ペルーのホスト先には、オランダ人の恋する女子高生がい た。
彼女「チリでステイさせてくれた彼が忘れられないから、 一旦自分の国に戻って、チリに住むために戻ってこようと思うの」。
私「学校はどうするの?」
彼女「卒業はするわ。でも、 ギャップイヤーだってもっと取れるし、自分のしたいようにする。だって、彼のことが好きなんだもの」。
そう言い切る、17 歳の彼女の顔は勇ましかった。恋する乙女はこうも果敢かと、戸惑いを隠せなかった。
アルゼンチンでは、同性愛者の女性と愛について語り合っ た。少しの英語と、習いたてのスペイン語。紙の辞書を使いながら話す。
「日本では、同性愛はどう扱われるの?」。
突然そんなことを聞いてきたものだから、私は少々面食らった。
アルゼンチンの同性愛
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「同姓愛は、ちっとも抑制されるべきことじゃない。自然の愛の形だと思う」。
彼女は26 歳にして初めて女性を愛したのだという。
「これまでにないくらいの感情の高ぶりと、深い愛情を感じたの。相手が男性であるか、女性であるかはどうでもいいと思ったわ」。
「彼女には恋人がいて、それを苦しく感じたこともあったの。でも今は、ただ、こんなにも好きでいられる存在でいてくれて、 私と出会ってくれて、感謝の気持ちでいっぱいなの」。
涙目になりながら語ってくれた彼女に、私は深く深くうなずいた。
(私は今まで、見返りを求めない愛を与えてこれただろうか)
(自分以上に、相手を想えていたのかな)。
気をつけて、と彼女から手づくりのミサンガをもらい、私は 南米最後の国ブラジルに向け、40 時間のバスに揺られた。
12 歳から、変わらないキス
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日系人が多く、見た目は日本人なのに言葉はポルトガル語を話す不思議の国では、仲睦まじい夫婦がホストだった。
奥さんは旦那さんに「おかえりなさい」と言いながら、体を抱き寄せキスを交わす。映画を観る時もぴったりと寄り添い、当然のごとくキスを交わす。
そんな二人に構うことなく、おばあちゃんが畳み掛けるように「ほら、ごはんの準備ができたから来なさい」と言う。
少々強引に連れて行かれた裏庭には、隣の住人も揃いに揃って、10 人ほどで準備万端のBBQと共に私を迎えてくれた。
「あなたたち、新婚さん…なんてことはないよね?」。
あまりのラブラブっぷりに、思わず口から出た質問。
「ハハハ。まさ か! 結婚してどれくらい経つかな。付き合い始めたのは 12 歳 の時だから、今から20年以上前だね」。
「12歳!? そんなに前 から付き合ってるの !?」
彼は言う。
「そうだよ、彼女を一目見て電撃が走ったんだ。この人と結婚するんだって本気で思った。僕は心底幸せ者だよ。彼女と一緒に過ごせるなんて、これ以上の生活はないね。愛している気持ちはあの頃と変わらないどころか、日に日に増すばかりだ!」。
( こんな愛の形って本当にあるの! ? )。
別居婚、不倫、セックスレス。
結婚の現実なんて、そういうものだと思っていた。いろんなことを諦めながら、妥協しながら。
数年も経つと、愛は惰性に変わる。そんな冷め切った態度で見ていた私には、目の 前の二人の光景が別の世界のように見えた。
不思議そうに私の顔をのぞきながら、彼は笑いながら言う。
「きっとね、君も巡り合う時が来たら、わかるようになる」。
数えきれないほどの人と出会い、数えきれないほどの愛の形を目の当たりにした。
人生の中に、ドラマはいつ何時も起こりうる。
妄想なんかじゃなく、本気でそんなことを情熱の大陸南米は思わせてくれた。
いつまでその狭い部屋に 閉じこもっているつもりなの?
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ジェットコースターのように一瞬で駆け上がる恋や、未来に不安を感じ、戸惑いながらも想いを貫く恋。
一生をかけて、自分以 上に愛したい人ができるということ。
国籍や言語や肌の色など、 大した理由にはならない。
時には性別もゆうに超える。
そのどれもが、どんな映画や小説よりもリアルで、ドキドキした。
濃密な気持ちでぶつかり合う姿は、恋愛なんて、しばらくいいやと投げやりになっていた自分に、何かを思い起こさせてくれたような気がする。
出逢う時は出逢い、恋に落ちる時は落ちる。
「女の子が一人で旅をするなんて、危ないんじゃない?」。
何度もそう言われ、止められた。確かに、私自身も勢いに任せて旅に出た部分がなかったわけじゃない。
ただ、数ヵ月前の部屋にこもり彼との出来事を思い出しては一人で泣く、という絵に 描いたような失恋女だった自分に、今もし会うことができるな ら、私はこうけしかけることだろう。
「あなた、いつまでその狭い部屋に閉じこもっているの? 待っていたって、誰かがひゅーんと来て助けてくれるわけじゃ ないのよ」。
想像よりも、 どうしたって素敵な世界
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王子様は黙っていたら来てくれるほど敏感じゃないのだ。
ましてや、部屋で泣いてうずくまり、悲劇のヒロインを気取ったところで、シンデレラのように血統書付きのプリンセスじゃないのが私たちの現実。
自ら果敢に扉を開けることのできる、 勇敢で賢い女子こそが、扉の外の世界を楽しむ権利を勝ち得るのだ。
大丈夫、外の世界は思ったよりも魔物だらけじゃないし、嘘みたいに親切に助けてくれる魔法使いもたくさんいる。
そして何より、外の世界には今までの自分が知っていた世界よりも、そして自分の想像よりも、もっと素敵で楽しいことや人がたくさん待っている。
一歩踏み出せば、「待ってました」 と言わんばかりの歓迎を受けるだろう。
彼に対する沸々とした怒りがしたためられた日記は、幸か不幸か南米のどこかに置き忘れてしまった。
意図したわけではないけれど、なくしたと気づいた時には、拍子抜けして思わず笑ってしまった。
彼に次会うことになったら、どんなことを言ってやろう、何を問いただしてやろう、なんて気持ちもどこかにきれいさっぱり消えてしまったようだった。
日本に向かう飛行機の中で、雲を上から眺めていると、彼との日々が駆け巡った。悲しさではなく、好きという気持ちを共有させてくれた存在に嬉しさを覚えた。
(私、彼のことちゃんと好きだったんだなぁ)。
旅に出る前の自分より、 今の方がずっと好き
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いよいよ日本に到着する、というアナウンスが流れた時、これからの毎日、どんなドラマチックなことが待ち受けているんだろうとワクワクを隠しきれず、思わず微笑んだ。
どこ何時、誰だって、自分が描き出す物語のヒロインになれるのだ。描き出すペンは、忘れてしまっているだけで、誰しもが手にしている。
(4ヵ月前の泣き腫らして下を向いていた自分より、今の方がずっと好き。自分はどこまでも行けるんだ)。
そんな気持ちは軽く、力強く空港を後にする、私の足取りに現れていただろう。
旅がしたい!けど踏み出せない。そんなすべての女の子へ
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