この記事では、四角大輔さんとTABIPPOが一緒に作り上げた話題の新書籍、「The Journey 自分の生き方をつくる原体験の旅」の中から、旅のエピソードを抜粋して紹介していきます。
今回ご紹介するのは、美容師の藤川英樹さんのエピソードです。
人生を追求する14人の「時代の疾走者たち」による原体験
自分らしい生き方をつくる「手段」として旅がある!「人生」を追求する14人の“時代の疾走者たち”による「原体験」としての「旅」のストーリーをまとめた一冊。「旅に出て人生は変わるのか?」をテーマに、高橋歩、山川咲、西野亮廣、村上萌×著者(四角大輔、TABIPPO)とのスペシャル対談も収録。
「The Journey 自分の生き方をつくる原体験の旅」は「自由であり続けるために20代で捨てるべき50のこと」の著者、四角大輔さんと長い時間をかけて一緒に作り上げた、話題の新刊であり「旅」と「生き方」をつなげる1冊となっています。
旅に出ると視野が広がり、自分がいかに狭い世界で生きていたかを思い知らされる時があると思います。
旅とは何か?自分はこれからの人生をどうやって生きて行きたいのか?この本を読んで今一度自分の心に問い掛ける時間を作ってみてはいかがでしょうか。
自分の「仕事」の本当の可能性を知れた|藤川英樹/美容師
旅に出て気づけたのは、髪を切ることで、人の人生を変えられるということ
旅に出て5カ月くらいたったころ、異国間MAXのインドに到着。汚いし、臭いし、何を食べてもカレーの匂いがするインドになぜかハマってしまい、2カ月ほど滞在していた。
インドの東端のコルカタという街に着くと、だれかに「ここには、あの有名なマザー・テレサが身を捧げた“マザーハウス”がある」と教えてもらった。どうやら、みんなここにボランティアに行くらしい。
「あんまりボランティア精神のない俺やけど、髪も切れるらしいから行ってみるか」と軽い気持ちでハサミを持って、ボランティアに参加した。
シスターに「あなたは髪が切れるならここに行って髪を切ってあげて」と言われて行った先は「ハンディキャップを持つ子どもたちの家」だった。その日は誕生日会だったようで、園内は色とりどりの風船が飾られていて、盛り上がっている子どもたちの笑い声でいっぱいだった。
「次にいつ切れるかわからないから、とにかく短く切ってくれ」と言われ、子どもを1人ずつ廊下の踊り場に呼び、髪を切った。暴れる子ども、泣く子ども…あやし方がまったくわからなかった俺には、相当難しいカットだった。
3時間ほどで、そこに居たほとんどの子どもたちの髪を切り終えた。それから、「まだ切ってない子はいるかな?」とじっと教室に目を凝らしてみると、群がる子どもたちの間から、机にふせたままの女の子の姿が目に入った。
「あの女の子はどないしたん?」。スタッフの女性に尋ねると「重い自閉症で、1 人で立つことも、歩くことも、話すこともできないのよ」と教えてくれた。
「俺、最後にあの女の子の髪、切りたい」。スタッフの女性に思いを伝え、2人がかりでその子の肩を支えて踊り場まで連れてきて、イスに座ってもらった。話しかけても、無言で下を向いたまま。目も合わせようともしない。「可愛くしたるからな」。
クロスをつけ、スタッフにその子を抑えてもらう。そして、伸びきった髪を肩のラインで一直線に「スパンッ」と切った。可愛くて子どもらしいボブ。肩をポンポンと叩き、鏡を見せた。すると、その子が手鏡をとり、自分の顔とヘアスタイルを見て、すっと顔を上げた。
それまでグッタリと力の入っていなかった体を起こして立ち上がり、「にこっ」と笑って俺の手をとり、園内を歩き出した。しばらく手をつないで園内を散歩してくれた。
最後に俺の顔を見て、声は出てないけれど「サンキュ」って。涙がこらえられなかった。「もしかしたら、髪切ることで、その人の人生変えられるんちゃうか?こんなええ仕事ない」。そう気づけた瞬間だった。