ライター

福島県出身。世界遺産や絶景、離島などを求め、国内に留まらず80カ国以上を旅するほどの旅好き。世界遺産検定マイスターを保持し、NPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。普段は上場企業の会社員として働きながら学校やイベントでの講師活動、小笠原諸島のアンバサダーなど、世界遺産や旅を軸に多岐にわたり活動を行っている。

航空券やホテルを予約する際、一度はエクスペディアを利用したことがあるという旅人も多いのではないだろうか。

日本での事業開始から20周年を迎えたエクスペディア・ジャパン。パッケージツアーが主流だった時代から、個人旅行、そしてコロナ禍や円安、AIの登場まで、時代とともに変化してきた旅のスタイルを間近で見つめてきた。

今回は、エクスペディアホールディングス株式会社 代表取締役の木村奈津子さんに(以後木村さん)、20年間で変化した日本人の旅行スタイルや、これからの旅について伺った。

さらに、木村さん自身が旅を好きになったきっかけや、人生観を変えたキューバ旅行、若い世代へのメッセージまで、旅を知り尽くす木村さんだからこそ語れる「旅の魅力」に迫る。

木村奈津子
2007年にエクスペディア・ジャパンに入社後、日本法人の立ち上げ期よりマーケティング責任者として、北アジアのサイト展開および戦略を統括し、ブランド認知と事業成長を牽引。2016年にHomeAway(現Vrbo)日本支社長、2020年よりエクスペディア・グループ リテール統括ディレクター、2022年12月より日本法人代表取締役を兼務。
これまでに40都市以上での居住・渡航経験あり。趣味はダンス、ヨガ、旅行。

異文化に触れ、価値観が変わる。木村さんを旅へ導いた「好奇心」


 ー木村さんご自身が旅行好きになった原点やきっかけはなんですか?

もともと「異文化」にすごく興味があって、中学生くらいの頃から海外に行きたいと思っていました。でも、家族が頻繁に海外旅行をするような環境ではなかったので、「自分でお金を稼げるようになってから行けば」と言われていて(笑)

それでも諦めきれず、高校生の頃に留学系の本を読みあさり、奨学金を得てカリフォルニアで1カ月間ホームステイをしました。そこで日本とはまったく違う文化や暮らしに触れ、「もっと海外に行きたい」という気持ちが強くなったんです。

大学時代にはシアトルへ留学し、社会人になってからも外国人の同僚と交流するなど、異文化に触れる機会を積極的につくってきました。そうした経験を重ねるうちに、海外で異文化に触れ、そこから新しい価値観を学ぶことが好きだと気づいたんです。それが、今の旅好きにつながっています。

木村

 ー人生観が変わるような影響を受けた旅ってありますか?

キューバの首都ハバナの様子
photo by Expedia

やっぱり、キューバですね。これまで何度か訪れているのですが、きっかけはサルサにハマったことでした。

サンディエゴに住んでいた頃、現地で友達をつくろうとサルサクラブに通い始めたのですが、そこからラテンダンスに夢中になって。キューバ人の先生に日本でサルサを習うようになり、そのつながりで現地の家庭にホームステイする機会もあり、何度かキューバを訪れるようになりました。

キューバは社会主義国家のため、配給制度や二重通貨など、日本とはまったく異なる社会の仕組みを目の当たりにしました。一方で、子どもからお年寄りまで、音楽やダンスを楽しみながら日々を過ごしている姿がとても印象的で「幸せって何だろう」と考えるきっかけになりました。社会の仕組みや環境が違っても、自分なりの楽しみや幸せを見つけて生きていくことの大切さを、キューバで学んだ気がします。

木村

20年で旅はどう変わった?そして、AI時代の旅行へ

台北は日本から3~4時間で行けてしまう
photo by Expedia

 ーこの20年で、日本人の旅行スタイルはどのように変化してきたのでしょうか?

大きく変わったのは、まず旅行の予約方法です。20年前は店舗でパッケージツアーを申し込むのが主流でしたが、スマートフォンの普及によって、オンライン、特にモバイルで予約をする人が大きく増えました。

また、決められた行程で団体旅行をするスタイルから、自分の好みに合わせて自由に旅をつくる個人旅行へと広がったことも大きな変化です。インターネットの普及によって海外の情報や現地ツアーなども簡単に探せるようになり、個人旅行の選択肢が増えました。さらに、2010年頃からLCCが増えたことで、韓国や台湾など海外旅行も以前より身近になったと思います。

こうした旅行スタイルの変化に合わせ、エクスペディアでも2011年から航空券とホテルを自由に組み合わせて予約できるようになりました。より自由で柔軟な旅のスタイルが広がったことも、この20年を象徴する変化のひとつです。

木村

ソウルは訪れたことがある人も多いだろう
photo by Expedia

 ーコロナ禍を経た昨今はどのような旅行スタイルが増えているのでしょうか?

コロナ禍以降は円安やインフレの影響で、海外旅行のハードルが再び上がっています。そのため最近は、スポーツ観戦や推し活など、明確な目的を持った「目的型旅行」が伸びています。

なんとなく観光を楽しむ旅行は、欧米から近場のアジアや国内へとシフトしている印象です。エクスペディアのデータによると、特に韓国は、近距離でLCCのフライトも多く、推し活などの目的を持った旅行者も多いため人気が高まっています。また、ベトナムも物価の安さなどから、女子旅を中心に人気が伸びています。

木村

 ーAIが生活の一部になっている今、旅行の分野はどのように変わっていくのでしょうか?

旅行の計画やホテル選びなど、これまで時間をかけていた部分が、AIによって大きく効率化されていくと思います。今まで数時間かけて比較していたものが、数分で自分のニーズにぴったり合ったプランを見つけられるようになるなど、これからは旅行のさまざまな場面でAIが当たり前に使われるようになるでしょう。

木村


 ー実際にエクスペディアでは、どのようなサービスでAIが活用されていますか?

近年は旅行者一人ひとりのニーズに合わせた旅行体験を提供するため、AIを活用したさまざまな機能の開発にも力を入れています。たとえば、希望条件に合ったホテルを探せる「AIフィルター」や、SNSで見つけた行きたい場所のURLを送ると、その場所の情報からホテル予約まで提案してくれる「トリップマッチング」など、AIを活用したサービスを展開しています。

また、ChatGPTとの連携により、ChatGPT内からエクスペディアに飛んでそのまま予約できる機能も提供しています。これらの機能はまずはアメリカをはじめ一部の国・地域で提供していますが、今後は日本でも順次提供を開始する予定です。

一方で、当社の調査では、最終的な予約や決済、何かあった際のカスタマーサポートは、自ら判断したいと考える旅行者が多いことも分かっています。信頼できる旅行会社が担うことが重要です。これからは、旅行先やホテルを「探す・比較する」部分はAIで効率化し、安心して予約・旅行する部分は信頼できる旅行会社が支える形になっていくのではないでしょうか。エクスペディアとしても、そうした旅行体験の実現を目指しています。

木村

若いうちに、もっと遠くへ。旅を通して世界を知ってほしい

ベトナムのホイアンは今後のトレンドとのこと
photo by Expedia

 ーこれから旅立つ若者や学生に向けてメッセージはありますか?

ぜひ、若いうちに海外へ出てほしいですね。とくに個人旅行で行くことで、現地の人たちと会話したり触れ合ったりする機会が増え、さまざまな文化や価値観に触れることができます。日本では当たり前だと思っていたことが、海外ではまったく違うという経験は、自分自身を外から見つめ直すきっかけにもなると思います。

今はAIツールもあるので、以前よりも言語の壁を感じずに海外へ行ける環境になっています。だからこそ、体力も精神力もある若いうちに、できるだけ遠い場所へ行って、いろいろなものを見て、感じて、吸収してほしいと思います。年齢を重ねると長時間のフライトも少し億劫になってきますからね(笑)

木村

旅は、自分の世界を広げる。木村さんが歩んできた「異文化」との出会い

「異文化への興味」をきっかけに海外へ視野を広げ、今も第一線で活躍を続ける木村さん。

旅人としてはもちろん、ひとりの女性として、そしてビジネスパーソンとしても、言葉の端々から自分の価値観を大切にしながら、いきいきと人生を楽しんでいる姿が印象的だった。実際にお話を伺ってみて、「かっこいいな」と素直に感じたのが率直な感想だ。

サンディエゴのビーチは開放的な景観だ
photo by Expedia

その背景には、これまでの海外でのさまざまな経験があるのだろう。異なる文化や価値観に触れるたびに、自分の中にあった「当たり前」が覆され、新しい視点を得てきた。その一つひとつの経験が、結果的に自分自身への投資となり、視野を広げ、今の木村さんを形づくっているのではないだろうか。

旅は、ただ知らない場所へ行くだけではない。自分の世界を少し広げ、これまで気づかなかった価値観や可能性に出会うことでもある。木村さんの歩んできた旅の軌跡から、そんな旅の力を改めて感じるインタビューとなった。

All photos by Tamami Mizunoya

ライター

福島県出身。世界遺産や絶景、離島などを求め、国内に留まらず80カ国以上を旅するほどの旅好き。世界遺産検定マイスターを保持し、NPO法人世界遺産アカデミー認定講師に就任。普段は上場企業の会社員として働きながら学校やイベントでの講師活動、小笠原諸島のアンバサダーなど、世界遺産や旅を軸に多岐にわたり活動を行っている。

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