竹芝から大型客船で約6時間半の船旅。朝の5時前、船内のアナウンスで目を覚ますと、いつの間にか伊ヶ谷港が近づいていました。まだ夢うつつのまま船を降りると、そこには火山の力強いエネルギーに満ちた「三宅島」がありました。
噴火の痕跡をたどるトレッキングや、森に生息する野鳥の観察、陸上からのホエールウォッチング。その一瞬と出会うために心を研ぎ澄ませ、都心では味わえない五感の体験を重ねていく旅へ。今、踏み出します。
見出し
噴火の痕跡をたどる、ひょうたん山・火山体験遊歩道
三宅島は、伊豆諸島の中でも火山活動が活発な島として知られており、1085年の有史以来15回の噴火の記録が残っています
島の大地に今でも刻まれている噴火の痕跡を、三宅島自然ガイドツアー「earth wind &」の菊地さんとたどってきました。菊地さんは1999年に島の野生イルカのガイドとして働きはじめ、2000年噴火での全島避難が解除されたあと、2007年に本格的に移住し、自然ガイドの活動を続けています。
今回のツアーでは、火山トレッキングをはじめ、バードウォッチングやホエールウォッチングなど、三宅島ならではの自然を堪能できるスポットを案内していただきます。

1940年には、三宅島の中央にそびえ立つ「雄山」北東山腹の標高200m付近から、割れ目噴火が起こりました。その際に形成されたのが「ひょうたん山」です。一夜にして生まれたこの山には、黒々とした溶岩や荒々しい地形がそのまま残り、噴火直後の大地の姿を今も感じることができます。

火山噴出物「スコリア」を踏みしめながら登っていくと、直径約100mの火口と海を同時に望むことができます。噴火当時、特に高温となった火口付近の地面は、酸化によって赤く染まっており、噴火のエネルギーの強さを感じさせます。

1983年の噴火では、人的被害はなかったものの、阿古地区の一部が溶岩に完全に飲み込まれるほどの大きな被害を受けました。東京ドーム約16個分の溶岩が海に向かって流れ出たそうです。
溶岩流によって埋まった旧阿古小・中学校のグラウンドの上につくられたのが「火山体験遊歩道」です。被害が甚大だったからこそ、その爪痕をあえて残し、災害の実態を学べる場として活かしていこうと、2007年に遊歩道として整備されました。

噴火の痕跡は、今もなおはっきりと残っています。しかしそこには、たしかに再生しつつある草花の姿もあります。芽吹き、壊れ、また生まれ変わる。そんな自然が生み出す大きな循環の中に、私たちは生きており、人の営みは変わりゆく自然とともにあるのだと実感させられる場所でした。

・名称:ひょうたん山
・住所:東京都三宅村坪田
・地図:・名称:火山体験遊歩道
・住所:東京都三宅島三宅村阿古224
・地図:
・公式サイトURL:https://www.miyakejima.gr.jp/see/kazantaikenyuhodou/
静かな森の中で、野鳥の声に耳を傾けて

三宅島の中央に位置する「大路池」は、伊豆諸島最大の淡水池です。さまざまな種類の野鳥が訪れるバードウォッチングの名所で、日本の野鳥の約4割がこの地で観察できるのだとか。たび重なる噴火の影響で、鳥の天敵・蛇がいないことや、温暖な気候で餌となる虫が豊富なことが、その要因と言われています。
春先にかけては運が良ければ、三宅島のシンボルである天然記念物・アカコッコの姿を観察できることもあります。

オレンジ色の体が印象的なこの鳥は、絶滅危惧Ⅱ類に指定されている「タネコマドリ」のオスです。ガイドの菊地さんに「そーっと近づいて……」とアドバイスいただき、飛び立つ前の一瞬をとらえることができました!
池を囲む森の中を歩いていくと、「ピィーヨ、ピィーヨ」とヒヨドリの鳴き声が聞こえてきます。三宅島では、ヒヨドリが渡ってくるような穏やかな天候のことを「ヒヨドリ凪」と呼ぶそうです。柔らかな風が心地良く、澄み切った空気が印象的なこの日はまさに、ヒヨドリ凪でした。
国の天然記念物にも指定されている渡り鳥「ヒシクイ」
三宅島では春から初夏にかけてバードウォッチングのハイシーズンとなりますが、湖畔に渡ってくる水鳥を多く観察できるのは、冬ならではの楽しみ方です。
別の島で目撃された水鳥が大路池で見られるなど、さまざまな地域からやってきた鳥たちとの出会いも見どころの一つ。次はどこへ向かって飛んでいくのでしょうか。

大路池のほとりにある「アカコッコ館」では、展示を通して、島の自然や野鳥の生態を学ぶことができます。館内には双眼鏡やフィールドスコープを使った野鳥観察コーナーも併設。
先ほど写真に収めた鳥たちの名前を教えてくれたのは、ここアカコッコ館に常駐する、「日本野鳥の会」のレンジャーさんです。島の自然について詳しく知りたい方は、お話してみてください。
・名称:三宅島自然ふれあいセンター・アカコッコ館/大路池
・住所:東京都三宅島三宅村坪田4188
・地図:
・アカコッコ館 営業時間:9:00~16:30
・アカコッコ館 定休日:月曜日
・アカコッコ館 電話番号:04994-6-0410
・入館料:200円
※中学生以下、65歳以上は無料、15名以上の団体は1人160円
※障がい者手帳をお持ちの方は100円、障がい者手帳をお持ちの方1名につき、付き添いの方1名が無料
※酉(鳥)の日は無料開館日(詳細は公式サイトよりご確認ください)
・公式サイトURL: https://miyake1993.wixsite.com/akakokko
磯の香りが広がる、島のご馳走ラーメン

阿古漁港船客待合所(ここぽーと)の2階に位置する、島で評判のラーメン屋「麺処おあな」へ。私は、名物である「島海苔ラーメン」をいただきました。

島の豊かな海で育った金目鯛をじっくり丁寧に炊き出した醤油ベースのラーメンで、三宅島産の海苔がたっぷりと入っています。すっきりとした味わいの中に、海苔の風味がふわっと広がる、まさに海を感じる一品です。

店の外に出ると、錆ヶ浜港の灯台と「三本岳(大野原島)」が見えました。
海風に当たりながら食後の余韻に浸り、のんびりと水平線の先を眺める。そんな“島時間”を感じるひと時となりました。
・名称:麺処おあな
・住所:東京都三宅村阿古672−3 観光協会 2階
・地図:
・営業時間:11:00〜15:30
・定休日:なし
・電話番号:070-8433-1853
・公式サイトURL:https://mendokorooana.hp.peraichi.com/
長旅の途中のクジラたちにご挨拶!
三宅島でクジラが頻繁に観察されるようになったのは、2018年頃のことです。以来、毎年10月下旬〜4月頃にかけて「ザトウクジラ」を陸上から眺めることができるようになりました。今回は、ここ最近目撃情報が多い島北西部、ヘリポートと伊豆岬灯台を中心に、クジラの姿を探します。

クジラは約15分に1度、息継ぎをしに水面に上がってくるのです。その際の目印が「ブロー」と呼ばれる霧状の噴気。穏やかな波をじっと眺めていると……。

出てきてくれました!クジラの親子です。

水面から大きく体を飛び出しジャンプまで!ほぼ毎日海を眺めている菊地さんでも、年に数回見られるかどうかの稀有なシーンだそうです。そんな貴重な瞬間を目撃できるなんて……思いがけず、目頭が熱くなりました。
しばらくすると、尾びれを高く上げて海深くへと潜っていきました。これから南へ向かって泳いでいくクジラを追いかけて、私たちも島西部へと向かいます。

伊豆岬灯台から車で南へ約15分、今崎海岸でも、ブローを上げる様子が陸からかなり近い位置で見られました。先ほどと同じクジラです。

ザトウクジラは島のはるか北からやってきて、これから小笠原・奄美大島などの暖かい海を目指して南下していきます。そんな壮大な長旅の疲れを癒すために、ここ三宅島に立ち寄ってくれたのかもしれません。
・名称:earth wind &
・今回のツアー内容:火山トレッキング、バードウォッチング、ホエールウォッチング
・ツアー料金:5000円~
・問い合わせ先:mail@ewa-miyakejima.com
・公式サイト: https://www.ewa-miyakejima.com/
・観光協会詳細情報: https://www.miyakejima.gr.jp/play/whalewatching/
リゾート気分で、三宅島の旬を味わうレストラン

海のすぐそばに佇む「Terrace cafe Restaurant GIZMO」では、三宅島産の食材を使った創作料理を楽しめます。ランチタイムはテイクアウトのみ可能で、リゾート気分を味わえるテラス席や芝生の上で海を眺めながらのんびりとした時間を過ごせます。

コクと深みを感じるチキンカレーは、ピリッとした辛さが癖になる味わい。とはいえ、後を引く辛さではないため、辛いものがそこまで得意ではない私でも、最後までおいしく食べられました。
カレーとあわせていただいたのは「パッションコーラ」。パッションフルーツの果肉が詰まった、南国感満載のGIZMO特製コーラです。

ふわっふわの卵がかかったオムライスは、ランチタイムの人気メニュー。トマトの酸味がアクセントとなった濃厚なデミグラスソースがポイントで、食べ応え抜群の一品です。

店内では、島のクリエイターがつくった「三宅島アカコッコのけじまるくん」キーホルダーのカプセルトイが販売されていました。「パッションフルーツ」や「島レモン」などの島食材とのコラボレーションがとてもキュートで、全種類集めたくなります!

・名称:Terrace cafe Restaurant GIZMO
・住所:東京都三宅島三宅村坪田2891
・地図:
・営業時間:ランチ/12:00~14:00 (テイクアウトのみ)、ディナー/18:00~22:00
・定休日:月曜日、火曜日※祝日の場合は翌日振替
・電話番号:04994-8-5853
・公式SNS: https://www.instagram.com/gizmo_cafe_restaurant/
コーヒー好きの店主が営む、アットホームなカフェ
最後は、アットホームな空間が魅力の「マルアサカフェ」へ。同じ敷地内でランドリーと学習塾を営む島のお母さんが出迎えてくれました。

今回は日替わりの「鶏塩出汁の野菜スープ」と、お店で焼いたチョコクロワッサンをいただきました。どちらもホッとする優しい味わいで、旅の疲れを癒してくれます。
オーナーはもともとコーヒーが大好きで、島でもおいしいコーヒーを飲んでほしいと、三宅島の硬水に対応したヨーロッパ製のコーヒーメーカーを取り入れたのだとか。三宅島で挽きたての本格コーヒーを味わいたい方は訪れてみてください。

店内では、島内の社会福祉法人三宅島社会福祉協議会でつくられた作品も販売しています。。三宅島のお土産に、ぜひいかがでしょうか。

タイミングが合えば、島の特産品・明日葉を使った「マルアサシェイク」や「マルアサバーガー」など、島らしさを堪能できるメニューをいただけます。
・名称:マルアサカフェ
・住所:東京都三宅島三宅村神着1119-1
・地図:
・営業時間:7時~21時※水曜日は17時まで
・定休日:月曜日、木曜日
・電話番号:04994-8-5880
・公式SNS: https://www.instagram.com/laundry_asanuma/
五感に刻まれた、三宅島の記憶

噴火の記憶を刻む大地と、そこに息づく生命の力強さを感じられる三宅島。火山の迫力、森の静けさ、海の雄大さ──それぞれが重なり合い、島全体がひとつの壮大な自然の舞台のようでした。

地球のスケールの大きさを実感するとともに、自然と人がともに生きる尊さを感じた今回の旅。調布飛行場からは飛行機で約50分、大型客船なら寝ている間に来られる島。都会の喧騒を離れ、大地のエネルギーを感じたい方はぜひ三宅島を訪れてみてください。

All photos by Mizumoto Kotoko
