ライター

福島県出身。世界遺産や絶景、離島などを求め、国内に留まらず80カ国以上を旅するほどの旅好き。世界遺産検定マイスターを保持し、NPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。普段は上場企業の会社員として働きながら学校やイベントでの講師活動、小笠原諸島のアンバサダーなど、世界遺産や旅を軸に多岐にわたり活動を行っている。

2020年冬。全世界を震撼させたパンデミックが起こり、私たちの日常は一変した。

当たり前だった生活は当たり前ではなくなり、外出や移動は制限され、人と自由に会うことさえ難しくなった。もちろん、私が何よりも大切にしていた「旅」も例外ではない。

それでも、立ち止まっているだけでは前に進めない。限られた環境の中で何ができるだろうと考え、できることを少しずつ楽しむようになった。その積み重ねが、結果として私を以前よりも「旅好き」にしてくれたのだと思う。

海外しか見えていなかった、あの頃の私

コロナ禍が始まる前の私は、とにかく海外旅行派だった。

絶景写真集で見た景色を自分の目で見たい。留学時代の友人たちと再会したい。そんな思いから、旅先は自然と海外が中心になっていた。

エジプトのアブシンベル神殿へ訪れることは10年以上思いを馳せていた
海外へ旅立つことは、私にとって何よりの楽しみであり、日々仕事を頑張るための大きなモチベーションでもあった。次はどこへ行こうかと考え、半年先まで旅行の予定を立てることが当たり前。その予定があるからこそ、忙しい仕事も前向きに乗り越えられていた。

ザンビアとジンバブエにまたがる世界三大瀑布のヴィクトリアの滝
そんな旅中心の生活を送っていたからこそ、パンデミックによって、旅という目標を失った私は、一時期、何をモチベーションに日々を過ごせばいいのか分からなくなってしまったほどだったのだ。

海外へ行けないからこそ、日本を知る旅が始まった

そんな状況の中で始まったのが「Go To トラベル」や旅行支援などといった、政府や自治体による施策だった。

「海外へ行けないなら、日本を旅してみよう。」

そんな気持ちで国内旅行へと目を向けるようになり、旅行支援の恩恵も受けながら全国各地を訪れた。通常よりも安く旅ができたこともあり、毎月のように日本各地へ足を運んでいた。

縄文杉へ向かう道中にあるウィルソン株での絶景はパワースポットになっている
樹齢7,000年ともいわれる縄文杉が眠る屋久島。

アルペンルートを横断し、圧倒的な自然のスケールに息をのんだ富山。

そして、何度でも帰りたいと思える、私にとって特別な場所となった小笠原諸島。

もちろん、それ以外にも数え切れないほど多くの土地を訪れたが、そのどれもが今でも鮮明に記憶に残っている。

大好きな小笠原諸島を象徴する南島の景色
旅を重ねるたびに、日本という国の奥深さを知った。

日本は南北に長く、亜熱帯から亜寒帯まで多様な気候に恵まれ、それぞれの土地にしかない自然や文化、歴史が息づいている。そして何より、安全で、ご飯がおいしく、人が温かい。

旅先で出会った地元の方々との何気ない会話や親切な心遣いは、美しい景色以上に心に残る思い出となっていった。

白川郷は新緑の時期に訪れた
海外ばかりを見ていた私だったが、「こんなにも魅力的な国に住んでいたんだ」と初めて実感した。そして、日本を旅するたびに、自分はまだ日本のことを何も知らなかったのだと気付かされた。

世界遺産を知ると、旅は何倍も面白い。

もうひとつコロナ禍で挑戦したのが、世界遺産検定の勉強だった。

もともと2級までは取得していたが、行動制限で家にいる時間が増えたことをきっかけに、もう一度基礎から学び直すことにした。

キザのピラミッドは誰もがイメージする世界遺産だろう
約8年ぶりの勉強は決して簡単ではなかったが、世界各地の歴史や文化、自然を知る時間はとても楽しく、学べば学ぶほど「この景色を実際に見てみたい」という気持ちも強くなっていった。

その結果、1級、そしてマイスターまで取得することができ、現在では認定講師として人前で話す機会までいただいている。

チリのイースター島にあるモアイ象
そして、この経験は旅そのものの楽しみ方も大きく変えてくれた。

ただ景色を見るだけではなく、その土地の歴史や文化、世界遺産として評価された背景を理解した上で訪れる。そうすることで、一つひとつの旅が何倍にも深く、心に残るものになった。

そして私は、もっと旅が好きになった

世界中を混乱に巻き込んだパンデミックから約6年。ようやく日常は戻り、再び自由に旅へ出られる時代になった。

振り返れば、あの頃は本当に苦しい時間だった。しかし、その経験があったからこそ、日本の素晴らしさに気付き、学ぶ楽しさを知り、旅との向き合い方も大きく変わった。

ウズベキスタン、ヒヴァのイチャン・カラは青タイルが美しすぎた
旅は、ただ遠くへ行くことではない。

知らない景色に出会い、新しい価値観に触れ、自分自身の世界を少しずつ広げていくものだと思う。その土地の歴史や文化、人との出会いは、旅を思い出以上のものにしてくれる。

日本には、まだ訪れたことのない素晴らしい場所が数え切れないほどある。そして世界は、想像している以上に広い。だから私は、これからも「まだ見ぬ景色に出会いたい」という気持ちを大切に、一歩ずつ旅を続けていきたい。

ボリビア、ウユニ塩湖での夕日の絶景
あのパンデミックは多くのものを奪った。しかし同時に、旅の本当の価値と、私が旅を愛する理由を教えてくれた出来事でもあったのだ。

All photos by Tamami Mizunoya

ライター

福島県出身。世界遺産や絶景、離島などを求め、国内に留まらず80カ国以上を旅するほどの旅好き。世界遺産検定マイスターを保持し、NPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。普段は上場企業の会社員として働きながら学校やイベントでの講師活動、小笠原諸島のアンバサダーなど、世界遺産や旅を軸に多岐にわたり活動を行っている。

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