旅の本には、よく「言葉はただのツールだから必要ない、大切なのはハートです」みたいなことが書いてある。それはもちろん一理あるし、心が一番大切だと思うけれど、それはあくまで表面的なコミュニケーションのこと。
本気で仲良くなろうと思う心があるのに、言葉が追いついていなかったらどうだろう…?
惹かれた国に留学するって選択肢
私はもともと人と関わることが大好きだった。(やっぱり、スペイン語を完璧に話せるようになりたい!)。
南米の中でもとんでもなく居心地がいいと感じたコロンビア。この国で、スペイン語とサルサを自分のものにしたいと思い、いつか帰ってくることを決めた。社会人になってからでも、旅する中で惹かれた国に、留学するって選択肢。私はとってもアリだと思う。
1年後、とりあえず訪問国は増やさなきゃ! というわけで、トリニダード・トバゴ、バルバドス、ドミニカ、セントマーチン島と、これまたあまり日本でメジャーではない国をショートトリップして経由し、コロンビアに到着。
というより帰国! さっそくメデジンに飛び、サルサ教室と私立大学の外国人向けのスペイン語科に入学手続きを済ませた。きちんと自立して暮らそうと思ったので、部屋も借りた。
一日8時間の勉強と、サルサ教室
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一日8時間の勉強、その後はサルサ教室という生活を約半年。2ヵ月目くらいで挫折しそうになりました。
言葉のボキャブラリーが少なすぎて、場を盛り上げるのも30分が限界。結局当たりさわりのない会話しかできない。でも、人懐っこいコロンビア人はいくら言葉が通じなくても、マシンガンのようにスペイン語で話してきてくれる。それに答えられなくて、だんだん申し訳ない気持ちになって。
「さやか、一人で可哀想だから、うちにごはん食べにきな!」。
優しい近所の老夫婦。最初はお邪魔していたんだけれど、それさえも億劫だと感じてきた時期もあった。
3ヵ月目には日本語が恋しくなって、親に泣いてスカイプした時もありました。自分で選んで来ているのに、辛いだなんて今思うと甘々だなぁと思いますが…。
寂しさを乗り越えられたのは、4ヵ月目くらいから! 今までだったら、「やぁ、元気?」「うん、元気だよ!」程度の会話しかできなかったけれど、恋愛の話もできる! 音楽の話もできる! 人との距離がずいぶんと縮まった。老夫婦のおうちにも、また喜んでいくようになった。
半年後、学校のテストにも受かり、日本に帰国。帰国後は、スペイン語圏の大使館からお仕事をいただいたり、スペイン語を通してたくさんの方とお友達になった。
おかげで今も、大好きなサルサを続けながら「日本の生活、時々ラテン」という心地いい生活を続けている。
あの日のままなら、つまらない平凡な女子のまま
旅に投資したお金はうん百万円だけれど、何の後悔もしていない。旅を始めなかったら、スペイン語を話せるようにもなっていないし、世界中に友達ができることもなかった。
(あの日のままの私なら、今でもファッションにしか興味のない、つまらない平凡な女子のままだったかもしれない)。
20代の若いうちは、ファッションやブランドものに興味が行きがちだけれど、物の価値はいずれ下がる。シャネルのバッグも売る時は二足三文になってしまう。
でも、旅で得られるものの価値は一生下がることはない。それは、他の誰も手にすることができない、自分だけが知ることのできる価値だからだ。
旅に出て、生きることが楽になった
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旅に出る前の私は、日本のことしか知らず、固定観念のかたまりだった。日本が一番安全。日本が一番素晴らしい。日本人が一番優しい。そう思っていたし、何も疑問を感じなかった。私のものさしは、一人の女として、とても短いものだった。
もちろん日本は素晴らしいし、その尊さは身にしみて実感している。ただそれ以上にいろんな国、文化、いろんな人種を自分の目で見て、人を許す心が養われたと思う。そして、自分を許す心も。
世界にはいろんな人が居すぎて、何が常識なのかなんてもはやない。日本で生きていく中で感じる小さな違いなんて、受け入れるか受け入れないかの問題だと思う。旅に出て、何が大切かを知り、自分がシンプルになって生きることが楽になった。
女盛り真っ盛り。20代後半の大事な4年で 85 ヵ国。旅フリークだとは自覚している。しかし一度きりしかない人生の4年間を全力で旅に捧げたことには1ミリも後悔したことがない。むしろ、最高の時間とお金の投資法だと思う。
その投資は、シャネルを買うよりプラダを着るより、女にとって、私にとって価値のあるものだと思うから。
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