世界一周を始めて13日目、タイのアユタヤで足を怪我してしまった。
激しく捻挫してしまい、歩くことができない。動けなくてしゃがんでいると、近くにいた人が病院に連絡してくれた。
骨折はしていなかったものの、私は松葉杖生活を送ることに。
突如として始まったタイでの怪我人生活。この怪我人として過ごした約2週間の間に、私はたくさんのタイ人の優しさに触れることになる。
大渋滞のアユタヤにて
家族が送ってくれたアユタヤ駅
足を怪我してしまった日は、タイの伝統的な祭り「ソンクラーン」の最中だった。
街は賑わい、道路は大渋滞。
搬送先の病院で処置してもらい、駅まで向かおうとしたが、Grabタクシーがまったく捕まらない。
病院から駅までは4km。仕方がない。どうにか歩いて向かおうと覚悟を決めた。
だが思うように進まない。慣れない松葉杖を使って、4kmもの道のりを歩けるはずがなかった。それでも、どこか渋滞が落ち着いたところまで行ければ何とかなるかもしれないという希望を抱いて歩く以外、帰る方法が思い浮かばなかった。
何分もかけて30m程進んだとき、1人の男性が駆けつけてきてくれた。
「送ってあげるよ」
そう言って、家族の乗った車に乗せ、大渋滞の道を何分もかけて駅まで送ってくれた。
困っているところを助けてくれた家族のことが忘れられない。
あのときの家族は、元気にしているだろうかと今でも思い出す。
バンコク国立博物館にて
一人では乗り越えられない車椅子用スロープ
怪我のフォロー受診をしたとき、松葉杖でも観光できる場所として、医者からバンコク国立博物館を観光することを勧められた。
私は前職で福祉系の仕事をしていたこともあり、身体が思うように動かない場合、実際に人はどれほど行動を制限されてしまうのかを身を持って知っておきたいと思った。そこで松葉杖を使ってではなく、あえて車椅子をレンタルして館内を巡ってみることにした。
車椅子での移動は思いのほか、大変だった。
車椅子用にスロープを設置してくれていたが、スロープと地面の間には数cmの隙間がある。この僅かな隙間があるために、自分一人の力では、どうしてもスロープの上に乗ることができなかった。
一人で力いっぱいタイヤを回し、段差を超えようとしていると、急に車椅子が軽くなり前に進みだした。後ろを振り返ると、近くにいた観光客が駆けつけて、車椅子を押してくれていた。
この後も、スロープがある度に、誰かが駆けつけて車椅子を押してくれた。
車椅子を漕ぐのに疲れ、途中で休憩していると「どこに行きたいの?」と声を掛け、車椅子を押してくれる人がいた。
急な坂道でコントロールを失い、植木に突っ込むと、通りかかった人が慌てて近づき「大丈夫?」と声を掛け、目的地まで運んでくれた。
私の車椅子は、館内にいた人によってバトンのように繋がれた。そのおかげで、私は館内を観て周ることができた。
この日、車椅子を押してくれた人たちのことを私は忘れない。
歩けない足で味わったタイ人の優しさ
タイで松葉杖生活を送っていた約2週間の間に、私はたくさんのタイ人の優しさに触れた。
アユタヤで駅まで送ってくれた家族、バンコク国立博物館で車椅子を押してくれた人たちだけではない。
電車で席を譲ってくれた人がいた。「送ろうか?」と声を掛けてくれた人がいた。歩行を手伝ってくれた人がいた。
足を怪我して、たくさんの人に助けてもらった。このタイでの2週間が、私は忘れられない。
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