ライター

ローカルな街並みや文化が大好きな、兵庫県出身の25歳。ベンチャー企業の法務担当として勤務する傍ら、休日は機会を見つけて地方を旅している。熱意の応援者として、ともに刺激を受け与える関係でありたい。最近は地域の魅力を伝えるツアーづくりに取り組む。秋のフルマラソンに向けても奮闘中。

今回の旅は、島の仕事を行う「ワーク」の時間、休日の「ホリデー」の時間で構成される。

「ワーク」の時間では観光施設の掃除や島のホテルのリネン交換といった「繁忙期の仕事」を、そして空き時間にワーホリのブログ発信を行った。仕事自体は大変ではあったものの、午前と午後で勤務地や仕事が異なっていたため、様々な場所に行くことでまた異なる地域の方とも交流することができ、地域への理解を深めることができた。また、休憩時間に受け入れ先の方とアイスを食べながら話す時間や、業後に島のことについて伺う時間など、どこかゆっくりと流れる「島の暮らし」の一端を経験できた。

一方、「ホリデー」の時間には海士町を自転車で旅した。

「承久の乱」によるご配流により、最後をここ、海士町で過ごした後鳥羽上皇をお祀りした「隠岐神社」や夕日が美しい「木路ヶ埼灯台」、ハート型の穴が開いた岩が印象的な明屋海岸などなど、海士町だけでも見どころはたくさん。

さらに別の日には内航船で足を延ばし、西ノ島、知夫里島へ。西ノ島の大絶壁「摩天崖」や景勝地「国賀海岸」を望む「赤尾スカイライン」、知夫里島の噴火活動の痕跡である「赤壁」や一度も枯れたことのないといわれる「河合の湧水」など、数日の「ホリデー」では回り切れないほど魅力あふれる島だったが、回れる限り回った。

牛が道路を塞ぐ、なんてことも
ただ、一番印象に残っているのは「まちの暮らし」だった。

通勤中のバスから見える美しい海、島の商店でのおばちゃんとの会話、シェアハウスのみんなでつくるご飯、夜にお酒を飲みながら語り合う時間。仕事終わりに同期と海沿いを歩いた帰り道。1泊2日の旅や、観光地を巡る旅では経験しがたい「暮らし」との接点。その時間が非常に心地よかった。

また、滞在中に1度、連れて行ってもらった「スナック」も印象に残っている。これまでの人生、「スナック」という言葉は聞いたことがあるが行ったことはなく、どこか遠いものと思っていた。

しかしながら、海士町では「1次会は居酒屋、2次会はスナック」という流れが定番(諸説あり)。人口2,300人の街になんとスナックが5軒もあるのだ。よくわからないまま中に入るとそこはお祭り状態。気づけば皆アフロのかつらを被り、誰かが歌うカラオケに合わせてマラカスを振っていた。「異文化に触れた」などと考える間もなく、ただただ楽しかった。

と、ここまで書いてきたが、じつはこうした「はじめましての方と楽しむ、仲良くなる」という経験はもともと苦手だった。

もともとかなりの人見知りな性格。1人旅をしたこともなければ、見知らぬ土地に飛び込んだこともなかった。強いて言えば、大学1年生の時にベトナム・カンボジアをめぐるスタディツアーに参加したくらいの経験値だ。それでも、初めて飛び込んだ「地域」に居心地の良さを感じられたのは、その地域がもつ空気や雰囲気であり、また受け止めてくださった人なのだと思う。

隠岐島前高校に「留学」してくる高校生も、当時、「メンター」として活動していた大学生も、もしかしたらそんな空気・雰囲気に惹かれていたのかもしれない。

歩きながら同期や島の方と他愛もない話をする、心地いい時間

おわりに

この経験を経て、僕は他の地域・地方にも興味を持つようになった。どんな人がいるのだろう。どんな世界が待っているのだろう。気づけばいろいろな地域へと足を運び、地域で過ごしてきた。そして社会人になった今、今度は実際に「地域へ足を運ぶきっかけ」となるツアーを作ろうとしている。

まちは「人」で成り立っている。地域を変えるのは「よそ者・若者・馬鹿者」と言われるが、「よそ者」ではなかったとしても、惹きつける人がいるまちには人が集まり、盛り上がりが生まれていくのだと思う。

その後、海士町には直接は訪問できていない。ただ、直近の海士町は当時よりもますます盛り上がりを見せているように見える。例えば、全国各地の若者たちが島に滞在しながら働く「大人の島留学・島体験」。過去2年間の間に、なんと200名程度の若手社会人や大学生の方が参画していているそうだ。また、デジタル名刺を活用した「海士町オフィシャルアンバサダー制度」の実施、海士町の未来に繋がる事業への投資を行う「未来共創基金」など、興味深い企画も盛りだくさんだ。

そんな街に少しでも関われたらと、毎年「ふるさと納税」は欠かさず行っているし、関東でイベントが行われる際は都合が合う限り参加している。「海士町」という地域は、自分の中での「原点」であり、常にわくわくする地域であり、これからもきっとそれは変わらないと思う。

名残惜しい帰りのフェリーの中から
ただ、そうはいっても実際に島に行きたい気持ちは抑えられない。職場の後輩にも偶然、「大人の島留学・島体験」の経験メンバーがいて、話を聞くとやはりワクワクしてくる。20代も残すところあと5年。転機となるタイミングが来るならば、一度、自分自身も「大人の島留学・島体験」に参加してみたい。きっと人生を少し豊かにしてくれるような、そんな体験ができると思うから。

All photos by Nakashin

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ローカルな街並みや文化が大好きな、兵庫県出身の25歳。ベンチャー企業の法務担当として勤務する傍ら、休日は機会を見つけて地方を旅している。熱意の応援者として、ともに刺激を受け与える関係でありたい。最近は地域の魅力を伝えるツアーづくりに取り組む。秋のフルマラソンに向けても奮闘中。

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