い聞かせながらも、気がつくと与論島に滞在する期間はすでに過ぎ、フェリーが動く頃にはもう次の島に行かざるを得ない状況になっていた。

上陸せず後にする与論島

美しき自然に魅せられた沖永良部島と徳之島

サンゴが作り出す洞窟と絶景の沖永良部島

上陸できなかった与論島を後にしながら、向かったのは沖永良部島(おきのえらぶじま)。台風はとっくに過ぎていたので、一気に夏の雰囲気が高まっている。

島自体もそれなりの大きさながら、どこか素朴で落ち着きのある感じが心地よい。この島は隆起したサンゴ礁で形成されており、鍾乳洞が島内に多く存在している。そして日本では数少ないケイビング(洞窟探検)ができる島なのだ。

沖永良部島の美しい洞窟
夏にもかかわらず洞窟内は涼しい。ギリギリ通れるかどうかの隙間をすり抜けてビショビショになりながらたどり着いた先に広がる洞窟の景色はとても圧倒的だった。

整備された鍾乳洞を歩くのとはまたひとあじ違う、まるで自分が探検家になったかのごとく、スリルと興奮を味わえる。

海が荒れていても洞窟内は静かで、夏は涼しく冬は暖かい。

また、飛行機に乗る当日にスキューバダイビングをすると減圧症のリスクがあるためおすすめできないが、ケイビングは飛行機の時間を気にすることもなく楽しめるのがまたありがたい。

田皆岬から見下ろす海
高い場所から見下ろす海も、潜った時の海も美しい。台風明けで濁りが抜けた後の海は、いきいきとした魚やサンゴを見られる。

マスクとフィンを原付のカゴに載せ、潜れそうな場所を見つけては潜る。潜ってはまた移動の繰り返しで、時折道端で止まって眺める景色も素晴らしく、時計を見ずとも太陽と共に時間が過ぎていった。

台風があったことを忘れさせてくれるくらい、居心地のよい島。まだ残りたい気持ちを抑え次の島へ渡る。

迫力満点の自然を感じる徳之島

沖永良部島からフェリーで2時間弱、次に降りた島は徳之島(とくのしま)。2021年に世界自然遺産にも登録されており、広大な亜熱帯雨林や希少な動植物の生息地にもなっている。

そんな大自然を逃すのはもってのほかで、真夏の島を冒険しないわけがない。いや、するためにやってきたのだ。

1回潜って10匹近くは見たであろうウミガメ
見渡せば優雅に泳ぐウミガメたち、どこまでも見えそうな青く透き通った海。自分も海の一部になっているような、そんな気分がした。

次第にウミガメのいそうなポイントも分かってきて、「こんにちは〜、一緒に泳ぐ?」と言わんばかりにウミガメたちとも泳ぐ。

徳之島の秘境、ウトゥムジの滝
陸に戻っても冒険は続く。ロープがないと降りるのが難しい獣道を抜けた先には、崖から流れ落ちる壮大な滝を目にする。

汗と塩水まみれになった身体に滝の水飛沫が当たる瞬間は、もうシャワーがなくてもよいくらいの爽快感に浸ることができた。

自然が好き、そして島が好きだ。出だしは台風で足止めを喰らった今回の島旅も、それ以降は順調に進んでいた。

ライター

北海道出身の27歳。これまでに日本の離島を150島近くを旅してきた島旅人で、島暮らしも今年で3年目。11月から1年ほど世界一周の旅へ出発。海や観光・宿泊関連の仕事をしながら、自身が経験した旅のひと時を発信中。海と雪山、ビールが大好き。

RELATED

関連記事