美術館に刺した横串から、戦争や侵略で各国に散った美術品を考える
海外に出かけたらその国の歴史や美術を集めた美術館・博物館を巡るという旅好きも多いことでしょう。
著者のちきりん自身「世界の美術館、博物館巡りが大好き」というだけあって、本著でも第6章「世界の美術館」が紹介されています。が、そこは”社会派”の著者。
戦争や侵略で各国に散った美術品。収蔵・展示品よりも成り立ちや展示方法、イデオロギーといった観点からの紹介は、まさに世界の美術館に”横串を刺す”斬新な切り口だと思います。
今に至るギリシャ問題やニュースで話題の爆買い中国人のちきりん的背景分析
2012年発行の本著ですが、第8章の「恵まれすぎの南欧諸国」では、デフォルト危機に揺れる(あるいは揺れているように見える)ギリシャなど南欧諸国の「働く」「豊かさ」という価値観が我々日本で暮らす人々や他のユーロ諸国と違うという点を気づかせてくれます。
また、第9章「変貌するアジア」では、最近、新聞やネットでよく目にする「爆買い中国人」や拗れている「日韓問題」に通じるエピソードも紹介されている一方、羽田空港の国際化やその後の中国・韓国との関係など、まさに「変貌している」アジアを実感させます。
旅を通じて世界を考えると、日本のよさが改めて分かる!?
旅好きが高じて、東南アジアのタイ・バンコクで3年半ほど住んでいた私にとって、第10章の「豊かであるという実感」は、共感できる内容が盛りだくさんでした。
海外では水は「ペットボトルのミネラルウォーターを買う」のが普通ですし、バンコクでは物乞いをする小さな子どもをよく目にします。格差や露骨な差別が日常の生活に根付いています。そうした経験からたどり着いた答えは「日本ってなんてすばらしい国なんだ」ということ。
旅という自分を非日常に置くことではじめて見えてくるコト、それが旅の醍醐味であり魅力なのではないでしょうか。
まとめ
私自身、旅や旅行に関する書籍とは数多く出会ってきましたが、この本は今までにない新しいジャンルを見いだした一冊といえます。
グルメやショッピングを楽しむのも一つの魅力ですが、もう一歩深く、その背景や歴史を考えることで別の一面を知る、それも旅を通じて得られる醍醐味ではないでしょうか。それは日本という幸せな国で生きる私たちにとっても新たな発見をもたらしてくれるはずです。
今回紹介した「社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!(大和書房, 著:ちきりん)」は、そんな思いを抱かせてくれる一冊です。ぜひ、手にとって読んでみてはいかがでしょう。