編集部
伊佐 知美 Somewhere&Here inc.代表、写真家、文筆家

三井住友、講談社、Wasei『灯台もと暮らし』創刊編集長として勤務の後、「場所を問わずに働く」をテーマに、29歳の時に仕事を持ち歩きながらの無期限旅行に出発。二度の世界一周、マルタ、イギリス、フィリピン3カ国の語学留学等ののち、日本に帰国。現在は東京をベースに活動。著書に『移住女子』(新潮社/日・韓)。2023年夏に第一子出産。

今振り返っても、ハワイ島で過ごした日々は美しすぎて、「やっぱり、夢だったんじゃないかな」と思う。

ハワイといえば、オアフでアロハ。「ハワイは世界でも有数のリゾート地」というイメージを持っていた私は、過去2回、羽田空港からまっすぐにオアフ島に飛び、そしてまたオアフ島から羽田空港に戻っていった。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

けれど、3度目のハワイ訪問の今回は、オアフ島から離島のハワイ島に移動し、今まで知らなかったハワイの魅力に触れた。

この記事は、ハワイ島で想像を超える美しさの自然に触れ、「この素晴らしい島の景色を守りたい」と感じた、「マラマ」な旅の日々の記録。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島
「マラマ」は、ハワイ語で「思いやりの心」を意味することば

離島のハワイ島だけで、10種の気候帯が存在する

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島のビーチ

ハワイには、オアフ島やハワイ島を含め主要な離島が6つある。それらはすべて、海底火山が隆起してできた島々だ。「ホットスポット」と呼ばれるマグマの吹き出し口から流れ出した溶岩が積もり、海上に顔を出した部分を、私たちはまとめて「ハワイ」と呼んでいる。

主要な離島には、それぞれニックネームがついている。たとえばオアフ島は「ギャザリングプレイス」、マウイ島は「マジックアイランド」。そして、ハワイ島のニックネームは「ビッグアイランド」。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

「ビッグアイランド」は、その名の通り、ハワイの離島の中でもっとも大きい島の意で、実際ハワイ島以外のハワイの離島全部を集めても、ハワイ島の面積の半分にも満たない。

日本でいうとだいたい四国の半分ほどの面積だが、日本全土の気候帯が6種なのに対し、ハワイ島には10種の気候帯が存在する(ちなみにハワイ全体には、北極気候とサハラ気候を除く、地球上のほぼすべての15の気候帯がすべて存在する)。さらには、ハワイ島には、富士山より高い山が2つある。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島のマウナケア

……大切なことなので繰り返すが、ハワイ島には、10種の気候帯があり、温暖湿潤から高温砂漠、そして氷雪まで、バリエーションが非常に豊か。そして標高約3,800メートルの富士山よりも高い、標高4,000メートルを超える山が、島内に2つある。

つまり、ハワイ島では、車で移動するたびに天気が変わる。ハワイの名ガイド「ホロホロアイランドツアーズ」のKenさんは、「天気が変わった=雨が降ってきた」というよりも、「雨が降るエリアに、僕たちが入った」という方が正しいんだよ、と教えてくれたけれど、本当にハワイ島は、「そういう島」だ。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島の天然岩盤浴

晴れの日を楽しみたかったら西のコナ、多量の雨が育む自然の美しさを感じたかったら東のヒロ、高地の涼しさを感じたければ北のワイメア……など、「その日、どういうハワイ島の自然の中で過ごしたいか」を考えて移動すれば、希望通りの1日を過ごせてしまう。

何よりも驚いたのは、常夏のイメージのハワイにも、雪が降るエリアがあること。具体的には、星空観測で有名な標高4,207メートルの「マウナケア」山頂には、冬ともなれば雪が積もる。それも、スキーやボードなどウィンタースポーツができるほど。

なのに、マウナケア山頂から1時間ほど車で下山したら、そこには真夏のハワイのビーチがやっぱりいつもと同じように広がっている。冬の恵みと夏の楽しみ、どちらも半日あれば楽しめてしまう。誤解を恐れずにいうならば、ハワイ島は「季節が選べる」島なのだ。

ハワイ島は、旅人のバケットリストを詰め込んだ宝箱みたいな場所

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島の固有種ネネ

私が今回の旅でメイン拠点としたのは、晴れの街・コナのホテル「ジ ウェスティン ハプナ ビーチ リゾート」。晴れ渡った空と、透き通る海のビーチは美しく、鳥が飛び交い、遠くに山々が見え、気持ち良い風がホテルのそこら中を撫ぜる、世界中の祝福すべてを集めたようなリゾートだった。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島の「ジ ウェスティン ハプナ ビーチ リゾート」

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島の「ジ ウェスティン ハプナ ビーチ リゾート」

それと同時に、サステイナブルな取り組みは、もはや当たり前のように行われていた。たとえばわかりやすいところだと、宿泊者全員にウォーターボトルが無料で配布され、敷地内には至るところにウォーターサーバーがあり、レストランには地産地消を意識したメニューが並んでいた。販売されている日焼け止めは、当然すべてリーフセーフ=サンゴにやさしいものだった。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

ホテルだけでも至福の時間が過ごせたのに、ホテルの外にはさらに素晴らしい体験が待っていた。

たとえば、日本から移住して無農薬コナコーヒーをつくっている「村松小農園」見学、虹と海を眺めながらの1時間半に渡るコハラ山「カフア牧場」での乗馬体験。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島の「村松小農園」

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島のカフナ山での乗馬体験

カメハメハ大王が生まれた島・ハワイ島の歴史を学ぶ時間、ハワイ州の鳥「ネネ」をはじめとする固有種との出会い、波の音を聞きながらローカルビールを飲む丘の夕暮れ、マウナケアで満天の星空や宇宙に浮かぶ土星を観測しながら、雲海の向こう側に月が昇る景色を見つめた夜 etc……。 あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

旅の間、何度目かの夕暮れを眺めていたら、気づいたら涙が流れていた。なんだか少し恥ずかしいな、と思ったけれど、隣を見たら、一緒に旅をしていた友人はもっと涙を流していた。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

そういえば昔、「人生で何度美しい夕日が見られたかが、幸せを図るものさしのひとつじゃないか?」と思って、港区の会社を辞めようと決めたことがある。

ハワイ島の旅を経て、もしかしたら人生には、もう一つ幸せを図るものさしがあるのかもしれないと思った。それは、「何度、嬉しさで涙を流せたか」だ。

ハワイ島で過ごした数日間は、旅好きな人が「人生で一度経験できたら理想だな、と願うこと」を、思う存分わがままに、みっちりと詰め合わせたような日々だった。

「マラマ」な旅とは、一体何だろうと思っていた

ハワイ島の旅をするまで、私にとっての「マラマ」なハワイ旅とは一体何だろう、と想像していた。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島の「村松小農園」
TABIPPO×ハワイ州観光局の取り組み「マラマハワイウィーク」の一環で旅をしてきた

けれど、もしかしたら、マラマとは小難しく考えるものではなく、ハワイで心動かされる瞬間に出会えたら、それぞれが「自分にとってのマラマ」を自然と見つけられるものなのかもしれなかった。私の場合は、ハワイ島の美しい景色に触れ続けた結果、自然と「この島の美しさを守りたい」と思うようになっていたから。

今回の旅を通じて、ハワイ島の圧倒的な自然の美しさの背景には、「その美しさを守りたいと願い、未来につないでくれた人たちの努力」があると知った。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

・参考:昔ながらの自然や文化に触れたハワイ島・ヒロの旅。暮らすような旅を通じて|写真家 相沢亮|TABIPPO.NET

様々な場面で語られている通り、ハワイの現状は、すでに過去と変わってしまった部分がある。それは、たとえば外来種の勢いに押されて消えてしまった固有種の息づきだったり、近代化の中で忘れ去られてしまった文化・風習だったりする。けれど、今から守れるもの、復元の手助けができるもの、学び伝え、知ってもらって、遠方で暮らすとしても「一緒に気をつけられる」ことも、もちろんたくさんある。

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

たとえば、本当に簡単だけれども、ペットボトルを買わないこと、地産地消の食べ物を大切にすること、歴史や伝統的な暮らしを学び継ぐこと、誰かの日常にお邪魔=旅をしたら、ちょっぴりだけでも貢献して帰ること。ハワイの主食であるタロ芋を積極的に食べてみること、自然は「そこにあるもの」ではなく「守ることができるもの」だと認識を新たに行動し続けることなど。

・参考:変わりつつある「楽園」、あたらしいマラマなハワイ旅へ|フォトグラファー 片渕ゆり|TABIPPO.NET

あたらしいマラマなハワイ旅で訪れた、ハワイ島

自然に触れる旅が大好きな人こそ、ハワイの離島を訪れてみてほしいなと思った。観光の未来をいちはやく考えて、現代に即した形で実行している大自然を擁する島々へ。私は帰国後、今回感じたハワイの「マラマ」を、次は日本国内で愛している美しい島・沖縄に持ち帰って、実行してみたいなと思っている。

そういう風に、ハワイを訪れた人は「マラマ」を普及させる役割を担っていくのだと思う。それをしたいと思わせるだけの美しさが、ハワイ島にはあった。

All photo by Tomomi Isa

《特集》美しきハワイを未来に語り継ぐ「あたらしいマラマなハワイ旅」

編集部
伊佐 知美 Somewhere&Here inc.代表、写真家、文筆家

三井住友、講談社、Wasei『灯台もと暮らし』創刊編集長として勤務の後、「場所を問わずに働く」をテーマに、29歳の時に仕事を持ち歩きながらの無期限旅行に出発。二度の世界一周、マルタ、イギリス、フィリピン3カ国の語学留学等ののち、日本に帰国。現在は東京をベースに活動。著書に『移住女子』(新潮社/日・韓)。2023年夏に第一子出産。

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