オーストラリア
ライター
デレック ベインズ オーストラリア政府観光局 日本局長

2020年4月にオーストラリア政府観光局の日本局長として着任。州政府観光局と共に、観光やビジネスイベントを目的としたオーストラリアへの渡航需要を高めるため、日本市場でのマーケティング活動を統括している。ブリスベンのグリフィス大学でアジア研究を専攻、さらに、シドニー工科大学では執筆について学び、日本とオーストラリアを舞台にした詩集2巻と小説1冊を出版するほどの親日家。

私(デレック ベインズ)の母国であるオーストラリアの旅の醍醐味とは、様々な体験を五感で堪能し、旅行後も記憶に色濃く残るような思い出を作ることです。

新型コロナウイルスの影響で、オーストラリア旅行にまだ行けない今、日本に居ながらして五感で堪能するオーストラリア旅の楽しみ方をご紹介します。

Start Happy with Vegemite

ベジマイト
Photo by デレック ベインズ

まずは、味覚のオーストラリア旅から。

この頃の日本では、政治に関する複雑な話ばかりですが、オーストラリアにある派閥は「ベジマイト派」と「反ベジマイト派」の2つのみであることはご存知でしたか?

「ベジマイト」とは、トーストなどに塗るイーストスプレッドのことですが、「イーストスプレッド」を定義するためには、まずビールの話から始めなくてはなりません。

ビール大国としても知られるオーストラリアには、300種類以上のクラフトビールがあり、毎年16億リットルが生産されています。

ベジマイトは、ビール醸造の副産物から作られていて、その原料はイースト菌抽出物や塩です。科学的な説明ではベジマイトの美味しさは伝わりづらいかもしれませんが、ビールと関係しているので、おいしいに違いないことは、おわりいただけるでしょう。今流行りの「アルコールゼロ」であり、ビタミンB郡にも非常に富んでいます。

ベジマイトはバターと一緒にトーストに塗るのが、最高に美味しい食べ方だと思いますが、その味の説明となるとじつに難しいのです。もし一度も食べたことがないという方には、いつか是非お試しいただきたいオージーフードの1つですが、まったく甘くなく、少し苦味があるのがベジマイトの特徴ですので、覚えておいてくださいね。

First Fruits Specialty Coffee
Photo by デレック ベインズ

そんなベジマイトを食べられるお店が、東京都港区白金1丁目にある「First Fruits Specialty Coffee」です。

ここでは、オーストラリアのゴールド・コースト出身のバリスタであるミッチ・カー(Mitch Kerr)さんが、絶品フラットホワイトコーヒーやカフェラテを淹れてくれます。

First Fruits Specialty Coffee
Photo by デレック ベインズ

行くたびに「本日もベジマイトトーストセットですか」ときかれると、まるでオーストラリアのカフェに来たかのような気分を味わえます。

オーストラリアでよく言われるのが、「子供の頃からベジマイトを食べ始めない限り、好きになれない人が多い」ということ。我が家はベジマイト派だったので、小さい頃から私がベジマイトを食べない日はありませんでした。オーストラリアでは誰でも知っているベジマイトの謳い文句「Start Happy with Vegemite」が、我が家の毎朝そのものだったのです。

実家を離れても、自分で毎日の朝食用ベジマイトを購入し始めるということは、選挙に投票できる年齢になり、必ずいつも同じ政党に投票するのと同じこと。

私は、間違いなく生涯ベジマイト派でいるでしょう。ベジマイトに対する忠誠を守ることを誓います!

ノスタルジックなワトルの香り

Photo by Tourism Australia
味覚の次は、嗅覚のオーストラリア旅のため、東京から広島に舞台を移しましょう。戦前、広島大学のキャンパスに植えられたオーストラリア国花ワトル(アカシアの木)は、戦後、一番最初に咲いた花なのだそう。ワトルの花は、はちみつをイメージさせるとても甘い香りがします。

たった1本の木が成長し、それがきっかけでオーストラリアと日本の間に特別な縁が続いています。毎年、春には、広島の「アカシアの花を愛する会」から1,000枚のワトル色(黄色)のリボンがキャンベラのオーストラリア国立植物園に贈られます。国立植物公園の訪問者は、1枚のリボンをとって自分のジャケットに付けることができ、リボンには次のようなメッセージが書いてあります。

“To wish you a happy life with fulfilled dreams. When a wattle starts to bloom, make a wish and your wish will come true.(あなたが、夢を叶えて幸せな人生を送れますように。ワトルが花を咲かせ始めたら願い事をしてください。きっと願いが叶います。)”

昨年、オーストラリア政府と日本政府共同で、ワトルの種を国際宇宙ステーションに打ち上げるという科学的実験が行われました。今年、その種は地球に戻され、オーストラリアの様々な学校で植えられました。一体、宇宙旅行を経験しているワトルはどう変化しているのか、ワトルの香りがさらによくなったりしているのか、誰もがその成長を楽しみにしています。

オーストラリア、クイーンズランド州ブリスベンにある私の母校・グリフィス大学には、森の中に建てられたキャンパスがあり、そこはワトルの香りでいっぱいだったことが思い出されます。嗅覚の記憶は、とても力強いもので、ノスタルジックな気持ちになります。開花の季節は日本と逆ですが、私にとってワトルの香りは日本の金木犀に相当するように思います。

現在は、日本の各地でワトルが見られるようになりました。Cootamundra Wattle 「ギンヨウアカシア」は東京の代々木公園のオリーブ広場に植えられています。瀬戸内海の大久野島にもあるそうです。先日、北鎌倉のお寺を訪れた際には、同行した友人が偶然、近辺の庭でワトルの木を見かけたこともありました。ほかにもワトルの居場所をご存知の方がいましたら教えてください。

Photo by Tourism Australia
またオーストラリア固有の植物として、ユーカリも有名ですが、広島城の庭園には、戦前に植えられたオーストラリアのユーカリの木が現在も残っています。広島でユーカリの葉を食べるコアラの姿を見ることはできませんが、ぜひその爽快な香りを胸いっぱいに吸い込んで、オーストラリアを感じてもらいたいです。

オススメのオージーアーティスト

オーストラリアPhoto by Pixta

次は、聴覚のオーストラリア旅として、オーストラリア英語の発音の練習はいかがでしょうか。

「今日」を意味する「today(トゥデイ)」の発音が人によって 「亡くなる」を意味する「トゥダイ(to die)」に似たような発音に聞こえるかもしれません。これは、ちょっと笑えるオーストラリア英語訛りの代表的な冗談の1つですが、実際に会話中に「今日」を「亡くなる」と間違えることは、ほぼないでしょう。

ただ不思議なことで、オーストラリア人が歌を歌う時は、その独特の訛りがほとんど無くなるように思うのは、私だけでしょうか。また、他の言語でもそういうことはよくあることなのか知りたいものです。

オーストラリア出身歌手で音楽家であるサラ・オレイン(Sarah Àlainn)さんは、日本とオーストラリアの文化の架け橋としてオーストラリア音楽を日本の皆様に紹介する活動をしています。

イタリア語も話せるサラさんですが、オージー英語や日本語で歌う繊細で優雅な歌声は、オーストラリアでも人気が高く、日本でも有名なオージーアーティストのひとり。サラさんの楽曲は、日本の音楽配信サービスなどで聴くことができます。

味覚・臭覚・聴覚を通したオージーフィーリングを

Photo by Tourism Australia
ワトルやユーカリの香りを嗅ぎに行き、美味しいオージースタイルの朝食を食べたり、サラさんのアメージングな声に酔いしれたり……。オーストラリアの国境が再開するまで、Tabippo.net読者の皆さんが、日本国内でも味覚、臭覚、聴覚を通してオージーフィーリングを少しでも体験してもらえたら嬉しいです。

しかし、残念なことに視覚と触覚を実際に経験できるのは、オーストラリア現地でのみ。

オーストラリアの砂浜での真っ赤な夕焼け、グレート・バリア・リーフでのシュノーケリングなどは、旅行が再開されるまで、楽しみにとっておきましょう。

詳しいオーストラリア旅についての情報は、コチラから!

Top photo by Tourism Australia

デレック ベインズ氏の寄稿記事一覧

オーストラリア旅行
・「日本人の愛すべきセカンドホーム・オーストラリアの旅へ」記事はこちら
・「美食大陸オーストラリアでトライしてほしい食体験」記事はこちら
・「Welcome Back To Australia!待望のオーストラリア渡航再開!旅行やワーホリ計画をしませんか?」記事はこちら

ライター
デレック ベインズ オーストラリア政府観光局 日本局長

2020年4月にオーストラリア政府観光局の日本局長として着任。州政府観光局と共に、観光やビジネスイベントを目的としたオーストラリアへの渡航需要を高めるため、日本市場でのマーケティング活動を統括している。ブリスベンのグリフィス大学でアジア研究を専攻、さらに、シドニー工科大学では執筆について学び、日本とオーストラリアを舞台にした詩集2巻と小説1冊を出版するほどの親日家。

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