「一緒にインド行かない?」
母のひと言で、大人になってからの初海外はインドに決まりました。
今回訪れた南インドにあるベンガルールは、インドのなかでも比較的、人も気候も穏やかと言われています。仕事で滞在していた人いわく“インドらしくない”という都市は、近代化とカオスの両方を感じる場所でした。
2025年1月、ベンガルールを歩いた親子の数日間を振り返ります。
南インドに位置するベンガルール。空港から中心地までは1時間以上かかる道のりです。
見出し
空港から市内へ。いきなり受けたインドの洗礼
飛行機の窓から見るベンガルールは、赤っぽい大地が広がっています
ベンガルールまでは、シンガポールのチャンギ空港で乗り換えをして向かいます。着陸前の窓からの景色に「違う国に来たのだな」という実感がヒシヒシと湧いてきました。
公営バスで起きた、まさかの「お釣り事件」
市内に向かうバス車内からの景色と、道沿いに停められたバイク
お昼過ぎに到着したベンガルールのケンペゴウダ国際空港。外に出ると少し乾燥した空気に、薄手の長袖1枚でちょうどいいくらいの暖かさです。市内を目指してマジェスティック行きの公営バスに乗り込みます。
運賃は車内で車掌さんに払うシステムです。「2人で580ルピー」と言われ、手元にあったお札で合計800ルピーを支払いました。すぐにお釣りを返してくれたのですが、20ルピー札1枚しか返してくれません。
……ん?
小型の機械で出したレシートも渡してくれたので、料金を確認するも、バス料金は580ルピー、お釣りは220ルピーと書かれています。
どう考えても、200ルピー足りない。
ジェスチャーで車窓さんに訴えるも、「あ、バレた?」と言いたげなニヤッとした笑いを返されるのみ。あまりの衝撃に、2人してとっさに言葉が出てきません。
あとで知ったのですが、インドではよくあることらしい。次からは絶対に、お釣りのいらない小銭を死守してバスに乗るか、「お釣りが違う」と断固として抗議できる精神を持っていこうと思います。
バスに乗っている際は茫然としていた私も母も、「これは話のネタにするしかない!」とインドの洗礼を受け入れたのでした。
人、車、バイクの波。クラクションの合唱と勇気を出して渡る道路
インド各地へ行けるマジェスティック・バスステーション
空港から市内のバスステーションまでは、約1時間。市内に近づくほど道が混んできます。
街中に入ると、バイク、車、バスが入り乱れて、「パー、パー」とクラクションの大合唱が鳴りやみません。私たちの乗っているバスも、バス停に停まりはするものの、人が乗り込んだら扉も締めずにすぐ発進。車の列に無理やり割り込みながら進んでいきます。
バスステーションに到着したあとは、予約したホテルを目指し歩いていくのですが、人やバイクの多さが半端ありません。信号のある道路もありますが、車が停まってくれないので意味がない。周りの人たちが渡るタイミングで、私たちも意を決して渡っていきます。
ホテルにチェックインして部屋についた頃には、騒音と移動疲れでぐったり。前日、空港泊をしていたのもあり、ひとまずたどり着けて一安心したのでした。
南インドの伝統料理「ミールス」に胃袋が悲鳴をあげる
ミールスセットは全部で150ルピー
夕食は、大通りに面したお店で南インドの伝統料理である「ミールス」を注文しました。銀色のプレートに乗った料理を奥のセルフサービスカウンターで受け取り、スパイスの味を楽しみます。
その味は想像以上にパンチがありました。辛い、しょっぱい、甘いがストレートで胃を殴られている気分です。隣にいる母も、最初はパクパクと食べていましたが「全部食べるのはきついね」と、スピードが遅くなっていきます……。
おかげでミールスを食べた数日後、無事にお腹を壊しました。お腹の弱い人は胃薬を持っていくと安心です。
IT都市の裏表。ハイテクとカオスが混ざり合う街
ガラス張りのビルもあれば、露店がならぶ地域もあるベンガルール
同じベンガルールの街中なのに、数駅移動するとまったく違う景色が広がっています。スーツを来た人とすれ違うエリアもあれば、現地の人だけがいる露店エリアもあるのが不思議です。
日本の技術に感動!驚くほどクリーンな地下鉄
Nadaprabhu Kempegowda station, Majestic駅の構内は人でいっぱい
翌日は、昨日バスを降りた巨大ターミナルから地下鉄に乗ってみました。
地下鉄構内のエスカレーターを降りていくと、9時前という時間帯のせいか混雑しています。JICA(国際協力機構)の協力で建設された地下鉄の車内は、とても綺麗です。男女きっちりと分かれて乗車した車内には、スマホをいじる学生さんや、鮮やかなドレスで着飾った女性など、日本の地下鉄に乗っている気分になりました。
巨木が突き抜ける歩道とおしゃれな学生街
マハトマ・ガンジー・ロード駅の駅舎と周辺の様子
降り立ったマハトマ・ガンジー・ロード駅は、駅前にはスタバがあり、カラフルな駅舎の周辺を多くの学生たちが歩いています。
日本と大きく違うのは、歩道を塞ぐほどダイナミックに生い茂る街路樹。その根元では野良犬がお昼寝をしていて、誰かがご飯をあげた形跡もありました。ビルが立ち並ぶ一方で、生き物たちが自然と街に溶け込んでいる風景が新鮮です。
近くの公園では、小学生に「今、何時?」と英語で話しかけられる場面も。しつこい勧誘もなく、南国の木々の間をのんびり歩きながら「風景は違っても、流れている時間は日本と同じなんだな」とホッとしたひとときでした。
ベンガルール最大の卸売市場「KRマーケット」へ
KRマーケットの建物の地下にある花市場
夕暮れ時、古い街並みが残るチクペット地区へ向かいます。目的は、インドらしい市場が見られるという「KRマーケット」です。
向かう途中には秋葉原ような電気街がありました。壁のスイッチだけを売る店やファンの羽だけの店がキラキラと輝き、不思議な品揃えに思わず進む足も遅くなるほど。さらに進むと、突如として人込みのなかに道端のゴミを食べる牛が現れ、大型トラックが道ギリギリを通り抜けていきます。
KRマーケットの道沿いでゴミを食べる牛たち
たどり着いたマーケットの建物は、鉄骨がむき出しの場所や、階段が崩れかけているところもありボロボロです。恐るおそる足を踏み入れると、スパイスの刺激や野菜が腐ったような匂いが鼻につきます。
地下には赤やオレンジの色鮮やかな花市場が広がっていました。人も動物も、きれいに積まれた野菜やゴミが散らかる通路も、すべてが混ざり合ったまま、そこにありました。
細長い形が指のように見えるので、フィンガーグレープ
散策の最後には、屋台で見つけた細長いブドウ「フィンガーグレープ」を購入。皮ごと食べられる甘い果物に、疲れた胃が癒されたのでした。
初めてのインドが「ベンガルール」でよかった
学生街近くの交差点
整いすぎた都市でもなく、カオスだらけでもないベンガルール。
ガラス張りのビルから一駅離れると、牛や犬が道端で寝転び、市場ではゴミが散乱する通路のすぐ横に、花や食料品が並んでいる。そんな真逆の風景が、あたりまえのように共存している街です。
不安も驚きもあるけれど、「次はどこを歩こうか」と考えている自分がいました。
もし少しでもインドが気になっているなら、最初のインドは、きっとベンガルールがちょうどいい。
All photos by Kuon Kanayama