「Don’t touch the blood!」(その血に触っちゃダメ!)
ある日、いつものように遊んでいると、3歳くらいの子が転んで、ケガをした。僕は当然手当てをしてあげようと、その子に近づく。するとその瞬間、別の女の子が突然大きな声で叫んだ。「Don’t touch the blood!(その血に触っちゃダメ!)」。
あまりにも突然の叫びに、僕はショックでその場に立ち尽くしてしまった。その子は、自分たちがHIVに感染していることも、血が感染源であることも自覚していたのだ。
このとき初めて、僕は子どもたちが抱えているものの大きさを知った。たとえ病気を発症しなかったとしても、外の世界を知ることも、まともな教育を受けることもないまま、社会から隔離されたこの施設で生きていかねばならない。子どもたちが明るく笑っているのは、心が強いから?
…僕には、どこか人生を諦めてしまっているからのように見えた。
せめて、自分の人生くらい精一杯生きるべきだ
僕は、いつ発症するかもわからない病気におびえるなんてこともなく、隔離もされず、両親に愛されて生きてきた。当たり前だと思っていたことが、当たり前ではない現実がここにあった。
日本に生まれただけで、親がいるだけで、病気じゃないだけで、それだけで好きなことをして生きていけるはずなのに。僕はいったい何をしてきたんだろう? 何を選んできたんだろう?
ボランティアの期間が終わり、施設を出ていくとき、思わず涙が出た。僕には、この子たちの運命を変えることなんてできない。でもせめて、自分の人生くらい精一杯生きるべきだと思った。
やりたいことを見つけるために、生きる意味を見つけるために、ただひたすらに旅を続けた。もっともっと知らない世界を知りたいという想いが強くなり、見知らぬ街や村を歩きまわり、小さな路地をさまよった。
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今回ご紹介した石井誠啓さんは、旅先で子供達出会ったことで、自分が日本人として日本で生まれてきた当たり前を再度感じることができ、その後の石井さんの人生に大きな影響をもたらしたそうです。
日本で生まれて日本で育った奇跡は日本にいると気づかないもの。旅はそんな貴重な体験もさせてくれます。
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