こんにちは。週末キャンパーで料理好きの中野太夢(なかのたむ)といいます。
元々食べることが大好きで、これまで友人に手料理を振る舞ってきた回数は100回以上。最近はキャンプ場でいかに美味しい料理を作ることができるかを考えながら料理をしています。
今回は狩猟の追体験ができるオンラインサービス「わなんちゅ」のモニターとして岡山県美作市(みまさかし)にある上山という集落を訪れ、一泊二日の「里山暮らし体験」オフ会に参加してきました。この記事ではそのツアーの様子をレポートします。
ツアーの様子
わなんちゅとは
わなんちゅとは、スマホひとつで狩猟追体験ができるオンラインサービスです。
わなんちゅに登録すると、罠を仕掛ける際の注意点や、仕掛けた後の様子や、獲物の仕留め方といった狩猟に関するノウハウを学ぶことができ、また実際に捕獲したお肉を自宅まで送ってもらえるので、自宅で新鮮なジビエを味わうことができます。
ちなみに、みなさんは「ジビエ」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
ジビエとは、食材となる野生鳥獣肉を意味する言葉です。猪でも鹿でも熊でも、野生の鳥や獣の肉のことはすべて「ジビエ」と呼びます。
ツアーの様子
また、狩猟は食用だけでなく、畑を荒らす獣害被害や、自然環境を守るために過度に増えてしまった動物の生息数の調整のためにも行われています。捕獲した鹿や猪を有効活用することで、鳥獣被害対策や地域の活性化につながるそうです。
正直、僕も参加するまでは「ジビエ」という言葉すら正確には何を指しているのかも分からないような状態でしたが、「どうやって狩った肉を料理するんだろう」「そもそも狩猟って何をするの?体験したことない」とワクワクしながら参加しました。
人口160人の集落で過ごす、一泊二日の狩猟体験ツアー
今回訪れた岡山県美作市上山は、人口160人の小さな集落です。
かつては8,300枚の棚田が整然と広がっていましたが、高齢化によって手入れが行き届かず耕作放棄地が増えてしまい、以前の風景は失われつつあります。
しかし、里山のライフスタイルに惹かれて移住したメンバーが中心となり、2006年頃より集落再生に向けたさまざまな活動がスタート。今では160人の人口のうち3~4割が移住者であり、地域の方々と協力しながら町おこしに取り組んでいるそうです。
住民が立てた上山市の展望台から見える景色
「160人の集落で、住民の方はどんな生活をしているのんだろう?」「買い物はどうしているのかな?」「狩猟の体験を通して、普段食べているものの裏側を知れるかもしれない」…
そんなことを現地へと向かう車の中で考えていました。
【ツアー1日目】初対面の人たちとドキドキな調理体験を共に…!
参加者は全部で28名。参加者の多くは関西出身の方で、お子さんを連れたご家族からカップルまで幅広い層が参加していました。
狩猟への知識に関してもさまざまで、僕と同じようにジビエ料理に興味をもっているという初心者の方もいれば、狩猟免許を取得して将来的には狩猟をしたい!といった方も参加しています。
一同で集まると、早速オリエンテーションを受けます。
お話いただいたのは上山集落で暮らしており、今回の狩猟ツアーの企画者でもある梅谷さん。
通称、梅さん。今回のツアーを案内してくださります
梅さんは、2011年に上山集落に移住されました。
獣害被害が増えていたこの集落で、独学で狩猟を学び、ジビエの販売を始めたそうです。また、上山の棚田を有効活用しようと、蜂蜜やブルーベリー園の開拓などにも積極的に取り組まれています。
梅さんは、上山で狩猟と関わる魅力をこのように語ってくれました。
「上山は、暮らしを作っていけることが魅力的。育てたお米を食べてしまう鹿を捕らえるために罠を仕掛け、野生動物との知恵比べをする。人と動物が、生きるためのせめぎ合いをすることで『生』を実感できるのが、この土地のおもしろいところです。」
初体験の連続。実際に鹿を捌いてみる!
オリエンテーションが終わると、生肉加工場に移動しました。なんとこの加工場、梅さんがDIYで作られたのだとか。
加工場に行くと、既に鹿が下処理された状態で吊るされています。なかなか迫力のあるビジュアル……!この状態からどうやって捌いていくのだろう?と参加者は興味深々です。
まずはみんなで臭いをチェックしました。ぶら下がっている上部(後脚)はまったく血生臭さがありませんが、下部(頭)は吊るして血が溜まっている分、少し臭いが残っています。
罠にかかった後に暴れて背中を打ったりしていると肉の状態が悪くなってしまうため、捕獲後はできるだけ獲物が暴れないように加工場に運び、急いで内臓を処理するそうです。ツアー参加者も、肉を切り分けていく体験をさせてもらいました!
お肉は筋肉の塊の集合体なので、その境目を引っ張りながら捌いていくことがコツなのだとか。
参加者みんなでお肉を切り分けていくと、だんだんと普段見慣れている姿になってきました。
解体された後のジビエがこちら
解体された鹿は肉の部分以外も利用します。剥いだ皮で革製品を作るなど命を余すことなく活用していると梅さんはお話してくれました。
実は1頭の獲物を解体するには、最低でも2日ほどかかるそうです。今回のような体験をする機会はほとんどありませんが、解体だけでそんなにも時間がかかるのかと、無駄なく活用して命をいただくことへの感謝の気持ちが自然と募ります。
大芦高原温泉雲海で癒しのひとときを過ごす
解体の体験後は、加工場から車で5分ほどのところにある大芦高原温泉 雲海へ。
地下1,500mから汲み上げたトロトロの泉質の温泉です。温泉内の写真はありませんが、集落全体を見渡せる眺望の露天風呂やサウナもついており、疲れた身体を癒しました。
ジビエを使った豪華夕飯の数々に舌鼓!『囲炉裏のお宿 zen』
温泉を満喫した後は、「囲炉裏のお宿 zen」に集合して懇親会。
こちらの宿は元々上山に住んでいた方の一軒家をリフォームして、宿として改装された場所。名前の通り立派な囲炉裏がついており、かつて古民家だった温かさを感じます。
炭でじんわり灯る光に、心も安らぎます。
みんなが揃ったところで、いざ乾杯!!
梅さんを初めとする住人の方々が、たくさんの御馳走を用意してくださいました。
猪のしぐれ煮
穴熊の焼肉
鹿肉のサラミ
鹿肉のロースト~柿とポン酢のソース~
ジビエ肉を活用した料理は、どれも逸品。とくに鹿肉のローストはさっぱりとした味わいの中でもお肉の旨味があり、個人的には「ローストビーフよりも癖がなく食べやすいな」と感動しました!こんなにもジビエ料理のレパートリーがあることにもびっくりです。
【ツアー二日目】自分自身が罠にかかって狩猟の現場を楽しく学ぶ!
二日目。朝食を食べた後は、狩猟用の罠の見学に行きました。まずは獲物を罠でどのようにして捕まえるかを体験します!罠を踏むと、ワイヤーが瞬時に動物の足首を括る仕組みです。今回は安全のために軍手を装着し、くくり罠にパンチして捕らえられる体験をします。
一瞬で手首にワイヤーが括られ、自力で外すことはできないほどの強度になりました。
違う形状の罠でも、しっかりとホールドされていることが分かります
いよいよ、実際に設置されている罠を見学しにいきます。
梅さんが見せてくれたのは檻罠。檻を設置し、檻の中に動物が入るとシャッターが閉まる仕組みだそうです。罠を設置しているポイントを回りながら、設置する注意点などを細かく教えてくれます。
檻罠の様子はモニターで見ることができます。参加者も興味津々!
檻に入ってからシャッターが落ち、動物として捕獲される瞬間も実際に体験させてくださいました。
ちなみに、狩猟には銃を使う場合もあります。しかしそれはかなり難しく、仕留める際にはお腹以外に命中させる必要があるのだとか。腹部だと内臓を傷つけ、ひどく臭う可能性があるからだそうです。新しい知識の連続に、参加者からも「へぇ〜」「なるほど」と感嘆の声が聞こえてきました。
展望台は住民の手作り!?
最後に、檻罠が設置されていた近くにある展望台へとやってきました。こちらの展望台は、集落にかつて住んでいた善一さんという方が建てたものだそうです。
4階分の螺旋階段をあがった最上階には、集落を一望できる展望台スペースがあります。
展望台の入口には、善一さんの表札もありました。
早朝のコンディションが良い時は、ここから雲海も見渡せるそうです。
善一さんにお会いしたことはないのですが、どこか温もりを感じる特別なスポットでした。ちなみに、昨夜夕飯をいただいた「囲炉裏のお宿ZEN」も善一さんの家をリフォームして作られています。
最後にみんなで記念撮影をして終了!はじめましての人がほとんどでしたが、狩猟やジビエ、また田舎生活に興味がある方々との交流はとても有意義な時間でした。
梅さんが試行錯誤しながら捕獲し、参加者で解体したジビエ。
夕飯でいただいた、上山で作られたお米やじゃがいもなどの野菜。
スーパーに行けば商品が並べられていて、なんでも手に入ってしまう現代。僕は今まで、普段口にしている食品がどこからきているのか?どのようにして加工されているのか考えることは中々ありませんでした。
しかし、「自分で捕獲し、捌いて、いただく」といった今回の体験は「命をいただく」ことについて深く考えるきっかけを作ってくれました。
今回は体験できませんでしたが、夏の時期などは農業や稲作など、狩猟以外の体験もできるそうです。参加者の中にはすでに10回以上上山集落を訪れている方もいらっしゃいました!僕自身も集落の方々と交流し、自然の景色や生活をもっと体験したくなりました。また違う季節に訪れてみたいです。