その他
樋口 佑樹 ディレクター

『周りを幸せにする誰かのやりたいを実現する』という個人理念を掲げて、クリエイティブとコーチングをテーマに活動中。2022年には現在は、原チャリで日本を縦断しながら、地域を盛り上げる人たちに出会う「ひぐの出会い旅」を敢行中。 旅中のトラブルなど、鉄板のエピソードトークがあることに憧れ続けて早7年。好きなものは珈琲と旅とカメラ。

こんにちは、ひぐです。原付での日本縦断は冬の間、いったんおやすみ中。そんなわけで、この冬は北海道の道東エリアで実施された『道東トラベルウィーク2023冬』に運営として参加。

「#余白をえがく道東旅」をコンセプトに、北海道の大自然をベースにしながら、道東の魅力を満喫してきました。





いつもの旅にも増して多くの出会いに恵まれたのですが、今回インタビューしたのは『Kushiro Marshland Hostel THE GEEK(以下、THE GEEK)』を運営する達川さん。THE GEEKは、釧路湿原を眺めることができる場所に位置するゲストハウス&サウナです。


達川さんは神奈川から移住して、人口200人にもみたない塘路(とうろ)町にゲストハウスをつくりました。そんな無謀とも言える挑戦をしている達川さんに、ゲストハウスのこだわりやこれから目指すところを聞いてきました。

達川 慶輔(Keisuke Tatsukawa)
神奈川県横浜市育ち。高校3年間はスイスの全寮制学校で育ち、法政大学進学後、カルフォルニア大へ1年留学。卒業後は大手サイバーセキュリティ企業に就職し、法人営業として4年勤務し、2020年3月退職。2020年7月にTHE GEEKをオープン。21年4月末にサウナもスタート。

こだわりが詰まったクラフトホステル「THE GEEK」


photo by THE GEEK

今日はお時間いただき、ありがとうございます!こだわりの強さに魅了されたこともあり、ぜひお話をお伺いできればと思っています。THE GEEK(ギーク)、どんな場所にしようと始めたんですか?

ひぐ

達川さん

この場所は「好き」が集まってほしいということでオープンした場所です。ゲストハウスと呼ばれることが多いですが、最近僕は「クラフトホステル」という言葉を使っています。
クラフトホステル、初めて聞きました!

ひぐ

達川さん

そうですよね。渋谷区を中心に活動しているクリエイティブスタジオ「& Supply」代表の井澤卓さんというレタリングアーティスト(文字を使ったアート)の方が「クラフトホテル」という言葉を使っていて、それを参考にしました。
クラフトホテルとはどういったものなんですか?

ひぐ

達川さん

イメージとしてはクラフトビールと近くて。もともと大手しかつくれなかった法律が変わり、マイクロブルワリー(小規模醸造所)でも、作り手の顔が見える”こだわり”のビールを作れるようになりました。

自分たちでこだわりを持ってつくるビールが増えて、クラフトビールと呼ばれるようになりました。その語源は実はクラフトマンシップ(職人技)からきてるそうなのですが、ホステルもこだわりをもってつくろうという。

なんとなく分かるような。「普通」じゃ物足りなくなって、こだわりが色濃く出るイメージです。

ひぐ

達川さん

クラフトホステルはその土地ならではのローカルな魅力やつくり手の思想が滲み出たホステルのことを指していて、THE GEEKも僕や働くメンバーの顔・思想が見える場所にしたいと思っています。

こだわりが詰まった本棚

初めて来たときから、この居心地の良さの裏側には、きっといろんな思いが隠されているんだろうなと思っていました。この本棚とかすごいですよね。

ひぐ

達川さん

この本棚はTHE GEEKに関するものを飾っています。サウナやコーヒーの本があったり、道東エリアで有名な厚岸ウイスキーの空き瓶やSLにまつわるグッズも置いています。
こだわりがたくさん詰まってそう……

ひぐ

達川さん

はい。サウナもプロデュースは「The Sauna」の支配人である野田クラクションベベーさんにお願いしましたし、コーヒーも東京からシングルオリジンのスペシャリティコーヒーの豆を取り寄せて、かつて世界一の透明度を誇った摩周湖の伏流水を使って淹れています。
サウナは温度もバッチリですし、椅子の座面の曲線美も感動したんですよね。コーヒーの香りが華やかだったのも納得です。

ひぐ

達川さん

他にもお酒でいえば、世界的に評価されて今では全然手に入らなくなった厚岸もありますし、ここの建物の設計自体も……たくさんあります(笑)



釧路湿原を眺めながらのととのいは最高

達川さんが淹れるこだわりのコーヒーも絶品

共用スペースは一段下がっていて机を囲みながらゆっくり過ごせる設計

なかでも特にこだわってる部分はどんなところですか?

ひぐ

達川さん

難しいですが……分かりやすいところだとサウナですかね。北海道で唯一、冬に運行される「SL冬の湿原号」がこの場所から見えるんです。
塘路の魅力はたくさんあるのですが、この土地ならではの魅力はやはりSLだろうということで、鉄道をコンセプトにしたサウナを野田さんプロデュースのもとつくりました。

鉄道の要素はどんなところに?

ひぐ

達川さん

扉のとっ手には鉄道のブレーキハンドルを使っていたり、窓もSLや鉄道の車窓を意識してます。サウナのストーブには石炭を燃やす機関室を模した、大型薪ストーブを使用しています。薪を燃やして上がる煙は、まるでSLの黒煙さながらです。このストーブは今や手に入らない国産のもので、探すのも大変でした。
徹底的なこだわりようですね。

ひぐ

達川さん

目に見えないところだと、実は岡山でつくったサウナを鉄道で輸送してきました。サウナをつくる過程でも、遠い場所から思いを乗せて運ぶ、というメッセージも込めました。

始まりはポートランド

正直大変なこともあると思うんですが、どうしてそこまでこだわりを持ってつくるようになったんですか?

ひぐ

達川さん

もともとの性格もあるとは思うんですけど、それはホステルをつくろうと思ったキッカケに遡ります。大学時代にアメリカ西海岸に留学へ行ってたんですが、そのとき興味があったオレゴン州のポートランドという町に行きました。
まちづくりの文脈でもよく名前を聞きます。

ひぐ

達川さん

ポートランドはビアバーナ(ビール天国)と呼ばれるくらいクラフトビールが有名だったり、サードウェーブコーヒーの流れを牽引する「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」が誕生した土地。
ナイキの本社とかがある場所なんですが、街全体がこだわりに溢れたところでした。エースホテルという、”THE”ブティックホテルがあるのですが、そこに行った時の体験がとても印象的だったんです。
どんな体験だったんですか?

ひぐ

達川さん

ひとりで過ごしていると、ビールづくりをしている人たちから声をかけられました。そしてヨーロッパの方や、現地のおじいちゃんおばあちゃん、LGBTQの方など、国籍や年齢、性別や職業など関係なく、気づくと皆で楽しくフラットに話していたんです。そのことにすごく感動して。
その場にいた知らない人同士が仲良くなって、交流会が自然と生まれるような空間を日本でもつくりたいと思いました。

THE GEEKが生まれるまで

留学を終えてからはどのようなことをしてたんですか?

ひぐ

達川さん

それから日本のカフェやゲストハウスなどを色々と見て回りました。そのときに「日本にも理想に近い空間がある」と思ったのが、蔵前にある「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」でした。当時、アルバイトは募集してなかったのですが、交渉して面接を受けに行きましたね。
そこからゲストハウス業界に身を置くんですね。

ひぐ

達川さん

そうでもなくて。起業を前提に、できるだけ短期間でノウハウを吸収したい、良いものは真似して盗みたい、といった気持ちが全面に出過ぎていたのか、人生で初めてバイトの面接に落ちました(笑)
その後、東京で就職してからも、稼いだお金は色んなレストランやカフェなどに使ってました。
そこからどのような経緯でTHE GEEKをつくるに至ったのでしょうか。

ひぐ

達川さん

就職してから5年が過ぎようとするとき、このままじゃダメだなと。仕事自体のやりがいはあったのですが、仕事内容はあまり楽しくなくて。人生の多くの時間を仕事に費やすのなら、自分の好きなことや自分の考えていることをもっと反映できるようにしたいということで、THE GEEKをつくるに至りました。
その他
樋口 佑樹 ディレクター

『周りを幸せにする誰かのやりたいを実現する』という個人理念を掲げて、クリエイティブとコーチングをテーマに活動中。2022年には現在は、原チャリで日本を縦断しながら、地域を盛り上げる人たちに出会う「ひぐの出会い旅」を敢行中。 旅中のトラブルなど、鉄板のエピソードトークがあることに憧れ続けて早7年。好きなものは珈琲と旅とカメラ。

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