この記事では、TABIPPOがつくりあげた3冊目の旅の本、『女子が旅に出る理由』のコンテンツをTABIPPO.netをご覧の皆様にもご紹介したいと考え、本誌に掲載している一人旅体験記を厳選して連載しています。
今回の主人公は、青木沙織さん(当時25歳)です。
世界には、様々な理由やきっかけによってを一人旅を決意して、自分の心と体で世界を感じてきた女の子たちがいます。
手に入れたのは、どんなに高価なアクセサリーよりも魅力的な自分らしさ。
そんな女の子たちが、初めての一人旅のときに「なぜ旅に出て、どう変わっていったのか」。
すべての女性に読んでほしい、女の子一人旅ストーリーをまとめました。
\こちらの記事は、書籍化もされています/
今回の主人公は、アメリカへ一人旅をした青木沙織さん(当時25歳)です。
人生の夏休み終了の鐘が鳴り響いた
(最後の、人生の夏休みをどう過ごそう?)。
就活が終わったということは、夏休み終了のカウントダウンが始まったってことだ。
ということは、もう一生、演劇をやることはないんだな。
あれ、そう思うといろいろやりきってないな。わっ!留学もあんなに行きたかったのに行っていない!
(本当にこれでいいんだっけ?)
あれ、あれれれ。大学4年生の夏休み。
頭の中にゴーンゴーンと鳴り響くのは、人生の夏休み終了のお知らせの鐘。
大学生ならではの無限ループに、私はまんまとはまってしまいました。
まあでも卒業旅行はどこかに行きそうだし、お金だけは貯めておかなきゃ…。
それから「社会人スキル」とかもなさすぎて不安。
とりあえず、内定先の会社でバイトを開始。そこで私は人生初めての挫折を味わいます。
(えくせる? ぱわぽ?)。
もうなんにもできない!本当になんにも。失敗して、先輩に迷惑かけて。そんな毎日。
(ヘルプ! コンフューズ!)。
オフィスで泣いてしまうような、それはそれは使えない、迷惑な後輩でした。
(仕事大丈夫かな、私。てか、今の自分で社会の役に立つ?)。
また違う無限ループにはまり出す。不運は重なるもので、当時付き合っていた彼氏とも別れることに。
逃げるように買った、NY行き航空券
(あれ? 私が思い描いてた最後の夏休みと全然違う!)
(今、私が日本にいる意味1ミリもない!)。
何もかもなげやりになり、気づいたらすべてのことから逃げるようにNY行きの航空券を買っていたのでした。
私は、自立した人間になりたかったんだと思います。
家族にも、友達にも、 先輩にも、彼氏にも甘えている毎日を、どうしても変えたかっ た。
そんな時、ある言葉に出会いました。
人間を変える方法は 3 つしかない。
1番目は、時間配分を変える。
2番目は、住む場所を変える。
3番目は、つきあう人を変える。
この3つの要素でしか人間は変わらない。
そして最も無意味なのは、決意を新たにすることだ。
 (時間も場所も、つきあう人も一気に全部変えられるものって、一人旅しかないじゃん!)。
すごく安易で安っぽい発想ですが、そう思い立ち、私は初めて一人旅に出ることを決めました。
忘れられない、鳥肌の街へ
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なぜNYだったのか。
それは、高校1年生の頃、初めて家族とNYに来た時の衝動が忘れられなかったからです。
初めてブロードウェイを観た時のあの鳥肌は、一生忘れない。
憧れの街への初めての一人旅。
私はその1ヵ月間をゲストハウスに滞在することに決めました。
イエローキャブに乗って辿り着いたのは、とってもアーティスティックな建物。レンガで覆われた外観に白いドア。
中に入ると秘密基地みたいな部屋。
みんなでごはんをつくって食べることができるキッチンとリビングがありました。
ゲストハウスを行き来する人たちはバイヤー、ダンサー、メイクアップアーティスト、公認会計士、作家、画家…。
日本で暮らしていたら出会えなかったであろう人ばかり。
もう、アドレナリンが出っぱなし。
自分の人生、自分次第で 何本でも道あるじゃん!
もう、そこでの出会いだけでも、いろんな人生があるんだなぁと思ったわけです。
30人いれば 30人の一風変わった人生があって。
(私の人生って、自分次第でこれから何本でも道あるじゃん! なんだよ!)。
毎日思わされていました。
向こうで出会った人、もの、一つひとつに涙が出るほど感動して、ドキドキして、私は一人旅の魅力に、まんまととりつかれてしまいました。
ある日、私はカメラと財布だけを持って、ふらっと散歩に出かけました。
気持ちは少し持ち直してはいたものの、日本から連れてきたモヤモヤは、まだ消化しきれてはいませんでした。
(ここまで来て、いったい何を悩んでるんだろう)。
自分のあまりの情けなさに、とぼとぼ歩きながら辿り着いたのは、NY大学の公園。
公園のど真ん中にはなぜかグランドピアノが置いてあり、ぽつんと一人、学生がピアノを弾いています。
私は吸い込まれるように、彼の前に座り込みました。
楽譜もないのに、どんどん音楽は奏でられて、その旋律に惹き込まれて…。
「ブラボー!!!!!」。
気づいたら、2時間は経っていたと思います。演奏が終わるごとに、鼻水をたらしながら涙目で大きく手を叩く情緒不安定な日本人の女の子。そんな私の方を見て、彼がニコッと笑いました。
(えっ、何か始まるの?)。
その瞬間、聞こえてきたのは日本の曲。
「さくら」。
photo by shutterstock
アレンジを加えた、今まで聞いたことのない「NY版さくら」を弾き始めてくれたのです。
自分の母国の曲が、NYのど真ん中の公園で響いている不思議な感覚。そして、最後の一音が鳴り止み、 彼がまた、私にニコッと微笑みかけてくれた時…。
「Welcome to NewYork !」
勘違いかもしれないのですが、そう言われた気がしました。
一人旅のつもりが 全然、一人じゃなかった
その言葉に、涙が止まりませんでした。
落ち込んで流れていた涙が、感動の涙に変わった瞬間。
(自分を変えにきた旅なんだから、全部忘れて、今この時を思いっきり楽しもうっ!)。
この日を境に、気持ちが完全に切り替わりました。
(せっかく 来たこの街で、何かをつかんで帰ろう)。
NY。