こんにちは、トラベルライターの土庄です。ようやく緑が綺麗になり、外に出るのも気持ちいいシーズンを迎えていますね！気温も高すぎず、自転車で走るのにぴったりの日々が続いています。
そこで今回ご紹介したいのが、サイクリストなら誰しも一度は訪れたいと憧れる「阿蘇」。清々しい季節のなか、美しい緑とダイナミックな地形に魅せられる、とっておきの旅が待っていますよ。
初夏のシーズンは一年のうち、ちょうど中間にあたるタイミング。美しい自然から純粋な感動を得て、自分と向き合う内省の時間を取ることは、残り半年間を乗り切る活力をもたらしてくれそうです。
九州の山岳王国「阿蘇」とは
象徴的な二重カルデラ地形と放牧牛の風景
阿蘇五岳を中心にドーナッツ状の地形をなす阿蘇。一周する外輪山の風景が特徴的で、そのなかに大スケールの牧歌世界が広がっています。
盆地の部分には、豊かな湧き水を背景に田んぼが営まれ、標高を上げれば、ひたすらに広がる草原と放牧される乳牛。阿蘇五岳の山容は荒々しくも優美で、旅人の心を魅了してやみません。
再舗装された阿蘇パノラマライン下野線
2016年の熊本地震を経て、被災地としてのイメージが定着してしまいましたが、地元のパワーと各地域からの支援を経て復興を果たしました。災害の爪痕を塗り替えた景観から、阿蘇の活気を垣間見ることができます。
自然と人の営みが交錯する場所。災害があっても常に前に進んでいこうという姿勢にはきっと感銘を受けるのではないでしょうか。自分のちっぽけな悩みを忘れさせてくれる包容力があります。
自転車旅にちょうどいい気候
水田と緑が美しい初夏の阿蘇
それでは阿蘇を旅する魅力についてご紹介していきましょう。
まず1つ目は、自転車に乗る気持ちよさ・爽快感です。5月・6月の阿蘇の日中の気温は20℃〜25℃ほど。汗をかきすぎず、行動するのにベストな気温となっています。
風速1mほどの風を受けると、自転車は徒歩より体感気温で-3℃ほど下がります。暑くもなく寒くもない、清々しい気温は、自転車旅を楽しむために最高の条件と言えるでしょう。
曇りは阿蘇の迫力を高めてくれる
5月から6月初旬までは晴れの日も多いですが、6月2週目を迎えると梅雨のシーズンを迎えます。曇りがちの日も多くなりますが、日中は涼しく、荒涼とした阿蘇の雰囲気も高めてくれますよ。
重圧感すら感じる山並みを眺めていると、うまく言葉にできないインスピレーションが刺激されます。この創作意欲をモチベーションに写真撮影に耽るのも楽しいものです。
上れば上るほど絶景の山岳王国
阿蘇五岳の大パノラマが広がる俵山峠
先述の通り、ドーナッツ状の二重カルデラの地形をなす阿蘇。阿蘇五岳と外輪山という2つの山体から構成され、どうコースを取るかで負荷も見られる景色も大きく変わってきます。
例えば、阿蘇くまもと空港から俵山峠、阿蘇パノラマラインを目指すルート。辛抱強く峠まで上れば、俵山峠から阿蘇五岳を見渡す大パノラマが広がり、南阿蘇の田園地帯から阿蘇五岳の火山地形へのヒルクライムは壮大！
山体と対峙する阿蘇パノラマライン吉田線
体力はけっこう消耗するものの、上れば上るほど絶景が待っているのが魅力です。自分の身ひとつで大スケールの自然と対峙している冒険の感覚も阿蘇ならではでしょう。
「まだやれるんじゃないか」「頑張れ！」と内なる自分が語りかけてきます。ヒルクライムをしているとき、おのずと自分を追い込める感覚もまた楽しいものです。
どこを走っても爽快！すばらしい道の宝庫
好展望が続く日本百名道のミルクロード
阿蘇は絶景道と言われる道の宝庫です。草千里まで続く阿蘇パノラマラインや、外輪山に沿って一周走るミルクロード、伝説のライダーの名前を冠したケニーロード（南阿蘇グリーンロード）といった道が知られています。
また阿蘇パノラマラインも3つのルートで構成されているほか、外輪山にある俵山峠や大観峰、箱石峠といった峠もあり、バリエーションに富んだルートを選択できます。
二重カルデラの地形に飛び込む阿蘇パノラマライン坊中線
阿蘇ならではの草原の道や、乳牛が放牧されている牧歌的風景、南阿蘇の美しい水田など、絵になる風景の数々はさすが阿蘇といったところ。どのルートを取っても最高に気持ちいいです。
日常において純粋に感動する機会が減ってしまっているとき、阿蘇を旅すると、”心の潤い”を補充できるようです。
しっかり根づいているツーリング文化
全国各地から二輪乗りが集まる名物ライハ・リパパ亭
阿蘇周辺は、九州随一のツーリング先ということもあり、二輪乗りの方のための格安宿「ライダーハウス」が点在しています。まさに二輪乗りのゲストハウスといったスタイルのお宿です。
私のおすすめは南小国町の「リパパ亭」さん。旅人同士のコミュニケーションや、優しいオーナーさんの存在、一期一会の出会いがとても楽しいので、ぜひ一度泊まってみてください！
きっとさまざまな出会いを通じて、暮らしや生き方、考え方などナチュラルな学びをたくさん得られると思います。
・名称：ライダーハウス リパパ亭
・住所：熊本県阿蘇郡南小国町赤馬場3230-1
・地図：
・アクセス：阿蘇市街から自転車で1時間〜1時間半
・電話番号：0967-42-1881
・料金：夕食付き4,000円、朝食500円。素泊まり不可
すれ違いざま手を振って挨拶すれば、何だか元気に
また二輪乗り同士がすれ違うとき、手を挙げて挨拶するのも、ツーリング文化が根づく場所ならでは。阿蘇を旅すると人の温かさを感じられる機会がたくさんあります。
利害関係がなく、素朴に触れ合うコミュニケーションは、日常で忘れがちな大切なことを思い出させてくれる気がします。
くじゅう高原へ九州縦断の旅へ
くじゅう連山に吸い込まれる景観の長者原
最後にお伝えしたいのが、阿蘇とその北側の「くじゅう連山」をつなげば、九州ツーリングのゴールデンルートが完成するということ。ミルクロードとやまなみハイウェイの2つの絶景道を走ります。
アップダウンは大きいのですが、走り応えや味わえる絶景は格別です。清々しい草原の道から、緑あふれる牧ノ戸峠、くじゅう連山を見渡す長者原まで、日常離れした風景が続いていきます。
一度は入りたい黒川温泉・旅館山河の露天風呂
道中、黒川温泉や筋湯温泉に立ち寄ることができ、由布院温泉をゴールに設定できるのも魅力です。1泊2日で温泉巡り自転車旅という楽しみ方もありますね。
温泉と自転車旅を組み合わせることで、自然風景だけでなく、その自然からもたらされる恩恵を身体で感じられます。山と道、温泉をつなぐことで、新しい旅のストーリーを発見できるかもしれませんよ。
飽くなき冒険心を解放できる「阿蘇自転車旅」。ひとたび足を運べば、きっと全身で阿蘇の魅力を満喫できるはず。そして素の自分や、大事な価値観が見つかるかもしれません。ぜひ一度、思い切って計画してみてください。
All photos by Yuhei Tonosho
