旅の写真家・中村風詩人が伝える、“神秘の島”小笠原の魅力

東京にも、こんな景色があったんだ。初めて小笠原の写真を見たときに、とても驚いたことが記憶に残っています。24時間の船に揺られてようやくたどり着くその島には、私たちがまだ知らない魅力や風景が溢れています。

そんな「小笠原のすべて」をまとめたガイドブックが4月26日に発売。著者は、島に魅了され、島に通い続け、島を見尽くした写真家・中村風詩人さんです。

写真家が撮り続けた渾身の小笠原ガイドが発売

小笠原に19回渡航、延べ1年を超える滞在で全てを見尽くした写真家・中村風詩人さんが纏める全季節全点撮り下ろしの一冊。

写真集のようなグラビアから始まり、ガイドブック・図鑑の価値も併せ持った小笠原を知るための金字塔が、諸島返還50周年となる2018年に発売されました。

写真家・中村風詩人プロフィール

海洋写真家。世界一周、南太平洋諸国一周、東南アジア一周、オセアニア一周、欧州一周、などを旅して2018年現在80カ国以上を訪ねる。中でも船旅は多く乗船歴は数百回を数える。船でしか行けない小笠原にはこれまで20回近く訪れ、撮影期間は延べ一年にのぼる。

また客船上や日本橋三越はじめ各百貨店や新聞社ホール等での公演や写真講座、フォトコンテストの審査も行う。代表作に世界3周分の海の風景をおさめた写真集『ONE OCEAN』を出版、同展示は水戸京成百貨店や日本橋三越で行われた。海の風景は広島県の切手にもなっている。

中村風詩人さんインタビュー

小笠原を追い続け、この度ガイドブックを出版された中村風詩人さん。なぜ小笠原を選んだのか、どのようなところに惹かれたのか、などをお聞きしました。

ーー小笠原にはまったきっかけは何でしたか？

ザトウクジラです。さらに言うとザトウクジラの瞳に心を鷲づかみにされました。これまでもクジラの背ビレやブロー（潮吹き）は見たことありましたが、普段海中を泳いでいる彼らを間近で目にする機会はありません。

それが小笠原に初めて行ったときに、目の前でクジラの全身が飛び上がりました。一瞬時間が止まったような気がしたとき、近すぎる巨体の瞳と目が合いました。思えばこの一瞬の出来事が全ての始まりでした。

ーーほかの島と比べて小笠原の特徴はなんでしょう？

船でしか行けないところですかね、何と言っても片道24時間かかりますから。何度も行っているので普通になってしまいましたが、初めていく時は確かにハードルでした。あとは島の成り立ちが特徴です。

世界のほとんどの島は大陸から分化して出来ているのですが、小笠原は大海の真ん中で海底火山が噴火して島が出来ました。コレ、実は小笠原が世界遺産になった理由です。

ーー今まで80ヵ国訪れていますが、唯一小笠原だけ単発の本を作りたいと思った理由を教えてください。

初めは毎年クジラに会いに行こう、というくらいの気持ちで通っていました。そのついでにイルカと泳いだり無人島に上陸したり山登りや戦跡を見たり、年に一度の祭にも参加して、深海に棲む魚を見て、春先にだけ咲く花を撮りに……と通っていたら、今度は小笠原で見たことのないものの方が少なくなっている、ということに気が付きました。

その頃に小笠原の魅力を何かの形で発信できたら、と思うようになりました。結果しっくりきたメディアが『小笠原のすべて』という書籍の形でした。

小笠原の美しいお写真をご紹介

写真展巡回について

現在、写真展が全国で巡回中です。ぜひ、小笠原の美しいお写真を会場でご覧いただければと思います。

All photos by 中村風詩人