知る人ぞ知るフェロー諸島。手つかずの自然が残る絶景はどれも唯一無二で、世界中を巡り尽くした旅人の感性をも刺激する特別な冒険ができる場所です。
また絶対戻って来たい、そう思わされる魅力ある場所に出会えたことをとても幸せに感じます。旅先での感情をそのまま思い出しながら写真と一緒に振り返ります。
今回は、フェロー諸島出身の友人の帰省に同行させてもらい、8日間滞在しました。
8日間あってもまだまだ時間が足りないくらい見どころ満載のフェロー諸島。
親戚の集まりに参加したり、雨の日はお家でのんびりしたりと、その土地で暮らすような過ごし方をしたからこそ感じた魅力もつづります。
Part2|フェロー諸島の旅 Part2 -家族と過ごす、北欧流のシンプルな幸せのかたち-
見出し
人口わずか5万人、霧が似合う穏やかな島国
フェロー諸島はデンマークの自治領です。地図で見るとデンマークからはかなり離れていて、地理的にはアイスランドとノルウェーとイギリスのちょうど中間に浮かんでいる島国です。
面積は約1,400㎢と日本で一番小さい都道府県である香川県よりも小さく、人口はわずか5万人と東京ドーム1つに島民全員が収まってしまう少なさです。
ちなみに羊は7万頭と人間の数を上回っているので、島ではたくさんの羊を見ることができます。
雄大な自然を背景に草を食べる羊たちがかわいい
公用語はフェロー語。デンマークの自治領ですが、デンマーク語とはまた違った発音や文法をもつ言語です。
私はワーホリビザを使ってデンマークに1年ほど暮らしていたので、その時に仲良くなったフェロー諸島出身の友人に、夏の帰省に連れていってもらうことになりました。
天気はほとんど曇りか雨で、ぴかーっと晴れる日は珍しいそう。霧が発生する日も多く、霧の中にぼんやりと浮かぶ緑の鮮やかさもフェロー諸島らしさのひとつ。
気温は一年中を通して大きな変化がないものの、夏でも平均気温は11度と東京の秋冬並みの寒さです。おまけに周りを遮るものがなにもない島国なので風がとても強く、冷たい風が吹くと体感気温がぐっと0度近くまで下がります。
おすすめの服装は冬用のアウトドア装備。1日の中でも天気の変化が激しく、晴天の後に急な土砂降りも日常茶飯事なので、常に雨風を防げるウォータープルーフの服装をおすすめします。
ただ太陽が出ると陽射しが強く急に暑くなるので、レインコートの下に重ね着をしましょう。
ゴツゴツした岩肌もひょいひょいと進む羊
スカンジナヴィア航空(SAS)でコペンハーゲン空港からフェロー諸島のヴォーアル空港へ
フェロー諸島への直行便が出ているのは、デンマークのコペンハーゲンやノルウェーのベルゲン、フランスのパリなどいくつかの都市に限られます。
私はコペンハーゲンからの便を利用しました。
ちなみにコペンハーゲンから少し離れた町ヒルツハルス(Hirtshals)からはフェリーが出ているのですが、片道約30時間以上の長旅。のんびり船旅も楽しそうと思ったのですが、波が荒い時には船に慣れている地元民にとっても過酷な移動になるとのことで無難に飛行機を選びました。
フェリーはSMYRIL LINEという会社が運営しており、デンマーク・フェロー諸島・そしてアイスランドを繋いでいるので、フェリーで各国をめぐる旅も楽しそう!
飛行機を使うとコペンハーゲンから約2時間で到着します。
フェロー諸島のヴォーアル空港は、ゲートが2つしかない小さな空港です。
かつては滑走路がかなり短く、強風や濃霧が発生することも多いため、世界で最も着陸の難しい空港のひとつだったそうです。
現在では滑走路は延長されましたが、昔からのイメージのせいか私が乗った飛行機でも着陸が成功すると機内から拍手が沸き起こりました。
私がヴォーアル空港に到着したのはベストシーズンの7月末、しかも年に一度のお祭り開催中だったためその小さな空港は人であふれかえっていました。
荷物を置いたらさっそくお祭りに参加するのが楽しみ!
フェロー諸島の首都、トシュハウンに到着
空港から乗り合いタクシーに揺られること約50分、首都のトシュハウンに到着します。
今回は友人のおばあちゃんの家にお世話になるので、トシュハウンの隣町アルジャ(Argir)まで乗り続けます。
トシュハウンの隣町アルジャ(Argir)の街並み
空港を出た瞬間から、目に飛び込んでくる景色に釘付けでした。ゴツゴツとした岩肌に色鮮やかな緑の植物が生えている景色は、私のお気に入りの国アイスランドにそっくり。
養殖のサーモンが海面を飛び跳ねているのを見たり、大小様々な滝がいくつも現れたり、フェロー諸島らしさを発見しながら楽しく移動しました。
フェロー諸島の人口5万人のうち、約2万人は首都トシュハウンに住んでいるそう。
トシュハウンはなんといってもカラフルな建物が建ち並んでいる景色がおとぎ話の世界みたいで可愛すぎる!
フェロー諸島の首都トシュハウンの港エリア
年に一度のお祭り 雰囲気はまるで日本の花火大会?
オラフ祭りとは?
オラフ祭り(Ólavsøka)は島民が一体となって盛り上がる、年に一度の特別なお祭りです。毎年7月28日と29日の2日間に渡って開催されます。
オラフ祭り中のイベントは、ボート大会に始まり、コンサートや真夜中の大合唱、そしてチェーンダンスなど盛りだくさん。屋台やステージも現れて、街を練り歩く人々でにぎわいます。
このオラフ祭は、7月29日の祝日「聖オラフの日」を記念するイベントであり、1013年に戦死したノルウェー王オラフ2世の死去した日を基に制定された祝日です。オラフ2世は、フェロー諸島にキリスト教を伝える重要な役割を果たしたことで知られています。
伝統衣装が可愛すぎる
オラフ祭りの見どころのひとつは、可愛らしくて気品あふれる伝統衣装!
老若男女が伝統衣装に身をつつんで街を練り歩く様子は、まるで浴衣や甚平を着て屋台巡りを楽しむ日本の花火大会のようだなと感じました。
年に一度の特別な衣装を着て、みんなとてもわくわくした表情を浮かべています。
女性の衣装はさまざまなデザインのスカーフが美しく、どことなくアナと雪の女王のアナのドレスを思わせる雰囲気があります。
また、人々がゆったりとした動作で歩いたり人と話したりする様子もどことなくアナと雪の女王の戴冠式のシーンに入り込んだようで不思議な気持ちになりました。
男性は赤や青、緑などのハッキリとした色彩のベストのようなものをジャケットの中に着込んで、差し色アクセントになっているのがハイセンス。ズラッと並んだシルバーのボタンもカッコいい!
お祭りを締めくくる真夜中の大合唱&ダンス
オラフ祭りのハイライトであり、一番盛り上がるのが、2日目の真夜中に行われる大合唱。夜中の0時に多くの人々が広場に集まります。
人口5万人の島で、この首都トシュハウンには2万人しか住んでいないというのにこの密度。島民全員がここに集合しているのでは?と思うくらいの人数です。
全17曲の民謡を全員で大合唱。
全てフェロー語の歌ですが、なんと一曲だけ私も知っているメロディーの曲が!日本では閉店ソングとしておなじみの「蛍の光」です。まさかフェロー諸島で蛍の光の大合唱を聞くことになるなんて。後で調べてみると、原曲のスコットランドの民謡が各国の言語に翻訳されて広まったみたいでした!
家族や友達と楽しいお祭り2日間を過ごし、お酒も入って満足そうな表情で歌うフェローの人たち。私もそんな素敵な場にいられて幸せだなと思いました。
大合唱が終わった頃にはすでに深夜1時過ぎ。ここから伝統のチェーンダンスが始まります。みんなで手を繋ぎ輪になって陽気に踊る様子はものすごい熱気。
残念ながら私はもう体力の限界だったのでダンスを横目に帰路につきました。
2日目 奇跡の晴天の日にKirkjubøurへ
ドライブするだけでも絶景続きで楽しい
オラフ祭りの翌日は朝ゆっくり起きて、Kirkjubøur(チュシチュボア)という絶景スポットに行くことに。
Kirkjubøurはフェロー諸島の重要な史跡が残る場所。首都のトシュハウンから車で15分ほどで到着します。
ちなみにバスで行くこともできます。トシュハウン周辺のバスはなんと無料で乗ることができます。
フェローのお家といえば!草の屋根がトレードマーク
フェロー諸島のお家はカラフルでとても可愛いのですが、一番の特徴は草の生えた屋根です。これまたおとぎ話に出てきそうなお家です。
黒い外壁に赤い窓枠という色の組み合わせも可愛すぎる。このお家を見たときは可愛すぎてテンション上がりました。
この日はとても天気に恵まれ、フェロー出身の友人もこんなに晴れてる日は見たことないというくらいでとてもラッキー!
家に帰ったら友人のおばあちゃんが美味しいサーモン料理を作って待ってくれていました。漁業が盛んなフェロー諸島では美味しいシーフードが名物です。
フェロー諸島ではほとんどのお家がオーシャンビューらしい
3日目 首都トシュハウン散策
この日はトシュハウンを散策。2日前まではオラフ祭りでものすごい人混みでしたが、この日は人影もまばらで、すっかり静まり返っていました。これがフェローの日常の姿なんですね。
お土産物屋さんをのぞいたり、デンマーク名物のスモーブローを食べたりのんびり散歩を楽しみました。
世界最古の議会会場のひとつ tingaens
ここまでお読みいただきありがとうございました。
パート2へ続きます。次の記事ではフェロー諸島で一番人気の絶景スポットも紹介しますのでぜひご覧ください!
Part2|フェロー諸島の旅 Part2 -家族と過ごす、北欧流のシンプルな幸せのかたち-
All photos by Yurie Shiba
Thumbnail by Isak Niclasen