ライター

福島県出身で1990年生まれ。70カ国以上を旅するほどの旅好き。コロナ禍では国内を巡り、世界遺産検定マイスターに合格しNPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。IT系広告代理店で広告運用コンサルタントとして働きながら、小笠原諸島のアンバサダーとしての活動も行う。

私が旅好きになったのは、旅行好きだった母親が影響。幼少期から国内を中心に連れ回されており、必然的に私も旅好きになっていったので、もはや遺伝ともいえるかもしれない。

旅のスタイルは十人十色、その人のライフワークに合わせていろんなテーマで旅をしている人が多いけれども、私は「世界遺産巡り」をメインにしていることが多い。

無意識に惹かれていたのは、“世界遺産”だった

日本一の高さを誇る富士山、豪華絢爛な徳川家の霊廟の日光東照宮、壮大すぎるスケールに圧巻したアメリカのグランドキャニオンなど、母に連れられて訪れた地で印象に残っているのは「世界遺産」として登録されている場所だった。

日光の東照宮は都心からのアクセスがよく日帰りでも訪れることができる
これは大学の卒業論文のテーマ決めのときに気づいた。興味を持っていることや好きなことを論文のテーマにするよう言われていたので、大好きだった旅行の中でも、私は「世界遺産」について論文を書くことに決めた。

姫路城は1993年に日本で最初に登録された世界遺産のひとつだ
当時世界遺産の実態や課題について調べあげ、その際に得た知識や経験がのちの世界遺産検定最高峰のマイスター取得や認定講師への認定、世界遺産好きとして世界中を飛び回る旅人へとつながっていった。

その場所にしかない“物語”が、人を旅へ駆り立てる

世界遺産と旅は、親和性が高いと思っている。その理由は、世界遺産が単なる絶景や遺跡ではなく、人類の営みや地球の歩みを伝える「唯一無二の物語」を示している点にあるからだ。

見る者を圧倒する壮大な景観や、数百年もの時を超えて息づく文化の結晶は、「なぜ、どのようにして生まれたのか」という人々の知的好奇心を強く刺激し、一生に一度は訪れたいという強い願望を生み出している。

ペルーのマチュピチュは誰もが一度は訪れてみたいと思ったことがあるだろう
また、2026年4月現在で1,248件にのぼる世界遺産は、今もなお増え続けている。世界規模で価値が認められた「本物」が更新され続けることで、人々の関心は途絶えることなく、世界遺産は時代を超えて私たちを魅了する目的地であり続けていると私は考える。

ジンバブエとザンビアにまたがるヴィクトリアの滝は世界三大瀑布のひとつだ

人類共通の宝を、未来へつなぐということ

世界遺産という言葉から、多くの人は「圧倒的な絶景」や「豪華絢爛な建造物」といった、観光的価値を連想するかもしれない。しかし、その本質は表面的な美しさだけではなく、人種、文化、国籍といったあらゆる境界を超え、人類全体が共有すべき「かけがえのない宝物」であることに集約されている。

インドのタージ・マハルはTVや絶景本などで誰もが見たことあるだろう
これを専門的には「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」と呼び、地球の歴史や人類の文明が生んだ至宝を、国や人々の所有物としてではなく、地球全体の資産として未来へ守り伝えていくことを最大の目的としている。

つまり、世界遺産とは単なる過去の遺物ではなく、現代に生きる私たちが責任を持って次世代へ繋ぐべき、人類共通のアイデンティティそのものと言えるのだ。

“消費する旅”から“継承する旅”へ

私たちが世界遺産を観光するということは、単に有名な名所を巡るという消費的なレジャーに留まらず、人類が積み上げてきた壮大な歴史の物語に直接触れ、その価値を「継承するプロセス」に参画していると私は考える。

世界遺産の認定証(レプリカ)は観光地に飾られていることが多い
目の前に広がる遺産を実体験として刻むことは、教科書や画面越しでは得られない敬意や愛着を育み、その宝物をなぜ未来へ残すべきかという問いへの、自分なりの答えを見つけられるだろう。

小笠原諸島では外来種を持ち込まないため徹底した対策がされている
また、訪問することによって更に生み出される関心や経済的な支援は、遺産を守るための直接的な原動力となり、結果として「守るための観光」という循環を生み出す。

世界遺産を訪れることは、時を越えた価値のバトンを次世代へと繋ぐ、極めて創造的で責任ある文化活動に他ならないのだ。

世界遺産登録前の佐渡島。認知等で大きなメリットがあるため世界遺産登録を目指す観光地も多い

世界遺産を巡り、未来を紡ぐ旅人として

私にとっての旅は、母に連れられた幼少期の記憶から始まり、今では「世界遺産」という人類共通の至宝を深く探求するライフワークへと進化した。大学時代の研究や世界遺産検定マイスター取得を経て確信したのは、世界遺産を訪れるという行為は、単なる観光の枠を超えた「未来への投資」であるということなのだ。

メキシコのチチェン・イッツァはマヤ文明最大の都市遺跡だ
その地を訪れ、圧倒的な物語に触れて感動することは、単なる自己満足ではない。

そこで抱く敬意や関心こそが、遺産を守り抜くための力強いエネルギーとなり、次世代へバトンを繋ぐ「守るための観光」という循環を生み出している。

世界遺産は動植物などの生態系も登録基準となっている
また現在も増え続ける世界遺産は、私たちが守るべき価値が世界中にまだ溢れていることを示している。

これからも私は一人の旅人として、この「顕著な普遍的価値」を体感し、伝え続けていきたい。世界遺産を巡る旅とは、地球の過去を愛し、その未来を伝えていくための、終わりのない素晴らしい旅路なのだから。

All photos by Tamami Mizunoya

ライター

福島県出身で1990年生まれ。70カ国以上を旅するほどの旅好き。コロナ禍では国内を巡り、世界遺産検定マイスターに合格しNPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。IT系広告代理店で広告運用コンサルタントとして働きながら、小笠原諸島のアンバサダーとしての活動も行う。

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