編集部
Asuna エディター

元小学校教諭。大学在学中に「海外ひとり旅」にハマる。現在はTABIPPOの編集部に所属。ほかにも取材・美容・食・コラムライターとして活動しつつ、個人でFamily photographerとして、お宮参り・七五三・前撮りなどを撮影している。週末は夫と旅三昧の日々で、長野〜福島県は庭。東北が大好きで、地方に行きつけの店を作るのが趣味。

「未来」。自分自身の人生のなかで、このスケールの大きいテーマについて考えることは何度あるのでしょう。

今回わたしが訪れたのは、北海道・下川町。ここで「自分の未来」について考える旅をしてきました。

北海道下川町で「未来について考える」とは?


今回、わたしが参加したのは「人生と未来がリンクする森の町、北海道・下川町ツアー」。旭川空港から車で約2時間弱、町のおよそ9割を森林が占めている、北海道・下川町にやってきました。

2011年、「環境未来都市」にも選定された、下川町。人と自然を未来へつなぐSDGs未来都市として、持続可能なまちづくりの最先端事例を作り続けています。持続可能なまちづくりを進めるということは、今ある自然を未来に残していくということ。


しかし、自然と未来と人生……これらをリンクする”鍵”はどこに隠されているのでしょうか。ツアーを通じて、わたしたちの心に残る「未来」へのイメージはどのようなものになったのか、ツアー内容とともにお届けしていきます。

ツアー参加者は、わたしを含めて5人。

大学生、20代前半・中盤・後半……と、わたしが最年長でした。事前交流会でお互いの名前と顔、呼び方などを知っていたため当日もすんなり。


受け入れをしてくださった下川町のみなさんもフレンドリーで温かく、オンラインよりも実際にあった方がうんと良い!そんな印象からスタート。

到着後、オリエンテーションを終えたら早速アクティビティ開始です。

違った視点で”森を見る”、森散歩と精油作り


まず私たちが向かったのは、体験の森。町の9割が森である下川町は、メイン道路をふくめ全ての道が森につながっています。今回は、いわゆる「森林浴」よりも、もっとディープな森散歩をしました。


そこで出会ったのは藤原 佑輔さん・通称「ふじさん」。自然案内「のらねこ屋」でガイドとしての仕事をし働きながら、日々下川町の森に入って、早朝から森で生きるさまざまな植物、菌類の観察を続けています。



木の皮や内側に付着しているもしゃもしゃとした”粘菌”や、山に生えているキノコ、シダ科の植物などさまざまな生き物がいることを教えていただきました。

木皮にびっしりと育つ「粘菌」

しかし今回の森散歩での1番の目的は「トドマツ」を持ち帰り精油をつくること(事前に許可をいただいています)。まだ若木のトドマツの幹を切断し、細い枝をさく。どっさりと採れたトドマツを袋に入れて、精油作りを行っている「ガーデニング・フォレスト フレペ」に持ち帰ります。



ここでは実際にトドマツを煮出し蒸留させ精油をつくる過程を体験することができます。モリモリに詰め込まれたトドマツ。この量からとれる精油はほんの少し。




じっくり蒸留を待って、精油と、蒸留させた時に抽出できるアロマウォーターが完成。シュッとひと吹きで香る、爽やかな森の香りにうっとり。この香りを香るたびに下川町を思い出すのでしょう。

下川町の人気喫茶「アポロ(APOLLO)」で交流会


その晩は、下川町のメインストリートにある、地域で人気の喫茶店「コーヒーと洋食 アポロ」にて参加者と観光協会のみなさんで交流会。

下川町はフルーツトマトの生産が盛んということで、メニューには下川町産のトマトが贅沢に使われていました。


前菜のラタトゥイユをはじめ、サラダ、ピザ、ナポリタン……と料理はすべて手作り。おすすめのジビエ料理「鹿肉のロースト」も柔らかく、ほっぺたが落ちそうなラインナップでした。


まるで家庭料理をいただいているかのような居心地の良いお店で、地元の人に長く愛され続けているお店である理由がとてもよくわかります。

おいしいご飯と楽しい談話に、みなさんと心打ち解けたひとときでした。

朝と夜、違った表情をみせるA-frame cabin「iwor」でのひととき


ぐるっとしもかわ代表・大石さんが営むオフグリットキャビン A-frame cabin「iwor」。ここでは、朝と夜で異なるアクティビティを体験しました。

市街地から6kmほど離れた場所に100年の歴史ある温泉宿「五味温泉」があり、さらに森の奥へと進んだところにA-frame cabin「iwor」はあります。見渡す限りの緑色の世界は、まるで絵本のなかのよう。

1日目の夜は、焚き火とホタル鑑賞をしました。みんなで焚き火を囲み、北海道・下川町でうまれたお酒「EZOUSAGI」などをいただきました。


真っ暗闇のなか森の木道(ビオトープ=ドイツ語で”命の場所”)を進むうちに、ちらほらと黄緑色の灯りが見えます。ここではヘイケボタルを観察することができました。


翌日の朝もA-frame cabin「iwor」にて。朝は大石さんが用意してくださった薪屋とみながのスウェーデントーチ(切れ込みや空気孔を空けた焚き火のための丸太)や焚き火で朝食作りをしました。




下川町のフルーツトマトや、椎茸、生でも食べられる春菊を、下川産の小麦で作られたパンで挟んでホットサンドを作りました。



ほかにもスウェーデントーチに火をつけてあべ養鶏場の下川六◯酵素卵をつかって目玉焼きを焼いたりと贅沢なラインナップ。



森のなかでいただく朝ごはんに、みんなこの表情です。

普段バタバタと食べる朝食とはまるで違うひとときに、心の余白を楽しむことができました。真っ暗な夜にホタルを見に行った森も、日中はこんな素敵な緑に包まれます。両脇の沼に敷き詰められた藻が美しく、まるで絨毯のよう。



冬の季節はキャンドルを灯してライトアップするのだとか。季節や時間によって表情を変える森で過ごせる豊かさも、ここならではですね。

斧を振りかざしていざ薪割り!割れる快感にやみつきになるかも


2日目最初の体験は、薪屋とみなが代表・トミーさんこと富永紘光さんによる薪割り体験。今まで斧さえ担いだことのなかったわたしたちは、恐るおそる……。

大きな斧を使うのは不安にも思えますが、トミーさんがわかりやすくレクチャーしてくれました。


なんでも、斧を振り下ろす際には腕の力だけでなく、腰をおとして膝を曲げることで体重移動させるのがポイントなんだとか。順番に何度も薪割り体験をさせていただき、なぜかストレス発散と喜ぶわたしたち。スパーン!と薪が割れる快感はやみつきになります。

薪割り体験のあとは、ガレージで少し話を伺ったり実際にご自宅で使われている、土をベースに天然素材で手づくりした「アースオーブン」を見せてもらいました。


持続可能なエネルギー・暮らしを実現できる、いわば”自然のオーブン”です。トミーさんご一家は、ここ数年ほど電子レンジを使うことなく生活しているのだそう。新鮮な野菜や下川産の小麦を使ってピザを焼いたり、お菓子を作ったりと使い方は万能です。

アースオーブンで焼き上げたキャロットケーキをいただきました
「自分が作ったもので誰かを支えていく暮らしをつくりたい」

そんな思いを掲げるトミーさん。自分が生産できるものを増やしていけば、誰かと交換ができるとお話ししてくださいました。


「そのうち養蜂所とかもやってみたいなぁ」と話すトミーさんが薪屋を営む理由は「何かひとつに特化していれば、誰かが困った時に”助けて”っていってもらえることがあるからさ」とのこと。

周りとの交流が希薄な暮らしをするわたしたちにとって、日々の暮らしで”家族以外のだれか”と支え合える暮らしは、とても温かいものだと感じました。

「二十日」の漢方茶で、体の内側からリセットを


ここは、アロマセラピーと漢方茶のお店「二十日」。東京から北海道・下川町に移住し、セラピストとカフェ経営の2足のわらじを履く、塚本あずささんが営むお店です。


店内にはドライフラワーも飾られており、入った瞬間に心ときめく空間。アロマセラピーがおこなわれるベッドがある部屋と、カフェスペースに分かれていました。今回は、メニューのなかからそれぞれが気になる漢方茶を淹れていただくことに。

運ばれてきたポットの蓋を開けると、とってもかわいい!味わいは、とってもやさしい。これはハマってしまいそうです……!


普段の生活ではなかなか出会うことのない漢方茶。口当たりやさしく、飲み終わりもすっきり。体の内側からリセットされているような感覚に、ゆったりと流れる時間。これは日々のご褒美に通いたくなりますね。

以前は東京の一等地、青山のサロンでセラピストとして働かれていた塚本さん。下川町での移住は「地域おこし協力隊”シモカワベアーズ”」への参加がきっかけだったのだそう。

都内で独立しても”同じような店”はたくさんあるし、自分が”そこ”で挑戦する意味が見出せなかったとき、下川町の協力隊として移住が決まりました。


一生懸命頑張る女性の憩いの場・癒しの場になりたいという目標のもと開業されたのだとか。今では、町内の女性はもちろん隣町や旭川などからも通うお客さんがいるのだそう。


「人生切り開くぞ!なんて重く考えすぎると立派なことをしなきゃいけない気持ちになる。背伸びしないのが大切」

そう語る塚本さんのお店「二十日」を訪れると、ありのままの自分を癒してくれそうな、そんな温かい空気が流れていました。

森の中で乗馬?乗馬を通して自分の”軸”を考える


フリータイムは乗馬体験へ。そもそも乗馬をしたことがなかったので、私にとっては初めての試みでした。よくある牧場での乗馬体験のように平地で乗るのかと思いきや……向かったのはなんと森!

木漏れ日が気持ちが良い森のなかでの乗馬は、爽快感満載。みくわが丘のなかで馬に乗ることができる、貴重な体験をさせていただきました。



お世話になったのは、名寄新聞社下川支局記者でもあり、北海道和種である通称「道産子(どさんこ)」という種類の馬、はなちゃんの飼い主・小峰博之さん。自給自足で持続可能な森暮らしを目指し、下川町で活躍されています。


馬のはなちゃんは、下川町内のさまざまなところに小峰さんと一緒に出没するとして「お散歩ポニー=おさんポニー」の愛称で、町民みんなに愛されているのだそう。

ときには、ある人の庭の草刈り……ではなく草食べをはなちゃんが行くこともあるのだとか。草刈り機を動かす電力や、排気ガスなどを出すことなく、馬のごはんに。確かに持続可能ですし、双方に幸せしかもたらしませんね。

 「馬は人間の意思をしっかり理解する生き物。自分がどの方面にいくかしっかり決めていないと、馬が迷ってしまう」

乗馬体験の前に小峰さんが語った一言が、自分の人生にも当てはめることができるのでは?と深く頷いてしまいました。自分自身が進む方向を、意思を持って決断することで道が開けてくる。乗馬を通して、生き方を学んだような時間でした。

編集部
Asuna エディター

元小学校教諭。大学在学中に「海外ひとり旅」にハマる。現在はTABIPPOの編集部に所属。ほかにも取材・美容・食・コラムライターとして活動しつつ、個人でFamily photographerとして、お宮参り・七五三・前撮りなどを撮影している。週末は夫と旅三昧の日々で、長野〜福島県は庭。東北が大好きで、地方に行きつけの店を作るのが趣味。

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