途中に、チケットが海苔の美術館もありました。海苔工場を改装したらしく、とてもかわいらしい美術館でした。
そんな寄り道をしながらも、ひたすら歩きます。今まで作品の場所がわかりやすく看板も立っていたので、この道であっているのかちょっと不安になります。
実際に、近くを歩いていたマダムも不安になっていたようで、一本道なのに道を尋ねられたりもしました。
そのまま歩いていくと、アスファルトではなく、砂利道に。木々の生い茂る中をさらに歩きます。
再び海が見えたかと思うと、その先にアーカイブがありました。たどり着いたには、波の音しか聞こえない、静かな静かな浜辺。そこに、ぽつんと建った黒い小屋がひとつ。
ここが、心臓音のアーカイブです。
寂しくて、でもとても美しくて穏やかな気持ちになれる場所で。死の先の世界ってこういうところなのかな、という気持ちにさせられました。
施設内はインスタレーションが展示されている「ハートルーム」、希望者の心臓音を採録する「レコーディングルーム」、世界中から集められた心臓音をパソコンで検索して聴くことができる「リスニングルーム」の3つの部屋で構成されています。(公式サイトから引用)
アートスペースは撮影禁止とのことで写真は撮っていませんが、真っ暗でちょっと怖いハートルームでは、ランダムに世界中の人の心臓音が流れています。真っ暗な部屋に猛々しい心臓音が響く空間は思っていた以上にインパクトがあって、とても見ごたえがありました。
リスニングルームは、目の前の窓から見える、海にぽっかりと浮かんだ瀬戸内の島々を見ながら、世界中の心臓音が聞けます。
国や名前などから聞きたい心臓音を選んだり、ランダムに誰かの心臓音を聞くことも可能。一人一人の心臓音がびっくりするほど違くて、生きるってこんなに違うことなんだな、ということを考えました。
自分の心臓音を録音すると、このようなブックレットになって持ち帰ることができます。皆さんも自分の生きた証を残してみてはいかがでしょうか。
アート作品というと、創られたものという印象を受けるかもしれませんが、この場所はまるでもっともっと昔からこの場所にあるような、在るべくしてこの場所に出来たとしかと思えないくらい、周りの静けさと、この作品の持つ雰囲気の組み合わせが絶妙でした。
静かに、生と死について考えられるような場所。そして、自分の証を残せる場所。この先の空間体験は、是非、実際に訪れて体感してみて下さい。